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どうも大木です
生きています 元気です こんなん書いてしまうほどに元気です
一時期、東北地震によるちょっとしたごたごたで更新が難しい状況となっておりました
が、ひとまずそれも一段落したので、またいつも通り、マイペースに更新していきたいとおもいます
一刻も早い復興を心から願っております
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この季節になると思い出すのは、あの桜色。
ふわりとかすかに香らせていた甘い香りと、縁取る淡さが脳裏に浮かんで、腹に落ちた暖かさが這い上がり胸を蝕む。
彼女は、幼かった。
その好意は当時の自分にとって少しだけ鬱陶しいもので、愛でる対象で、愛おしいだけのもので、受け入れるものではなかった。受け入れられるものではなかった。
壊さないようにそっと抱いて、唇よりずっと多弁な瞳にせがまれ接吻を落とすのは、専ら手や足や額だった。後に残すまいと必死だったように思える。幼い彼女の未来に陰を落とすのが怖かった。彼女はそれを望んでいたのだろうか? 自分という陰を、痕を欲しがっていたのだろうか?
パールブルーのマニキュアに唇を当てたあとの今にも泣きそうな瞳は、自分への怒りや失望が押しこごめられていたのかもしれない。あの白んでいく夜空のような美しい瞳。
震える声で頼まれても、つたない言葉で望まれても、細い体を押し当てられても、無理に歪めるようにおとなの笑みを作って逃げた。適当にかまって、避けて、避けた。
自分だってまるで子供だったくせに。笑ってしまう。
余裕がなくなる前に突き放して、酷い言い訳と条件を突きつけた気がする。
もうそのころの記憶は随分掠れてしまった。とにかくあのころは彼女に会う度に何かを堪えていて、今ならそれが何かきちんと理解できた。下劣で自分を軽蔑したくなる。
桜色に塗る
「がっくん、ロリコンだったの……」
「黙れ、違う、断じて違う、ぜっんぜん違う」
「だって11歳差ってあなた、当時その子16かそこらでしょ?」
「……」
「……JKの魅力に負けちゃったのかぁ……」
「違う黙れ黙れ黙れ! そういうんじゃない!」
「だって初恋の話の流れでそんな話されたんじゃそうとしか……お兄ちゃん親友のカミングアウトにびっくりです……っていうか遅っ! がっくん初恋遅っ!」
「だぁああまぁぁああれぇえええ!」
ちくしょう、と口元を拭う。
あれだけつぶした筈なのにちゃっかりと恋人に送られていった友人を恨めしく思った。
地面には散った桜がこびりついている。駅前の桜並木は相も変わらず見事な花盛りを見せていた。
この街にも随分慣れたな、と思う。自分が転々と育った場所より、彼女がいたあの街より、とうとう人生で一番長い期間をこの街で過ごしてしまった。ということは、この街に来てからずっと連んでいる奴との付き合いも、人生で誰よりも長いと言うことになるのだろう。彼女よりも。
うげぇとなった。
マンションまではまだ随分遠い。アルコールで踏みごたえのないアスファルトに嫌気がさし、スーツのままでその辺に座り込んだ。
鼻の直ぐ前を桜が散っていく。彼女の色。頭に、スーツに、地面に、降り積もっていく。あれから随分伸びた髪が視界の端で跳ねている。そこに花弁が一つ引っかかった。
このまま埋もれてしまいたい、と思う。
「てゆーか、口滑った……」
墓場まで持って行く予定だったのに。
桜を見る度胸を焼き、むず痒く想うこの気持ちも、彼女に関することは何もかも。
あの日、自分はこんな風に散る桜を後目に、彼女にこんなことをほざいたのだ。
『大学生』
『大学生になってもまだ好きだったら、おいで』
忘れるだろうと思っていた。
多感な時期だったから、ただ身近で手近で、少し整った自分を好いているような風に錯覚しているだけだと。実際そうだったのだろう。あれから三年たって、順当に行けばもう彼女は大学生になっている筈だ。記憶の中で、春の風に紺色のプリーツスカートが揺れた。
記憶の中の桜色が更新されることはない。
それで良いはずだ。
それが最良の筈だ。
身を縮めて頭を掻く。
はらはらと折角積もった花弁が舞った。
「でも、誰ともつきあってないとか、畜生、笑えるな」
好いてくれる幾多の女性の言葉を、今もはねのけているのは、
「未練たらたらか」
自分が彼女を、思春期の少年かと笑えるくらいに、好きだったから。
何だか泣きそうだった。
桜がぶわりとにじむ。視界一杯に広がる桜色と、情けない気持ち。良い歳扱いた男が桜を肴に涙を呑む。なんてしょっぱい光景だ。
そんなことを思うとさらに涙が湧いた。
もっと強く抱きしめておけば良かった。もっと返事をしてやれば良かった。もっとキスをしてやればよかった。求められたなら、与えれば良かった。
そうすればつなぎ止めておけたのだろうか。
舞う桜色。
記憶の奥の方でこちらを睨みつける、愛しい彼女そっくりの、
「こんなところにいた」
桜色。
「……る、か?」
「もう、マンション行っても真っ暗だし、私ホテルなんて予約してないし、すっごい不安だったんだから。何でこんなところに、って、なっ何、どうしたの?! えっ?! どっか痛いの?! 救急車?!」
慌てて大きな鞄を漁り出すその手を掴み、パールブルーのマニキュアが光っているのを見てまた涙がこぼれそうだった。顔が塩辛い。どんな情けない顔をしているんだろうか。おとなのよゆうなんて、どこかへ行ってしまえばいい。
抱きしめた体は、四年前より随分柔らかかった。
鼻先に当たった髪は、四年前より幾分伸びていた。
握りしめた手は、四年前と変わらず小さく頼りなかった。
凛とこちらを見つめる瞳は、四年前と変わらず透るような色だった。
ただ自分ばかりが情けなく小さくなった気分だった。
肩口を濡らすばかりの自分をどう思ったのか、彼女の手はそっと背中をなぜた。
「留学プログラムに捕まって一年遅れたけど、」
年相応にトーンの落ちた声は、けれどよりいっそう艶を持って。
「大学生になったら、口にキスしてくれるんでしょ?」
にっこりと笑うその顔は、何一つ変わっていない。
間髪入れずに唇を押し当てると、今まで如何にして堪えていたかなど、どうやっても思い出せそうになかった。
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少女漫画って、いいよね!
そして砂糖がだばだば出るほどに甘い感じで頑張りました
心理描写が多いのはもうそういう病気なので勘弁して下さい
前書いたtake fiveのぽルカ設定です
三十路越えと大学生です 歳の差です 歳の差
最近歳の差がものすごく好きということに気づきました とても萌えます
あり得ないほどに語ってしまいそうなので自重します
この設定がくぽ視点ばっかりで書いてるので、ルカ視点でも何か書きたいなぁとか
とか
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