×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
生もの注意?
父上ががくぽ曲を歌うと聴いてもろりとあふれた何かをでろでろ並べました
がくっぽの独白的な何か
***********
彼から借りた声。彼から借りた瞳。
いつ返す日が来るのだろうと、この世に生み出されたその時からぼんやりと思っていた。
あなたの
「……なんということでしょう」
某劇的な前後の番組のようなつぶやきが漏れた。
そんな間抜けな言葉をこの声で呟くのさえ気が引ける。
完全再現、だとか。公約、だとか。
そういう言葉が跋扈するホームページを前に、がくぽはかくりと膝を崩した。
そのページでは、いくら手を伸ばしても届かない存在がこちらに向かって不敵にほほえんでいる。
え、夢?
あ、これ、夢か。そうか。
ボーカロイドも中の人の夢を見るのか? という問の答えはどうやら是らしい。そうかそうか。
「……いや夢じゃないっ!」
ボーカロイドにそんな機能はない。
夢なんて生まれてこの方一度だって見たことなど無い。
夢で会えたらなどという幻想だって抱いたことすらない。
いつだって彼は0.5次元向こうにいて、どうやったってこの手は届かない。
他のボーカロイド達はみな、それぞれに声の原型と折り合いをつけ、緩い距離でつながっているように思える。
けれどがくぽはそんな訳には行かなかった。あまりに名の知れた『父』の声はある種の重荷であったし、誇りであったし、誰もの念頭だったのだ。その名前すらも彼から付けられた。『そのもの』として名付けられたMEIKOやKAITOと違い、「っぽい」なんて限定すらもつけられて。
他のどのボーカロイドよりも『親』の存在あってしての声を求められていたがくぽは、自然と彼を見続けることになる。
見上げるべき父。ひたすら慕い敬愛すべき存在を。
けれど、手は届かない。
そんな現実を突きつけられながら。
そちらに向かって手を伸ばすと、指先が震えていた。
あなたの息子はこんなにも情けないです、我が父君。勝手に自称しているにすぎないそんな呼称が心中をよぎる。けれど中の人なんて言おうものならば手酷い制裁が待っていそうなのだ。自分の声を分け与えた存在が確固たる自己として確立していないなんてと。甘えるんじゃないと。
ならば、父さん。父上と、勝手に自称し、勝手に他称させてきた。
あなたの声に酬いねば。自分の存在は総てあなたより出でたのだから。
そうして歌い、歌い、歌った。
彼から借りた声をゆがませ、ひずませ、のばし、ゆらがせて、歌った。
その曲達を彼に聴いて貰えたと言うだけで、もう総てが報われたような気がしていたのだ。このゆがみも、ひずみも、ゆらぎも、ひきのばしも、総てが許されたような気がしていたのだ。彼に口ずさんで貰った。それだけで。
「……父上」
唯一声の他に受け継いだ目元から、涙がこぼれるかと思った。
彼から借りた声。彼から借りた瞳。
いつ返す日が来るのだろうと、この世に生み出された日からずっと、ずっと考えてきた。
その答えは、他でもない彼から返ってきた。
その声はもうおまえのものだから。他の誰にも出せないおまえの声だから。
その瞳はもうおまえのものだから。他の誰もを映し出すおまえの瞳だから。
返すなんて考えなくて、良いんだ。
「有り難う、御座います」
あなたの声とあなたの瞳を戴いて、あなたの息子は歌います。
**********
まとまらない!
がくぽはちょっと気持ち悪いくらい父上が大好きでいいと思います。というような感じのはなし
すずきPのカルミナ・マキーナからぐるぐる考察していたのを吐きたかったのですが、まだこれじゃまとまってないなぁという感じ
また同じようなテーマで、きちんとストーリーも盛り込んで書いてみたいです
PR
いつも拍手ありがとうございます
メッセージに返信したいのですが、何故かPCからのログインができないので、返信が難しい状況となっております
全部のメッセージに目を通させていただいてます。申し訳ありませんが返信はもうしばらくお待ち下さい
というだけも切ないので、学パロ設定で一つ
がくルカ!がくル、カ…?
ルカさんの髪ざっくりいっちゃいましたなお話です 注意注意
*********
「ルカちゃんっ何その髪っ!」
びりびりと反響する幼なじみの声から鼓膜を守った。
「何って、切ったの」
「どこで、いつ、だれに!」
「昨日、家で、自分で」
その言葉に幼なじみの拳がふるふるとふるえる。何をそんなに燃えているんだろう。そんなことより彼女は電車を二本乗り継いだ先にある私立の女子校に遅刻しないうちにたどり着くよう尽力すべきだと思う。そういうことを言ったら幼なじみは、
「……~っ、ルカちゃん今日半ドンでしょ?! 私が帰ったら覚悟してよね!」
と言い残してダッシュで通学路についた。何で早朝のルカの部屋に彼女が居たのかと寝ぼけ頭ではてなをとばし、それからルカはそんなにも似合ってないのかと少し肩を落とした。
印象を変えようと、思ったのに。
ふわり、頭に思い浮かんだ長い髪をかき消すように目をこすり、ルカは随分軽くなった頭で制服に着替えだした。
春の陽気が首筋を包む。
じり、と皮膚が泡立つようだった。
慣れないその感覚に思わず手をやり、そっと首を隠す。
昨日まで背中までをすっかり覆い、いつでも影に守ってくれていた長い髪は、すっかり短く耳元で揺れていた。
肩に掛かる温度
「巡音さんさぁ」
「……何?」
「失恋でもしたの?」
その言葉に思わず持っていた教科書類を取りこぼす。
学年の始めに配られたばかりの真新しいそれらがばらばらとリノリウムに散らばった。
それを見たがくぽはまるで他人事のように「あーあーなにやってんの」と椅子から立ち上がり、ひょいひょいと拾っていく。ルカもあわててそれを受け取り、ほこりをはたくようにしてやっと一息ついた。
何をいっているのだという思いを込めてじっとりとがくぽをにらんでやる。なんだよ、と椅子に座り直そうとしたがくぽは少し顎を引いた。
「だってあんな髪長くしてたのに、急にばっさり切ったから。早くも専らの噂だぞ、失恋しただの総撃墜記録が百人を超えた記念だの」
「は?」
「い、や、うわさだけど」
「はぁ?」
前半は分かるけど後半の意味が分からないし、告白なんてされたこと無い。
そういう意味のことを言うと、「あー高嶺の花」と椅子の背に顎をつけへらへらと笑った。
どうやら自分は相当に近寄りがたい何かを出しているらしい、とルカが自覚したのは最近のことだった。
今でこそこうしてがくぽが話しかけてくれるが、それまでは随分寂しい学校生活を送っているとどこか他人のように自分のことを見下ろしていた。
小さな頃から人に話かけるのが酷く苦手で、だからもう友達を作るのなんて半ば諦めていたのだ。
「でも、じゃあなんで? 似合ってたのに、ロング」
きょとんと聞いてくるがくぽを見やる。
「……イメチェン」
「へぇ」何とも憎らしいことに長い睫がぱたぱたとしばたく音がする「あ、や、うん。似合う」
とってつけたような言葉に、思わずため息が漏れた。
朝の幼なじみと良い、そんなに似合ってないのだろうか。じわりと視界がにじんだ。がくぽにまでそんな顔をされてしまったら、もうなんだか足下が崩れていく。
「……切らなきゃ良かった」
世界から視界を守るように伸ばしていた髪を切った。
少し広い世界が見てみたくなったのだ。彼が言うには世界はどうやらそれなりに楽しいものらしいからと。
「え、え、え、何、何でないてんの巡音さんうおぉおい」
「切らなきゃ良かった」
「だから似合ってるって泣くなよ! ただ、」
ただ?
睫に乗った涙が頬に染みる。
何でこんな事で泣いてるんだろうと冷静な自分が首を傾げて、だだをこねる子供のようだという。褒めて貰いたくて泣く子供? なんと言って褒めて貰いたいのか。もしや可愛いだなんて言って貰いたかったのか。
がくぽに。
「ルカさぁ、それ自分で切っただろ。毛先、がたがた」
ルカの肩をがしりとつかんで言ったがくぽは、小さな子供を見るように目を眇めていた。
「別にそういう髪型もありっちゃありだよ。似合ってんだけどさぁ」
さくさくと頭の後ろで摩擦の音がする。
「でも巡音さん、折角内巻きの良い癖あるんだから、もっとこう、ふわっと、なんかこう、くるっと」
さくさく。
フローリングの床にはレジャーシートが敷かれていて、その上にルカの髪がはらはらと散っていく。
いつか遊びに行かせてよと冗談混じりに言っていたがくぽを家に上げる日は、まぁいつか来るだろうとは思っていたが、こんな形になるとは思っていなかった。
おいしいお菓子を食べるでなく、何楽しい話をするでなく、真っ先にカーペットを片づけてレジャーシートかなにかとゴミ袋を用意しろと突きつけられる来訪だなんて。
まぁそれはそれで、とゴミ袋で作った簡易ポンチョをごそごそやりながらルカは散る自分の髪を見つめる。
美意識の高い幼なじみの彼女は、朝随分いらだったに違いないとそれを見ながら思った。少し押しつけがましいくらいに可愛いものが好きな彼女に、普段ルカは少し着せかえ人形のように扱われているところがある。
特に髪には一家言あるのか、いつもやれ洗髪の時は指の腹でマッサージするようにせよだとかコンディショナーとリンスは別物だからきちんと使い分けなさいだとか親より過保護に整えられてきた。
それが朝起きたら急にパンキーな髪型になっていたのだから、それは確かにあんな反応にもなろう。
「後ろの髪って、だって見えないじゃない」
「ふつうは見えないよね。だから人は美容院に行くんだよ巡音さん、知ってた?」
「……あぁ」
「納得されちゃったよ……」
しゃきしゃき。後ろからがくぽの呆れた声が降ってくる。恐らく我が子が白いTシャツをどろどろにして帰ってきたのを見た母親のような表情をしているのだろう、と思った。どうやら下の兄弟が多い彼は、外見に似合わず母親的要素を多分に表すことが時々ある。
ぱっと見近寄りがたい程に整った外見をしている癖に、妙なところで所帯じみていてなんだか笑ってしまう。
そうしてくすくすしていると、「何笑ってんだよ」と不機嫌そうな声が落ちてきた。
「いや、上手いなって思って」
「……それ、笑うとこじゃないよな」
「だって何だか似合わないんだもの、神威くん。こういうの」
「どういうことだよ。俺は我が家の床屋さんの名を欲しいままにしてる男だぞ」
「欲しいの、その称号」
「いや、正直いらない」
というか、妹連中には美容院くらい行って欲しい。
がくぽがぼそりとそう漏らす。彼の妹たちと言えばもう高校生だか中学生だかではなかったか。そんな年頃の少女たちが任す位なのだから、腕はそう悪くはないのだろう。
現に今も迷いのない、しかし丁寧な手つきでルカの髪先を整えていく。一応はあった家庭用の散髪ばさみだが、昨日の夜ルカが適当に握ったときよりも数段楽しげな音を立てて同じ頭の上で踊っていた。
その音がいやに小気味よく、ルカはそっと瞳を閉じる。
自宅に帰るより先にルカの部屋を訪れた幼なじみが、がくぽとルカの前髪の在り方について本人そっちのけでバトルを始めるまで、後五分。
**********
ふんわりボブなルカさんとか可愛いんじゃないのって思いつつ書いたらこんななりました
がくぽは手先が器用そうですよね
下手な美容師にやって貰うより綺麗に整えてくれそうですよね
ちゅっちゅちゅっちゅしてるだけの短い何かです
アダルティ目指したらなんだこれ
**********
長い髪をすくい上げて口付ける。甘いような香りが脳をとろかせるようだ。
そのまま細い肩を抱き寄せて瞼にキスをする。
ぱさぱさと鼻先にまつげの風圧を感じた。
くすぐったそうに肩を竦め、口角の上がった唇を捕まえようとすると、ぱっと桜色が視界から消えた。腰に冷たい感触が走る。思わず体を跳ねさせると、いたずらっぽく微笑んだ彼女ががくぽの服の裾をまくり上げているところだった。
かぷり、甘い痛みに眉を寄せた。
「くすぐったい」
「そっちこそ」
見合わせ、にっこりと笑った桜色の唇は、今度は鼻の頭に落ちてきた。
口付ける
首筋に暖かい感触。ちゅっと微かな音に気恥ずかしさが心中にわき上がる。一瞬で離れていくその頭を捕まえて、頬、額。やり返しのような気分でほおずりまでおまけにつける。背中を撫でさする手には勝てそうもなかったけれど。くすぐったくてかなわない。
がくぽの膝にちょこんとのったルカは、珍しく視点が高いのに少し気分が良いらしい。無防備な白い喉にやわく噛みつく。
とたん、すっとんきょうな声を上げて彼女が跳ね上がった。髪を捕まれ離される。痛い、とがくぽは軽く口元をあげた。
「やめてよ」
「そっちこそ」
手、と呟くとぱさぱさと桜色のまつげが羽ばたく。
「……じゃあ、もっとやってもいいわよ」
「なんだそれ」
するするとうなじを流れていく指先の感触に肌を粟立てる。
そんながくぽの様子にルカは「ん」と少し考えるようにして、
「やれるものならやってみなさい?」
「……望むところだ」
体制逆転。ぐるりとルカを組み敷こう、としたところで、今度はがくぽがすっとんきょうな声を上げる羽目となる。
膝の上から振り落とされ、ベッドに桜色の髪が広がった。
「耳は、無し! 耳は!」
「そんなルール聞いてない」
くるりと身を起こしてうつ伏せになってこちらを見上げてくるその様に、このやろうとがくぽは顔をひきつらせた。
太股に落ちてくる唇にまた背が粟立つ。
反撃とばかりにめくれ上がった服の裾から覗く白い背中に口付けると、からからと乾いた笑い声が部屋に響いた。
逃れようとまた反転した腹部にもキスを落とす。上がって来た足を捕まえて、臑、つま先と追う内に体勢が崩れ、がくぽもベッドに横たわっていた。
変わらず響いている笑い声が、喉に引っかかるようになってくる。
笑い過ぎじゃないのか、と口を止めると、微かに涙を浮かべたルカがこちらに手を伸ばしてくる。
今度はそれをとらえて、手の甲に口付ける。指先。手のひら。
笑い声はやまない。
「儀式みたい」
「ん?」
手首に口付けたところで、笑い声が止んだ。
代わりに、ルカががくぽの髪をかき混ぜる音が薄く部屋に響いた。
**********
ちゅっちゅちゅっちゅしてほしかっただけです
後悔はしていない 後悔はしていない
どうも大木です
生きています 元気です こんなん書いてしまうほどに元気です
一時期、東北地震によるちょっとしたごたごたで更新が難しい状況となっておりました
が、ひとまずそれも一段落したので、またいつも通り、マイペースに更新していきたいとおもいます
一刻も早い復興を心から願っております
**********
この季節になると思い出すのは、あの桜色。
ふわりとかすかに香らせていた甘い香りと、縁取る淡さが脳裏に浮かんで、腹に落ちた暖かさが這い上がり胸を蝕む。
彼女は、幼かった。
その好意は当時の自分にとって少しだけ鬱陶しいもので、愛でる対象で、愛おしいだけのもので、受け入れるものではなかった。受け入れられるものではなかった。
壊さないようにそっと抱いて、唇よりずっと多弁な瞳にせがまれ接吻を落とすのは、専ら手や足や額だった。後に残すまいと必死だったように思える。幼い彼女の未来に陰を落とすのが怖かった。彼女はそれを望んでいたのだろうか? 自分という陰を、痕を欲しがっていたのだろうか?
パールブルーのマニキュアに唇を当てたあとの今にも泣きそうな瞳は、自分への怒りや失望が押しこごめられていたのかもしれない。あの白んでいく夜空のような美しい瞳。
震える声で頼まれても、つたない言葉で望まれても、細い体を押し当てられても、無理に歪めるようにおとなの笑みを作って逃げた。適当にかまって、避けて、避けた。
自分だってまるで子供だったくせに。笑ってしまう。
余裕がなくなる前に突き放して、酷い言い訳と条件を突きつけた気がする。
もうそのころの記憶は随分掠れてしまった。とにかくあのころは彼女に会う度に何かを堪えていて、今ならそれが何かきちんと理解できた。下劣で自分を軽蔑したくなる。
桜色に塗る
「がっくん、ロリコンだったの……」
「黙れ、違う、断じて違う、ぜっんぜん違う」
「だって11歳差ってあなた、当時その子16かそこらでしょ?」
「……」
「……JKの魅力に負けちゃったのかぁ……」
「違う黙れ黙れ黙れ! そういうんじゃない!」
「だって初恋の話の流れでそんな話されたんじゃそうとしか……お兄ちゃん親友のカミングアウトにびっくりです……っていうか遅っ! がっくん初恋遅っ!」
「だぁああまぁぁああれぇえええ!」
ちくしょう、と口元を拭う。
あれだけつぶした筈なのにちゃっかりと恋人に送られていった友人を恨めしく思った。
地面には散った桜がこびりついている。駅前の桜並木は相も変わらず見事な花盛りを見せていた。
この街にも随分慣れたな、と思う。自分が転々と育った場所より、彼女がいたあの街より、とうとう人生で一番長い期間をこの街で過ごしてしまった。ということは、この街に来てからずっと連んでいる奴との付き合いも、人生で誰よりも長いと言うことになるのだろう。彼女よりも。
うげぇとなった。
マンションまではまだ随分遠い。アルコールで踏みごたえのないアスファルトに嫌気がさし、スーツのままでその辺に座り込んだ。
鼻の直ぐ前を桜が散っていく。彼女の色。頭に、スーツに、地面に、降り積もっていく。あれから随分伸びた髪が視界の端で跳ねている。そこに花弁が一つ引っかかった。
このまま埋もれてしまいたい、と思う。
「てゆーか、口滑った……」
墓場まで持って行く予定だったのに。
桜を見る度胸を焼き、むず痒く想うこの気持ちも、彼女に関することは何もかも。
あの日、自分はこんな風に散る桜を後目に、彼女にこんなことをほざいたのだ。
『大学生』
『大学生になってもまだ好きだったら、おいで』
忘れるだろうと思っていた。
多感な時期だったから、ただ身近で手近で、少し整った自分を好いているような風に錯覚しているだけだと。実際そうだったのだろう。あれから三年たって、順当に行けばもう彼女は大学生になっている筈だ。記憶の中で、春の風に紺色のプリーツスカートが揺れた。
記憶の中の桜色が更新されることはない。
それで良いはずだ。
それが最良の筈だ。
身を縮めて頭を掻く。
はらはらと折角積もった花弁が舞った。
「でも、誰ともつきあってないとか、畜生、笑えるな」
好いてくれる幾多の女性の言葉を、今もはねのけているのは、
「未練たらたらか」
自分が彼女を、思春期の少年かと笑えるくらいに、好きだったから。
何だか泣きそうだった。
桜がぶわりとにじむ。視界一杯に広がる桜色と、情けない気持ち。良い歳扱いた男が桜を肴に涙を呑む。なんてしょっぱい光景だ。
そんなことを思うとさらに涙が湧いた。
もっと強く抱きしめておけば良かった。もっと返事をしてやれば良かった。もっとキスをしてやればよかった。求められたなら、与えれば良かった。
そうすればつなぎ止めておけたのだろうか。
舞う桜色。
記憶の奥の方でこちらを睨みつける、愛しい彼女そっくりの、
「こんなところにいた」
桜色。
「……る、か?」
「もう、マンション行っても真っ暗だし、私ホテルなんて予約してないし、すっごい不安だったんだから。何でこんなところに、って、なっ何、どうしたの?! えっ?! どっか痛いの?! 救急車?!」
慌てて大きな鞄を漁り出すその手を掴み、パールブルーのマニキュアが光っているのを見てまた涙がこぼれそうだった。顔が塩辛い。どんな情けない顔をしているんだろうか。おとなのよゆうなんて、どこかへ行ってしまえばいい。
抱きしめた体は、四年前より随分柔らかかった。
鼻先に当たった髪は、四年前より幾分伸びていた。
握りしめた手は、四年前と変わらず小さく頼りなかった。
凛とこちらを見つめる瞳は、四年前と変わらず透るような色だった。
ただ自分ばかりが情けなく小さくなった気分だった。
肩口を濡らすばかりの自分をどう思ったのか、彼女の手はそっと背中をなぜた。
「留学プログラムに捕まって一年遅れたけど、」
年相応にトーンの落ちた声は、けれどよりいっそう艶を持って。
「大学生になったら、口にキスしてくれるんでしょ?」
にっこりと笑うその顔は、何一つ変わっていない。
間髪入れずに唇を押し当てると、今まで如何にして堪えていたかなど、どうやっても思い出せそうになかった。
**********
少女漫画って、いいよね!
そして砂糖がだばだば出るほどに甘い感じで頑張りました
心理描写が多いのはもうそういう病気なので勘弁して下さい
前書いたtake fiveのぽルカ設定です
三十路越えと大学生です 歳の差です 歳の差
最近歳の差がものすごく好きということに気づきました とても萌えます
あり得ないほどに語ってしまいそうなので自重します
この設定がくぽ視点ばっかりで書いてるので、ルカ視点でも何か書きたいなぁとか
とか
ぽルカ!ぽルカ!
現代パロディ…?注意注意
**********
ごん。
「ごふ」
take five for you!
背後からの衝撃に絶息する。何か堅い物が背中にぶち当たった。
そのうちにするすると腰に回ってきた腕を見下ろし、がくぽは一つため息をはいた。クリスマスに彼が贈った控えめなピンキーリングがちらりと光る、白魚のような手。丁寧にマニキュアが塗られている。いつものパールマリンではなくて、珍しいインディゴブルー。
「……ルカ」
「……」
ぷふう、とかすかに息を吐き出すのが聞こえてきた。最愛のお姫様は、どうやら酷くご機嫌が悪いらしい。もしも背中に目があったら、さぞかしむくれた顔がみれたことだろう。どうしたものかと嘆息した。むくれてしまった彼女の機嫌をとるのは相当に骨が折れるのだ。
けれど、とがくぽは手の中の文書を見やる。
際限ない、きりがない。仕事中の『かまって』の催促はしないと約束していたはずだ。
「ルカ」
「だって、がくぽったらさっきからずーっと、仕事してるじゃない」
「まだお前が部屋に来てから十五分しか経ってないぞ」
「って事は私が来る前からもずっとしてたんでしょう? ちょっとくらい休憩したって良いじゃない」
「……」
「ね、私紅茶淹れてくるわ。クッキーもあるの。少しおしゃべりして、息抜きした方が効率だって上がるわよ」
「……」
「ねぇってば」
ぐりぐりと背中を押される。けだるげな猫なで声に惹かれ、頷いてしまいそうになる自分を律し、がくぽは文書に集中しようと試みた。最近かけ始めた眼鏡は、どうも視界が区切られたようで落ち着かない。そういえばこれも彼女が選んだものだったか。
飾り気は無いように見えるが、よくよく見ると意匠の凝らされたメタルフレーム。
「がくぽ」
「……」
「がくぽ」
「……」
「がーくぽってば」
「……」
「……かーまーいーなーさーいーよー!」
「い゛っ?!」
背中で一つに結っていた髪を思いっきり引っ張られた。頭皮と顔がひきつる。がきりと首も不穏な悲鳴を上げた。
其れに沿うようにして走る痛みに、がくぽは身を固める。机作業続きでうつむきがちだったのも手伝ったのだろう。ばちりと火花の散った錯覚すら覚えた。
「ぃいいい……」思わず首に手をやり、うめく「つうぅぅう」
手を離されてもびりびりとしびれるように痛い。
予想以上の反応にどうやら驚いたらしいルカは、不安げな顔でこちらに回り込み、がくぽの顔をのぞき込む。
「ご、ごめん、そんなに痛かった?」
「首は駄目だろ、髪も……」
だってその辺鍛えようがない。
ひきうつるようなそこを押さえ、こんなものと髪留めのゴムをはずしてしまう。
はー、と深い深いため息をはきながら眼鏡を外し、すぐそばのソファに向かう。カルガモの子のようにルカもそれに付き従う。たどり着いた黒の合皮のソファ。ばすんとバネがはねるのもかまわず腰で踏みつける。ルカもちょこんとそれの隣を陣取る。
終始、無言。
気づけば大きな窓の外は赤くなりかけていた。もうそんな時間なのかという驚きともうこんなに日が短くなったのかという驚き、二つがぼうっとがくぽの思考を奪っていく。たとえば、明日までに片づけなければならない仕事だとか、先方との情報の齟齬だとか、どうにもずさんな上司をどうこらしめてやろうかだとか、そういうことはまとめて、どこだかに、ソファのバネの奥深くに沈んでいった。
隣のルカはどこか気まずそうに小さくなっている。
白く細い肩。これから寒くなるというのにそんな格好ばかりしてるから、だなんて母親じみたことを思い、其れに少し寄りかかった。
重みに気づいたのか、柔らかな髪が頬をなぜる。
「……五分、だけ」
「……」
「五分だけ休憩するから」
「……うん!」
瞼が急激に重たくなってきた。そういえば昨日の夜は何時に寝たのだったか。そこまで睡眠に執着がない方だからか、気を抜くとすぐに不足する。彼女に関してもそうだ。ふれると思い出す。こんなにも足りていなかったのだったっけ。
細くて堅くて柔らかい肩。甘いような鼻に抜けるような香り。
「それじゃ、首痛いんじゃない? 首は駄目よ、首は」
「……んー」
「ん」
がくんと揺れる頭。
其れが何だかいまいち理解できないうちに、がくぽの意識は浮上していった。
宣言の六倍も眠ってから、目を覚ましたがくぽが気まずくルカの太股から頭を上げるまで、ルカはにこにこと微笑んだままその恋人の髪をなでていたとか。
**********
今まで書いた中で割と最高ランクにらぶらぶなんではなかろうかこれ
歳の差いいとおもいます
たぎります
あとルカさんは二十歳って、普段描かれてるように大人っぽい年齢じゃないんじゃないかなと思うのです
二十歳ってまだ大学生ですよ もっと世のルカさんははじけてて良いですよ
そんな訳でちょっと子供っぽい感じのルカさんでした
このがくぽたぶん三十路超えてる