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いつも拍手ありがとうございます
メッセージに返信したいのですが、何故かPCからのログインができないので、返信が難しい状況となっております

全部のメッセージに目を通させていただいてます。申し訳ありませんが返信はもうしばらくお待ち下さい


というだけも切ないので、学パロ設定で一つ
がくルカ!がくル、カ…?

ルカさんの髪ざっくりいっちゃいましたなお話です 注意注意



*********




「ルカちゃんっ何その髪っ!」


 びりびりと反響する幼なじみの声から鼓膜を守った。


「何って、切ったの」

「どこで、いつ、だれに!」

「昨日、家で、自分で」


 その言葉に幼なじみの拳がふるふるとふるえる。何をそんなに燃えているんだろう。そんなことより彼女は電車を二本乗り継いだ先にある私立の女子校に遅刻しないうちにたどり着くよう尽力すべきだと思う。そういうことを言ったら幼なじみは、


「……~っ、ルカちゃん今日半ドンでしょ?! 私が帰ったら覚悟してよね!」


 と言い残してダッシュで通学路についた。何で早朝のルカの部屋に彼女が居たのかと寝ぼけ頭ではてなをとばし、それからルカはそんなにも似合ってないのかと少し肩を落とした。
 印象を変えようと、思ったのに。
 ふわり、頭に思い浮かんだ長い髪をかき消すように目をこすり、ルカは随分軽くなった頭で制服に着替えだした。


 春の陽気が首筋を包む。
 じり、と皮膚が泡立つようだった。

 慣れないその感覚に思わず手をやり、そっと首を隠す。
 昨日まで背中までをすっかり覆い、いつでも影に守ってくれていた長い髪は、すっかり短く耳元で揺れていた。





  肩に掛かる温度











「巡音さんさぁ」

「……何?」

「失恋でもしたの?」


 その言葉に思わず持っていた教科書類を取りこぼす。
 学年の始めに配られたばかりの真新しいそれらがばらばらとリノリウムに散らばった。
 それを見たがくぽはまるで他人事のように「あーあーなにやってんの」と椅子から立ち上がり、ひょいひょいと拾っていく。ルカもあわててそれを受け取り、ほこりをはたくようにしてやっと一息ついた。
 何をいっているのだという思いを込めてじっとりとがくぽをにらんでやる。なんだよ、と椅子に座り直そうとしたがくぽは少し顎を引いた。


「だってあんな髪長くしてたのに、急にばっさり切ったから。早くも専らの噂だぞ、失恋しただの総撃墜記録が百人を超えた記念だの」

「は?」

「い、や、うわさだけど」

「はぁ?」


 前半は分かるけど後半の意味が分からないし、告白なんてされたこと無い。
 そういう意味のことを言うと、「あー高嶺の花」と椅子の背に顎をつけへらへらと笑った。

 どうやら自分は相当に近寄りがたい何かを出しているらしい、とルカが自覚したのは最近のことだった。
 今でこそこうしてがくぽが話しかけてくれるが、それまでは随分寂しい学校生活を送っているとどこか他人のように自分のことを見下ろしていた。

 小さな頃から人に話かけるのが酷く苦手で、だからもう友達を作るのなんて半ば諦めていたのだ。


「でも、じゃあなんで? 似合ってたのに、ロング」


 きょとんと聞いてくるがくぽを見やる。


「……イメチェン」

「へぇ」何とも憎らしいことに長い睫がぱたぱたとしばたく音がする「あ、や、うん。似合う」


 とってつけたような言葉に、思わずため息が漏れた。
 朝の幼なじみと良い、そんなに似合ってないのだろうか。じわりと視界がにじんだ。がくぽにまでそんな顔をされてしまったら、もうなんだか足下が崩れていく。


「……切らなきゃ良かった」


 世界から視界を守るように伸ばしていた髪を切った。
 少し広い世界が見てみたくなったのだ。彼が言うには世界はどうやらそれなりに楽しいものらしいからと。


「え、え、え、何、何でないてんの巡音さんうおぉおい」

「切らなきゃ良かった」

「だから似合ってるって泣くなよ! ただ、」


 ただ?

 睫に乗った涙が頬に染みる。
 何でこんな事で泣いてるんだろうと冷静な自分が首を傾げて、だだをこねる子供のようだという。褒めて貰いたくて泣く子供? なんと言って褒めて貰いたいのか。もしや可愛いだなんて言って貰いたかったのか。
 がくぽに。


「ルカさぁ、それ自分で切っただろ。毛先、がたがた」


 ルカの肩をがしりとつかんで言ったがくぽは、小さな子供を見るように目を眇めていた。




「別にそういう髪型もありっちゃありだよ。似合ってんだけどさぁ」


 さくさくと頭の後ろで摩擦の音がする。


「でも巡音さん、折角内巻きの良い癖あるんだから、もっとこう、ふわっと、なんかこう、くるっと」


 さくさく。
 フローリングの床にはレジャーシートが敷かれていて、その上にルカの髪がはらはらと散っていく。

 いつか遊びに行かせてよと冗談混じりに言っていたがくぽを家に上げる日は、まぁいつか来るだろうとは思っていたが、こんな形になるとは思っていなかった。
 おいしいお菓子を食べるでなく、何楽しい話をするでなく、真っ先にカーペットを片づけてレジャーシートかなにかとゴミ袋を用意しろと突きつけられる来訪だなんて。

 まぁそれはそれで、とゴミ袋で作った簡易ポンチョをごそごそやりながらルカは散る自分の髪を見つめる。

 美意識の高い幼なじみの彼女は、朝随分いらだったに違いないとそれを見ながら思った。少し押しつけがましいくらいに可愛いものが好きな彼女に、普段ルカは少し着せかえ人形のように扱われているところがある。
 特に髪には一家言あるのか、いつもやれ洗髪の時は指の腹でマッサージするようにせよだとかコンディショナーとリンスは別物だからきちんと使い分けなさいだとか親より過保護に整えられてきた。
 それが朝起きたら急にパンキーな髪型になっていたのだから、それは確かにあんな反応にもなろう。


「後ろの髪って、だって見えないじゃない」

「ふつうは見えないよね。だから人は美容院に行くんだよ巡音さん、知ってた?」

「……あぁ」

「納得されちゃったよ……」


 しゃきしゃき。後ろからがくぽの呆れた声が降ってくる。恐らく我が子が白いTシャツをどろどろにして帰ってきたのを見た母親のような表情をしているのだろう、と思った。どうやら下の兄弟が多い彼は、外見に似合わず母親的要素を多分に表すことが時々ある。
 ぱっと見近寄りがたい程に整った外見をしている癖に、妙なところで所帯じみていてなんだか笑ってしまう。
 そうしてくすくすしていると、「何笑ってんだよ」と不機嫌そうな声が落ちてきた。


「いや、上手いなって思って」

「……それ、笑うとこじゃないよな」

「だって何だか似合わないんだもの、神威くん。こういうの」

「どういうことだよ。俺は我が家の床屋さんの名を欲しいままにしてる男だぞ」

「欲しいの、その称号」

「いや、正直いらない」


 というか、妹連中には美容院くらい行って欲しい。
 がくぽがぼそりとそう漏らす。彼の妹たちと言えばもう高校生だか中学生だかではなかったか。そんな年頃の少女たちが任す位なのだから、腕はそう悪くはないのだろう。
 現に今も迷いのない、しかし丁寧な手つきでルカの髪先を整えていく。一応はあった家庭用の散髪ばさみだが、昨日の夜ルカが適当に握ったときよりも数段楽しげな音を立てて同じ頭の上で踊っていた。
 その音がいやに小気味よく、ルカはそっと瞳を閉じる。

 自宅に帰るより先にルカの部屋を訪れた幼なじみが、がくぽとルカの前髪の在り方について本人そっちのけでバトルを始めるまで、後五分。






**********


ふんわりボブなルカさんとか可愛いんじゃないのって思いつつ書いたらこんななりました
がくぽは手先が器用そうですよね
下手な美容師にやって貰うより綺麗に整えてくれそうですよね

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