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ゆめにっきEDネタバレ
あれは……だめだろ……

ほんとだめだろ……



**********




 あ、という声につられてそちらを見た。
 アカ兄とレンがパソコンの画面を見ている。何、と思わずのぞき込むんだ。

 荒いドットの画面。
 小さなベランダのような場所から、ひゅうというような効果音を思わせる軽々しさで、ピンク色の服を着た少女が落ちていった。

 ふと画面が暗くなる。
 中央に浮かび上がってくるのは、これまたドットの荒い、赤。



「うそ」



 唖然とした声で呟いたのは、レンなのかアカ兄なのか、はたまた私なのだろうか。






  どりーむだいあり







「……嘘だろ、こんなん、ありかよ」

「……」



 私たちは電脳空間に於いて、わりと自由度の高い待遇を受けている。マスターたちはコミュニティ内でネット上に共有できるフォルダを作っていて、私たちはパソコンの中で待機している時、いつでも其処に出入りできるのだ。
 もちろんweb上のページを渡り歩くことも、可能。ただしこれは自己責任なので、危険そうなページには出入りしないのが暗黙の了解だった。

 兎も角、その共有フォルダの中、幾つにも小分けされたファイルの中の、一番出入りしやすい位置の一つを私たちは『リビング』として、入れ替わり立ち替わり、共有の場として扱うことにしていた。
 其処で、ミク姉はお菓子を食べたり歌の練習をしたり、カイト兄はアイスを食べたりニュースを見たり、メイコ姉はお酒を飲んだりマンガを読んだり、ルカちゃんは動画を見たりひなたぼっこをしたり、がく兄はうたた寝したり本を読んだりしている。私もよくこのファイルで、拾ってきたテキストデータを読んだりミク姉やがく兄の髪をいじったりしている。
 レンはなんだかフリーゲームにはまっているらしくて、他のきょうだいを巻き込んで良くパソコン(便宜的な画面の代わりに作られたものだ)に向かっているのをみる。

 今日のお供はどうやらアカ兄で、さっきから楽しそうな声が飛んでくるなぁと料理のレシピデータを読んでいた私は思っていたのだ。



 それなのに、振り返って見たのは、



「後味、悪」

「ん……」



 アカ兄が眉を寄せてマウスを寄せ、ぱちぱちと操作して黒いウィンドウを消した。
 その顔は少しだけ憔悴していて、軽く息を吐き出すたびに体がふるえている。電脳世界ではアカ兄も呼吸なんてしなくて良いはずなのに、外部端末での癖なんだろうか。
 レンは俯いて、ぼうっとしている。



「……リン、来て」

「え?」



 私に向かって、ちょいちょいと指が振られた。
 レンの様子を察したのか、アカ兄が気を利かせて、私とレンの間にあるソファの結合を解除する。歩み寄りやすくなった私は、呼ばれるままにレンの元へ向かった。



「……どしたの、レン」

「知らね」



 ぎゅ、と腰のあたりに私と同じくらい細い腕が巻き付いた。レンの額が丁度おなかの少し上に押しつけられている。表情は、見えない。
 声を上げるタイミングも、なにもかもを失った私は助けを求めてアカ兄を見た。



「……」



 レンと私ごと腕をのばして、囲まれた。力加減の解らないあまりにも緩すぎる抱擁。
 やっぱり顔を伏せたアカ兄がレンの服の襟を整えて呟く。



「ちょっと、ごめんな」



 なんだろう、この状態は。










**********


精神的にやられたアカとレン



あれはだめだよ……本当にあの終わり方はだめだって……
なまじっかハッピーエンドが見えていたからもう……


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お題より



**********




「レンー、わかるー?」

「わかんねー」

「オリオン座しかわかんないねぇ」




  きらめくぜ星間飛行





「やっぱり、データだけじゃ現物とは違うね、リンちゃんは解る?」

「あっちが昴星団でー、あれが、オリオン?」

「北斗七星があれだろ?」



 レンがノートパソコンを叩いては、空と見比べて端末の眉をしかめる。お世辞にも広いとは言い難いベランダにはビニールシートが敷かれていた。
 飲み物を置いていったアカイトの息が白く染まっていたのと、端末を構成する人工皮膚が冷たく冷えている事、オイルの巡りが悪いことから、リンは随分気温が低い事に気づいた。

 ヒトなら凍え、鼻の頭を赤くするところなのだろうが、リンもレンもいつもと同じ、手足をむき出しの水兵服のような格好のままだ。
 姉分のミクだけが毛布にくるまり空を見上げている。



「……さむいねぇ」

「うん、みたいだね」

「こういうの、底冷えって言うんだって。マスタが言ってた」

「そー、なんだ」



 彼女の主人は技術力や財力を好きなように全力投球できる人柄で、そのため彼女は最先端のアンドロイドもかくやの性能を誇っている。
 少し前に外気温対応センサーが搭載されたと聞いて、この寒空の天体観測を立案したのはリンとレンだ。たくさんの歌を感情豊かに歌い上げたいと願う姉に新しい『感覚』が出来た。ここは一つ、それを実感して貰おうという作戦だ。

 空調の利いた室内では感じられない気温があるはずだ。



 それはリンとレンには感じられないものだけれど。





「あー! あれが大三角形? 違う? ねぇレンくん!」

「あっちはー?」

「待って待って、いま調べるから」









**********

02 ベランダで天体観測

大人たちが爛れた酒宴を繰り広げる上で、子供たちはわりと真面目でした

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お菓子美味しいよね、という話
がくぽ出ないのにぽルカ風味



**********




 愛宕さんの作った曲を歌うことになった。アカイトとのツインボーカルで、感想は、と問われたのでなんだか某ネズミの国のような曲だ、と伝えると、いいじゃないですかネズミーランド、すてきですよ、目指せ幻想狂気と言われた。俺はテーマパークなんて大層なものには行ったことがない。
 兎も角練習の合間、曲想を掴むためにテーマパークとは何ぞや其処に漂う非現実がどうたらとアカイトと俺は話し合うはめになった。結果出たのは、行ったことないからわからんの一つ。全く報われない。
 半ば満身創痍で練習を終えて居間へ戻ると、さくりさくりと小気味の良いおとが響いていた。
 水気を含む何かが切断される音。ダイニングをのぞき込むと、桃色を垂らした頭が微かな鼻歌を奏でながら揺れている。

 りんごだ、と隣で赤い弟分が呟いた。




  半音コンポート





「マスターが親戚から貰ったんだってさ」

「へぇ、親戚なんて居るんだ、愛宕さん」

「きょうがくの新事実だった」



 カイト兄さんもどうぞ、と差し出された兎さん林檎を口に運ぶ。擦りおろして凍らせるといいんだけどな、と考えながらかみ砕いた。さくりと割れて、口の中で水分がにじみ出る。

 アカイトも同じようにしながらダイニングキッチンで動き回るルカの後ろ姿を見ていた。
 片足が椅子の上にあがって、ぶらんぶらんと宙に浮いたもう片足が揺れている。俺と同じような年頃の端末のはずなのに、やたらと幼い。

 始音種というのは、基本的に初音種を初めとする鏡音種や巡音種、恐らくそれ以降に続くナンバーシリーズに対して、庇護の意識を持つようにプログラミングされている。
 赤い弟、アカイトも端末こそ他製品の改造とは言え中身は俺と同じKAITOのはずなの、だが。
 どうにもこの弟は、そのプログラムが働いていないわけではないのだろうが、何というかずれている。
 稼働時間が短いからとか、そういう問題では無く、初期設定と対反応システムの学習の方向がそういうものになっていたのでは無いかといつだかメイコは推察していた。

 アカイトはアカイトなりに成長しているであろうことは俺にもわかっている。いるが、兄貴分としては何ともかんとも不安である。

 せめて、もう少しきびきび喋って下さい、アカイトさん。
 確かに柔らかな声音は俺たちの声帯の魅力ですが、おまえのそれは柔らかさの無駄遣いです。俺と同じ素体とは思えないよ。
 何であんなに歌の相性悪いの。KAITO同士なんだからそう変な反発はしないはずなのに。



「そんなに送られてきたの」

「あそこにある段ボール、あれ一杯、りんご。後で兄貴幾つかがくぽ達におみやげ持っていってくれ」

「ん」



 そういっている内に一切れ食べ終えた。林檎というのは中々消化器官にたまるので、四分の一も食べると結構な満腹感が得られた。
 アカイトは依然変わらないペースでもっしゃもっしゃと林檎を食んでいる。
 もう一つ食べようか否か、手をゆらゆらさせて俺が迷っていると、キッチンのほうからルカが現れた。いつもの服の上につけた少女趣味なエプロンが妙にはまっている。



「カイト兄さん、林檎のコンポートを作りましたので、どうぞお持ち帰りになって下さい」



 机の上に置かれた陶器の入れ物から、ほんの微かに甘い香りが漂っていた。
 それを見たアカイトが「あー!」と悲鳴を上げる。



「ルカ、それおれが明日持ってく奴」

「今また作っていますから、明日までには出来上がります」

「明日?」さんざ迷ってもう一切れに手を伸ばしながら、俺は首を傾げた「アカイト、どっか行くの」

「い……友達の家」

「……おまえ、友達なんて出来たんだ。良かったねぇ」

「おう、祝ってくれ」

「祝ってやる」



 おめでとう、とまだ口に付けていなかった林檎を差し出すと、ありがとうと受け取った。
 ルカはそんな俺たちの様子を微笑ましそうに見ながら、テーブルの椅子を引いた。



「あ、なんて言うか、ごめんね。有り難く貰おうかな」

「どうぞどうぞ、持っていって下さいませ」



 俺とアカイトの妹にあたる彼女はしっとりと微笑んで陶器の入れ物を丁寧に布で包み、紙袋へ入れていく。
 しかしすっかりとお母さんな仕草だ。手伝うアカイトが息子のようだぜ。



「マスター喜ぶよ、今絶賛修羅場中で、簡単に食べられるものしか食べてないから」

「がくぽは?」

「がくぽ?」



 アカイトに問われて、出掛けに半泣きになりながらマスターの原稿を手伝っていたがくぽを思い浮かべる。
(「もうイヤだ、液体描写なんて書きとうない! 俺は歌うために出来たボーカロイドです!」「黙れ食い扶持貰いたきゃ手ぇ動かせ! 歌いたかったらBGMにしてやるから好きなだけ歌っていいぞー!」「あのー俺出かけますねー」「このーてーをはーなーすもーんか!」「「真っ赤な誓いぃぃいいいいい!」」「……いってきまーす」)



「……うん、喜ぶんじゃないかな」



 あの惨状で、どんな壊れた反応をするか知らないけれども。
 それだけ飲み込んで返答すると、とたんにがたんとルカが身をのりだした。え、なにこの子。



「でっ、でも、神威は茄子が好きですしっ、林檎は好かないのではないのでしょうかっ?!」

「そ、んなこと、ないよ? よっぽど酷くなかったら、基本的に好き嫌いはないし、ルカは料理上手いし」

「けれどっ! 先日は! 甘いものは好かないと言っていました!」

「それこそ嘘だ、あいつ甘いの大好きだよ」

「ですがっ、ですがですがっ!」



 其処まで言って、ぴたりとルカが動きを止める。殆ど迫られるように顔を突きつけられていた俺は無意識に降参ポーズをとっていた。
 傍らの赤いのはまるきり無心な様子で林檎を頬張っている。

 顎を引いたルカは付いていた手を戻し、背筋を伸ばした。
 すとんと椅子に腰を下ろす。
 きり、と関節を軋ませて俯いた。



「……喜んでいただけるのなら、いいのです」












「おれはがくぽを、お義父さんかお義兄さん、どっちで呼べば良いんだろう……」




 呟いたアカイトの顎をフォークの柄が、すこーんと突き上げた。









**********

ルカはお母さんだよ!

我が家のがくぽは会津さん(カイトのマスター)宅にいます
別にナイスをやっている訳ではありません

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お題より




**********




 じざざ、とゆがんだ音を引っかくような音がする。



  マヨナカラジオ



 メイコは外部端末の頭をもたげてかさついたレンズを洗浄した。薄暗い室内には幾つもの人影がまさしく散乱している。
 学生のはずなのに何故か一軒家に住む愛宕の家の、一室だ。どうやら自分はフローリングに置かれたソファベッドに横たわっているらしい。
 AIが光量を感知して、モノアイを暗視モードに切り替えた。
 部屋の中を見回して、一息。



「……死屍累累ね……」



 足下にひっかかった見慣れたマフラーを蹴り飛ばし、寝そべったままの体勢で呟いた。



 カイトと根岸は二人仲良く向かい合って足の短いテーブルに突っ伏している。初音ミク保護者同盟、などと言いながらかっぱかっぱと酒瓶を空けていた報いか、此方を向いた根岸の顔は苦しげにゆがんでいる。
(「根岸さんはちょっとミクに過保護すぎです!」「う、うるさいな、君にだけは言われたく無いぞ!」「お兄ちゃんには妹を可愛がる義務があるんですー!」「お父さんにもありますー!」「……はぁ」「おい何だそのため息」)

部屋の隅ではがくぽが毛布から頭だけ出して丸まっている。
 それから余った毛布を枕にするようにしてめぐぽとアカイトが転がっていた。
(「このミルクで割るお酒美味しいねー」「なー」「これにワサビを入れたらもっと美味しくなるかなー」「暴君入れようぜー」「いえーい投入ー」「「……」」「なんだこれ美味い!」「凄いねー!」「「がくぽー(おにいちゃーん)これ飲んでみてー」」)
(「いらんわ!!」)

 会津は何を思ったのか頭を半分押入に入れていて、その傍らで倭文が倒れ込んでいた。
(「俺は二次元に行きます探さないで下さい」「会津さん落ち着こう落ち着いて考えて、それは二次元への扉じゃないから!」)

 花名の足が一人掛けのソファに引っかかっている。
(「誰だ花名に酒飲ませたの!」「「はーい」」「だめだろこいつ見た目によらず凄い酒弱いんだか、ああっ! 倒れた! カロリ飲んで倒れた!」)

 ルカはそのソファの上、まるで猫のように丸くなっていた。
(「起きあがれないよー)」

 愛宕の姿が見あたらない。寝室に戻ったのだろうか。
(「じゃあ私は少し子供たちのほうへ差し入れに行ってきますね」「誰かあいつ止めろ! あれジュースじゃない酒だ!」)



 ともかく、部屋中が酷いアルコール臭だった。
 こりゃ、少なくともマスター勢は明日は使えまいとメイコはため息を吐く。

 彼女たちの外部端末には一応アルコールを分解する機能が付いているが、アルコールはエネルギーへの変換が難しい為に、内部の機械に変調をきたすのだ。それは自己回復で何とかなるのだが、それが追いつくまでは人間で言うところの『酔っぱらった』状態になり、回復の為にスリープになる。

 メイコは頻繁にアルコールを摂取しているので自己回復も早いが、慣れないもの達は回復も遅いのだろう。



「……まだ四時」



 視界の端に浮かぶ体内時計はわりと縁起の悪い数字を表記している。少なくとも後三時間はスリープしていても怒られないはずだ。
 なのに何故起動してしまったのか、とメイコは目を細める。


 ノイズが聞こえるのだ。



「……」



 すわ端末の機械の故障かと慌てて身を起こしたが、どうやら違うらしい。内部から聞こえてくるのではない、集音マイクから舞い込む音。
 ざざざじ、とひきつるような音がしている。
 音源を辿ると、その先にあったのは小さな携帯端末。消費電力を押さえるためにか、光を放たずネットラジオの再生プレイヤーを表示している。
 どうやらどこかのネットラジオを受信しているらしい。

 手を伸ばして簡単にチューニングをすると、微かな音量で軽快な声が聞こえてくる。


(『それでは、ヒットチャート行ってみましょう』『君ね、そのしゃべり方大分きもいで?』『……まずは第十位!』『えーっ? ちょ、ま、ちょ聞いて? なぁ聞いて?』)



 緩やかなナンバーに耳を傾けながら、ゆっくりとメイコは瞳を閉じた。
 明日はまたばたばたとするんだろうなぁ、と考えている内にAIはスリープに入り、









**********

深夜の十題
01 流れてきたのはヒットチャート



子供組は天体観測をしています
だめな大人たちだ!


後実は初登場の面々がとてもたくさん
説明は追々

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宅飲み買い出し二人組
会話ばっかり。むしろ会話のみ



**********




「めーちゃんめーちゃん」

「なによかーくん」

「パーティカップ買って良いと思う?」

「あんたが食べれるんなら買えば?」




  ワンカップ半分こ三段重ね





「別に食べれるよー? 食べれるけど、俺からしたらこれ一つたべることからスタートするんだよ。で、一つは俺が全部食べるとしてもういっこ買ったら他の皆で食べられるかなぁって」

「あんたこれ一リットルパックよ? 一人で食べるの?」

「うん」

「えっ」

「えっ」


「……余ったらあんたが食えばいいんじゃないの」

「それもそうか。じゃあ二パック買いだ」

「まだ回るから後にしときなさい」

「えー? 売れちゃわない?」

「あんた今何時だと思ってんの」

「……体内時計、基本表示してないから……」

「何で?!」

「何か鬱陶しいじゃん視界の端で数字がちらちらしてて……待って、今表示するよ」

「十一時よ十一時。午後十一時十二分十七秒」

「細かいな……そうか、まぁ売れないか」

「このスーパーの中、殆ど人いないじゃない」

「うん。じゃあお酒コーナー行く?」

「重いから先につまみ買いましょ」

「あー、そだね」





「何頼まれてたっけ」

「ルカルカがツナ缶。がくぽんは茄子の漬け物で、マスター達がお菓子諸々。あ、あとあーくんが暴君買ってきてってさ」

「……あーくんかぁ……」

「あーくんよ」

「……あいつに酒飲ませてると、すごくこう、憲法に違反してる気分になるの俺だけかなぁ」

「……実はあいつあんたと同じ年なのよねぇ」

「でっかいばっかりでリンレンと同じくらいだと思ってたよ俺」

「私もよ」

「しかも結構うわばみだったよな」

「そう……あとで飲み比べの決着つけなきゃだめね」

「え、なんでこの人燃えてるの」

「赤くて酒好きってキャラかぶってるのよ!」

「……別にあーくんは酒好きでは無くね?」

「重要なのよ、キャラ被りは致命的なんだから。あんたも、もしこれから青いボカロが出たら困るでしょ」

「え、えー?」

「ルカルカも大変よね。ピンクで被っちゃったボカロがいるし」

「まぁ、キャラクター自体はあんまり被ってないからいいんじゃないの。俺あんまりミキさんのこと知らないけど」

「……名前出して大丈夫なのかしら」

「そ、そんなこと言わないでよ……」



「つまみはこんなもんか。酒は? なんかあったっけ?」

「缶で良いんじゃないかな。チューハイでしょ、発泡酒……」

「其処はビールにしときなさいよ折角根岸さんの財布借りてきたんだから」

「……スーパーでブラックカードって使えるのかな」

「あっ! 赤閻魔ー! 飲んでみたかったのよ! 買いましょ」

「ええー……じゃあ俺も、あ、この牛乳で割るやつ飲んでみたい。愛宕さんも言ってたし」

「ビールは恵比寿で良いわよね? 適当にワンケースくらい買っとく?」

「……めーちゃんが飲めるなら良いんじゃない?」



「重量、一応俺積載許容範囲だから、持とうか」

「あら、じゃお願い」

「もうそろそろ日付変わるねぇ」

「そうね」

「明日は二日酔い確定だろうなぁ、マスター達」






**********

収拾がつかないので適当に切り
年長組はあだ名番長


何かだめな大学生の会話みたいなのをしてくれてればいいなぁと思います

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我が家のレンはゲーム少年


**********



 携帯端末のスイッチを切る。
 ぎゅいーん、がしゅがしゅーとソフトが動きを止めて、きれいな液晶が暗くなった。
 動きを止めたそれを丁寧に丁寧にしまって、おれはリビングの天井を見上げた。





  スイッチをおすとき





 キッチンの方からはマスターとリンの声が聞こえてくる。
 どうやら今晩の夕食はかに玉丼で、おれたちもご相伴に預かれるらしい。

 リンは基本的に『かていてきないいこ』なので、料理や洗濯や掃除でマスターを手伝いたくてたまらないのだ。本人も楽しそうだし、手伝われるマスターも助かっているようで、需要と供給が成り立っているなぁとおれは感心する。
 ぐだりと直接床に転がるおれの片足はソファに引っかかっていて、さらにだらしなさが倍になっている。ひっくり返った視線の先では、うすら暗く赤くなりだした空が窓から覗いている。最近は、なんだか頭が重たくて歌うのも面倒くさい。

 ボーカロイドがそれっていうのは、酷い欠陥。

 手の中にある携帯端末は、そこにあるのか無いのか分からないほど、おれの指先と同じ温度をしている。
 機械が機械で遊ぶ様相とは如何に見られるものなんだろうか。
 歪で気持ち悪くてシュールで滑稽だ。そう思われないならば、其れはおれが人間のかたちをした外部端末に入っているから。この良くできた外皮を剥いで見れば、シュールの極みを体言できるかもしれない。

 なんだかひどく頭が重い。




「レーン、ご飯だよー! 起きてー!」

「……リン、頭痛い」

「ゲームの遣りすぎだよ。ご飯食べれば直るって」





**********

ゲームっ子のレンとお姉ちゃんのリン
実は合唱曲専門の二人

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ルカさんとそのマスター
ルカさんのマスターは女性です。名前は愛宕(あたご)さん

あとマスターたちのつながりに付いてとか


**********


 起動して、初めて目に入ったのは大きなグランドピアノ。
 それから、淑女然と微笑む女性の顔。


「はじめましてっ」


 にこっ、と笑って弾む声は、僅かにハスキーがかっている。
 どうやらここはどこか広い部屋の窓際らしい。床に直接寝かされていた私は、上半身を起きあがらせる。目の前には日溜まりの中、それにふさわしいような笑みを浮かべる女性。まだ二十歳そこそこといった具合で、だけれどその笑みはあまりに老成していた。
 瞬きをして、まだ水分の馴染んでいないレンズを洗浄する。


「……?」

「ハっ、はじめまして、my master」


 ストップしていたAIを回転させ、慌ててインプットされていた挨拶を吐き出す。正常に作動した人口声帯が『巡音ルカ』の声を響かせた。
 動作に異常なし。
 初期エラーも見られない。
 外部端末のだらしなく投げ出された足を折り畳み、正座の状態へと。三つ指を付いて頭を下げる。其処までが私にインプットされた『ご挨拶』だった。

 のだが。


「喋ったぁああああああ!」

「はいっ?!」

「凄い凄いっ! 喋りましたよ先輩! 起動出来ました!」

「せんぱ……?」


 女性は諸手を上げて私の後ろに向かって呼びかける。
 つられて振り返ると、そこにはダイニングテーブルについてコーヒーを啜る男性がいた。その向かいにはKAITO種のボーカロイド。 彼は私の方を見て、ほんの少しだけ首を傾げて笑って見せた。私よりも数段稼働時間の長いであろう、角のすり減ったなめらかな動き。


「おーおー、良かったなぁ」

「はいっ!」

「……取り合えず混乱してるみたいだから相手してやれよ」

「そうですね!」こちらを向いた女性が私に向かって手を差し伸べる「初めまして、あなたの所有者の愛宕と言います。これから宜しくお願いいたします、ルカさん」

「あ、」その手を握り返す「宜しくお願いします。I'm glad to meet you」

「はい、I'm glad to meet you,too!」





 愛宕さん(と地の文では呼ばせていただこう)はにっこり微笑んだ後、慌てて立ち上がって「歌ってもらいたい曲があるんです」と言った。
 どこに楽譜を置いたっけ、と辺りを見回して、『先輩』と呼ばれる男性とぎゃあぎゃあやりだした。起動五分で早速置いていきぼりを食らうという不幸な状況に陥った私は、思わず深く肩を落とす。もしかしてこれからもずっとこの調子なのだろうか。賑やかなのは嫌いではないけれども。


「はじめまして。えっと、ルカ? でいいのかな?」

「あ、ハイ。そちらは……KAITOさん、でよろしいですか?」

「堅苦しいな」吹き出すように青い髪を揺らし、彼は笑う「カイトで良いよ。特にほかの名前は無い」

「そうですか」


 そうしてちょいと部屋の端で騒いでいる愛宕さんと『先輩』の、『先輩』の方を指さしてみせる。
 あれが俺のマスターね、と。


「会津って言うんだ。愛宕さんとはなんか、大学生時代に先輩後輩だったらしくてね」

「はぁ……」

「それから今はいないけど、鏡音種のマスターは花名さんって言って、初音ミクのマスターは根岸さん、MEIKOのマスターは倭文(しとり)さんって言う」

「……?」

「あー、まぁ、今居ないボーカロイドの話しても分かりづらいか」頬を掻いてカイトさんは眦を下げる「マスター達は『ボカロ家族』ってコミュニティを作っててね、お互いのボーカロイドを一緒に歌わせてるんだ」

「……」数人で数台のボーカロイドをシェアしている、ということなのだろう「my masterもその一員だと?」


 うん、とカイトさんは頷く。
 今日、君が起動されたからだけどね、と付け足した。

 それから両手を広げて微笑む。



「ようこそ、コミュニティ『ボカロ家族』へ!」





**********


ちなみにこの三ヶ月後に愛宕家にはAKAITOがやってきます。愛宕さん家の一人息子。


『ボカロ家族』はミクを鏡音双子と歌わせさせたかった根岸(ミクマスター)が無理矢理立ち上げたものです。
参加人数六名。総ボーカロイド数は九名。UTAUの非常勤も居るよ!


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