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お題より
**********
星空が今にも落ちてきそうだ。
随分前に星座の双子を歌う曲のカバーをしたことを思い出しながら、ルカは空を見上げる。
さかさのダブルユー
屋根の上って気持ちいいんですよ、と言ったのはマスターで、そういう発言をしたという事は別に屋根へ登ってもかまわないというゴーサインなのだろう、とそれでもびくびくとしながらルカは身じろぎする。地面は遠い。見慣れた小さな庭は、上からの視点で見るといつもとは随分違った様相にみれた。ともかく、落ちたら端末が機能停止しかねない。
それでもなぜ彼女がここに上っているのかと聞かれれば、それはルカ自身も首を傾げざるを得なかった。
ほんとうに、なんで上っているのだろうか。
「……?」
眉を寄せても分からなかった。
あちらに見えるのがオリオン座。北に遠く浮かぶのがこぐま座。それに寄り添うようにおおくま座。カシオペア座がひっくり返っている。
星座の合間を縫うように順々に追っていけば、それはまるでナイトウォーク。
怖いけれど、とルカは一息吐く。
どうしてなかなか、こう言うのも悪くない。
「……ルカぁ」
「っ?!」
「こんなとこに居たのかよう。探したんだけど」
がたりと物音がして、気の抜けるような声に振り返ると居るのは赤い頭の家族。
ルカとは構造の違うかれは、何やらひどく眠たげにあくびを繰り返しては寝間着の袖で目元をこすっている。
「マスターがおなかが減って、眠れないって、あったかいもん作ってくれって、五月蠅いんだよ。おれ飯なんて作れないから、ルカ、さがして、マスター今台所でココア飲んでるから、なんか、」
「分かりました、とりあえずアカイトは部屋に戻って寝ておいて下さい」
「んう」
よろよろとしているアカイトが無事にベランダへ降りたったのを確認して、ルカもそれに続く。
ふと振り向いた先には、逆さに光るカシオペア座が瞬いていた。
星空の下散歩することもできやしない。
けれども、その環境を疎ましく思ったことなど一度もなかった。
なんだか軽い足取りで、ルカは台所で待っているだろうマスターのもとへ向かう。
ざんねん、あなたにかまっているひまなんてありません!
**********
05 星空散歩
本格的にルカがお母さん
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和風パロ第二段ー
前回と同設定です
ya☆ku☆za☆っぽいカイトと極道の妻的な女中的なリンさん
もうこの一行で非常に人を選ぶのが手に取るように分かるな!
趣味に走りに走ったらなぜか鏡音ズとミクさんの年齢差が逆転しました
一体私はどこへ行きたいんだろう
**********
「リン、リン」
「なに? カイトの兄さん」
甘味ならお勝手の水屋の中にありますよう、と洗濯篭を抱いてリンは笑う。
自分の扱いに慣れきったその笑みにカイトは苦笑し、いやと頭を掻いた。
FiNゑ
長い髪が畳に広がっている。
すうすうと薄い胸を上下させ、ミクと呼ばれる屋敷の世話子は、安らかな寝顔を晒していた。
「……こんな小さいミクを自分の部屋に連れ込んで、何してるのさ、カイトの兄さん」
「なっ、何もしとらんよ俺は! 本を読ませろってせがまれたから上げただけだってば!」
「本、ねぇ」
「止めて、そんな目で俺を見ないで」
確かに仰向けで豪快に眠るミクの横には、彼女が読むには少しばかり早いのではないかとさえ思われる草子が落ちている。
この屋敷で、カイトは唯一の知識人といって差し障りない。本当の本当に育ちよく、賢慮も兼ね備えているのは囲われ娘のルカだが、それを除けば彼はお家一番の勉強家であると言えた。
あてがわれた部屋が広いものなのでその量に気付きにくいが、書物が三畳程を締める本棚に入れ込まれ、さらにその周囲にも何冊かの積み上がりが出来ている。
本当ならば学習塾にでも通うこととなっていたであろう年頃のミクは非常に知識に飢えており、こうしてカイトの部屋を訪れることがよくあったのだ。
今回はそれに夢中に成りすぎ、本当に夢中へ陥ってしまったというところか。
そういえば早朝、女中たちに混じり細々と家事を手伝う姿を見かけた。小さな体に疲れが溜まっているのもあるのやもしれない。
齢九つでこの屋敷に据え置かれ、名前を変えられそれまで手に粉を付けたことも無かろう少女にとって、この部屋は唯一年相応な勉学という行為に励める、得難く安らげる場所なのかも知れぬ。
と、学の無いリンがそんな小難しい事を考えるわけもなく。
流石にカイトが手を出そうとしていたなんていうのは冗談だが、カイトに構って貰って遊ぶうちに疲れ眠ってしまったのだろうと判断した。
「メイコの姉さんを悲しませるような事だけはしないでよね」
「し、しませんよ? えぇえ、何、この言われよう……泣きたい」
本気で涙目になっている兄貴分に溜息一つ、頼まれて押入から引き出してきた柔布で、ミクをくるむようにして持ち上げる。
カイトには布団を掛けてやりたいので出してくれとしか頼まれていなかったが、こんなほこりっぽいところで寝るのは体に悪いと主張したのはリンだった。
鍛えているなんてそんな事はないが、それでもミクの体は軽く、力を込めよう物ならぽっきりと潰れてしまいそう。
「ルカ姉さんの所で、良いのかね?」
「いいんじゃないのか、あ゛」
「あ゛?」
唐突に上がった奇妙な声に眉を寄せる。
カイトは不自然に視線をうろつかせ、決まりの悪いひきつった笑みで「ええと、ほら、今日は、さ」と言葉を濁した。濁されてもそれをくみ取る賢しさはリンには無い。彼女はけして阿呆ではないが、思慮だとかには結構欠けていた。
然る後、カイトが何をいいたいのか全く分からない。
「今日は? 何かあったっけ?」
「ほら、リン、若が!」
「若が?」
ああもう!
そんな風にカイトは乱暴に頭を掻くが、リンにはさっぱり解さない。
確かに今日は若こと、神威家長男がこの屋敷に居る。
それは本来なら取り立てて珍しいことでも無いのだが、最近の所何やら立て込んでいたごたごたがあったとかでめっきり居られなかったのだ。昨日も昨日、そのごたごたが収束したとかでやっとこさの帰宅と相成った。
その際、リンも暫く振りにレンとの再会を演じたわけだが、その辺りの記憶は大変恥ずかしいので早くも封印されている。
そんでもって、その若が。
疲れのためかまだ恐らく起床もされていない若が。
一体全体、時期お台所のルカ姉さんのお部屋となんのご関係が。
「……ああ、はいはいはい」
「うん、分かってくれたか」
両手を打とうとして、ミクを抱えているのを思い出して止める。
カイトはしたり顔で頷いた。
ならば、どうしたものかなぁとリンは首を傾け、これだけ会話をしていてもすいよすいよと眠り続けるミクを見やる。
カイトの部屋での読書も、幼く賢しい彼女なりに愛するあねさまを気遣ったが故の行動だったのだが、リンはそんなことを知る由もない。
ただでさえ来客が激しく、慌ただしいこの屋敷だ。適当な座敷に転がしておくという訳にも行くまい。客人の侠客を通した先に、小さな餓鬼砂利がすいよすいよと眠っておられるのでは総本家神威の名が立たない。
傾物と称される若ならば面白がってそれを許しそうだが、彼の妹さまがそれを許すか。許すわけがあられない。
「……どうしたものかね」
カイトは左上をにらみつけ、ふうと鼻から息を吐く。
リンの腕の中のミクが「んんんん」と身じろいだ。
「リンー、リン何処行ったー?」
「リンちゃんなら、カイト兄さんのとこ行くの、見たけど……」
「カイトの兄さん?」
んん、とレンは眉を寄せる。
今更二人の仲をどうこうと疑うことなどない。間違うことなく、血の繋がることがなかろうが、彼と彼女は妹と兄だ。それが覆ったりすることなど、天と地がひっくり返らなければわからない。
教えてくれたハクに礼を言い、カイトにあてがわれた座敷へと足を向ける。
入って、一つ溜息を吐いた。
「……布団、どこにあるんだっけ?」
二人分の布団の追加を探すべく、レンは踵を返した。
**********
けしてリンカイではない何か
なんなんだろう……一体何処へ行きたいんだろうか私は
欲望のまま突っ走ってるよ!きをつけよう 妄想は急には止まらない
カイメイとはいいものです
ぽルカもいいものです
総じて、大人組とはいいものです
子供たちも大好きだがな!
**********
間抜けな歌声がリビングに響く。
ダーリンダーリン!
「ねっえだーりん♪」
「……」
「こっちむーいて♪」
「……兄者」
「んだよう、何でおまえがこっち向くんだよ。おまえは俺のダーリンかコラ」
「兄者、戻ってこい。現実に戻ってこい」
「ハニーって呼べよ。ダーリンなんだろええコラ。給料三ヶ月分のリングしか受け付けないぞ」
「兄者、キャラが可笑しい……というか俺たちは給料とか貰ってないぞ」
「なんだと?! 雇用の改善を申し立てーる!」
「まず雇用されていないが」
カイトと爛れた会話をしながらも、がくぽの両手はてきぱきと動く。
会津家に購入され叩き込まれた同人アシスタントテクニック保持者の悲しい性だったが、そんな事はあんまり知らないメイコの目にはなんか凄く手際いいなぁという風に映っていた。
台所には芳しいチキンライスの匂いが漂っている。
「チキンライスって若干鳥南蛮と匂い似てるよね」
「そうだな」
がくぽはなんかもう訂正する気にもならないらしい。
椅子に逆向きに座りぐったりとするカイトを見もしない背中を見ながら、メイコはううむうちにも料理手がほしいと考えていた。
彼女のマスターは一人暮らしの学生らしく適当に料理をするにはするがやはりお粗末感は拭えないし、メイコには基本居酒屋のつまみ的レパートリーしかない。同居するグミに至ってはニンジン関連の料理しか作らないし作ろうとする気も感じられない。
すると、人同様食物でもエネルギーを充填できる彼らの食卓は、近所のスーパーでニンジンが大売り出しをしてグミが腕を捲ったりでもしない限り、所謂インスタントと呼ばれる物が主食になるのだ。グミや自分はともかく、マスターに対してそれは非常に良くない。若いとは言え、栄養が偏れば健康も偏ってしまう。
しかし自分が目の前の彼らのように料理をマスターするのは、なんか負けみたいな気がする。
主に、ボーカロイドとしての尊厳的な意味で。
「兄者、塩どこだ」
「はぁ? 普通にその辺にあるでしょ、ほら」
「いや、この前買った岩塩のあれは」
「あーはいはいあれね。いれるの? そっちの棚の奥だけど。えっと、マヨネーズの買い置きの隣」
「む、ちょっとフライパン見といてくれ。もう一品なんか作る」
「はいよー。味付けもしとくよー」
カイトがのそのそとダイニングに入っていくのをソファから眺めていると、ふいに手招きをされる。
片手に携えていた鬼ころしの紙パックを机に戻し立ち上がると、木ベラにのったままのチキンライスを差し出された。
「めーちゃん、味見する?」
がこがことフライパンを揺すりながら、カイトはへなりと笑う。
ほかほかと湯気を立て、良い匂いをたてるそれにつられメイコが思わず頷くと、「あーん」と差し出された。こいつはこういう事を平気でするよなぁといっそ感心しながらメイコもそれに応え、口を開く。
「んー」
「どう?」
「ちょっと薄いわね」
「そっか。でも今から塩入れるんだしなー……ガラムマサラでも入れよっか」
がさがさと片手で棚を漁り、小瓶を取り出す。
がくぽと同等かそれ以上に良い手際で味付けをすませ、流れるような手つきで自らも味見。
ううん、やっぱり料理は覚えたら負けな気がする、とメイコはそれを見守った。
「……あんたさ」
「んー? どしたのめーちゃん」
「うちに嫁ぎに来ない?」
「……」
「……」
「……えっ」
「姐さん何いっちゃってんの?!」
「よぉしカイトなら持ってってもいいぞ倭文! 俺は愛宕からルカちゃんをいただく!」
「何言ってるんですか先輩の所なんかにルカは嫁がせられません。がくぽくんを婿に下さい」
**********
どういう状況なんだろう。
我が家の姉さんはなんとなく言葉足らずな感じ。
頭では色々考えてるのに面倒くさいとかそんなんで殆ど口に出さない。
後ジュースのように紙パック酒を飲む
メイコとグミのマスターは学生さん。一番普通っぽい設定。
マスターズの設定ってさぁ…需要、あるのかなぁ…
人間パロ二回目ー
前のと同設定です。そういや鏡音姉弟いねぇなぁということで
**********
人身事故が発生したため、電車の到着が遅れています……
そんな放送が全部聞こえる前に、僕は改札の前で踵を返した。
反射の僕と贋作の彼ら
がこん、と音を立てて落ちてきた缶ジュースのプルタブを引っ張りながら、駅前の広場のベンチに腰掛ける。
入学祝いに買って貰った腕時計を確認するとアナログな時針は午後五時を指していて、リンはもう家の扉をくぐったのかなぁと僕は思った。放課後真っ直ぐに校門を目指せば、僕だって今頃は家のリビングでスナック菓子でも食べていたろうと思うとなんだかやるせない。
傾けた缶から甘ったるいバナナオレが口へ流れ込んだ。
広場の人通りは多いけれど、なんだかその風景が酷く灰色に見える。沢山の色があるはずなのに、飽和してしまったみたいだ。
不意に誰かと話したいと思った。
学校でそうやっているように、ふざけて笑いあって、どうにかこの気持ちを流してしまいたいと思った。
そうでなければ、泣いてしまいそうで。
「ねぇ、君」
「――隣、いいかな?」
かかった声は嘘みたいに綺麗で、機械音かと思った。
「へ、あ、はい」
「そっか。ありがとうね」
思わず弾かれたように其方を見ると、腰まであるような長い長い緑色に染められた髪を二つに結って笑う女の子がいた。
僕よりも少し年上だろう、けれどなんだかいたずらっ子のような無邪気な笑み。
いわゆるゴシックパンクというような格好とその奇抜な髪の色に僕が思わず眉をしかめていると、その子はくるりと振り返って「いいってさー」と自分の背後に手を振った。その視線の先には、やたらとひらひらした服を着たピンクの髪の女のひとと、大きな荷物を抱え紫のポニーテイルを揺らす美形の男の人とその隣でアイスをくわえる青い頭のお兄さんがいる。
え、なにこの集団。あ、危ない。
逃げた方がいいのかと僕は腰を浮かせかけた。
なんだか彼らはその髪の色が当然のように似合っていて、妙にはまっているのが気になった。
僕が瞬きを繰り返していると、灰色の風景の中でぽっかり浮くようにカラフルな集団は、僕の隣でがたんがたんとなにやら始める。
「がくぽそっち押さえて」「ルカちゃん、電源コードは?」「え? あ、……あ、あ!」「ルカ様、これ違うか?」「あっそれそれ、がくぽさんありがとー。ほらルカちゃんあったよー」「ぎゃー! アイスが垂れた!」「レスポールにアイス!」「おまえなにやってんだ」「勿体ねええ! リッチミルクぅぅうう!」「そっち?!」「設置出来たわよ」「あれ、アンプ何処やった」
しゃきんとスタンドが現れ、とんと小型アンプがラバーソールの足下に置かれる。
あっと言う間に大きな鞄からはキーボードが出てきて、ツインギターとベースも加わったバンドの携帯ができあがった。
派手な外見の彼らがそうしているのに、沢山の人が興味深そうに横目を送っていく。
「じゃ、いこーか」
ぎ、とギターケースから現れた真っ赤なギターを抱え、緑の髪の子が後ろに控える三人に目配せした。
頷きを確認して前に向き直ったその子は、もう一度振り返って僕に笑いかける。え、と僕が面食らっていると、ひィと喉のなるおと。
「 ―――ッ!」
強烈なシャウト。
がり、と鼓膜をひっかくようなそれに、無数の視線がぞろりとこちらを向いた。
後を追うように地を這うベースが鳴る。音の主はひたすらに楽しそうに紫の髪を振り乱して四弦を引っかく。
打楽器のないその形態に、不思議に薄いドラムの音が鳴った。キーボードを叩く女の人が一定のリズムで鍵盤に指をたたきつけている。
馬鹿みたいなテクニックのギターにびりびりと頬がひきつる。其れをならす青い頭はアイスの棒をくわえたまま涼しい表情。
なんだ、この人たち。
先ほどとは違った意味のそのつぶやきは、吐き出して叫ぶような女の子の歌声にかき消された。マイクも無しに叫ぶそれは楽器にかき消されても可笑しくないのに、全然負けていない。まるで彼女自身が一個の楽器のようだった。
嘔吐をするようなシャウト。
最近はやっているアイドル歌手の声と少しだけ似ていた。
**********
リンはどこへいったの!
前のと同設定です。そういや鏡音姉弟いねぇなぁということで
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人身事故が発生したため、電車の到着が遅れています……
そんな放送が全部聞こえる前に、僕は改札の前で踵を返した。
反射の僕と贋作の彼ら
がこん、と音を立てて落ちてきた缶ジュースのプルタブを引っ張りながら、駅前の広場のベンチに腰掛ける。
入学祝いに買って貰った腕時計を確認するとアナログな時針は午後五時を指していて、リンはもう家の扉をくぐったのかなぁと僕は思った。放課後真っ直ぐに校門を目指せば、僕だって今頃は家のリビングでスナック菓子でも食べていたろうと思うとなんだかやるせない。
傾けた缶から甘ったるいバナナオレが口へ流れ込んだ。
広場の人通りは多いけれど、なんだかその風景が酷く灰色に見える。沢山の色があるはずなのに、飽和してしまったみたいだ。
不意に誰かと話したいと思った。
学校でそうやっているように、ふざけて笑いあって、どうにかこの気持ちを流してしまいたいと思った。
そうでなければ、泣いてしまいそうで。
「ねぇ、君」
「――隣、いいかな?」
かかった声は嘘みたいに綺麗で、機械音かと思った。
「へ、あ、はい」
「そっか。ありがとうね」
思わず弾かれたように其方を見ると、腰まであるような長い長い緑色に染められた髪を二つに結って笑う女の子がいた。
僕よりも少し年上だろう、けれどなんだかいたずらっ子のような無邪気な笑み。
いわゆるゴシックパンクというような格好とその奇抜な髪の色に僕が思わず眉をしかめていると、その子はくるりと振り返って「いいってさー」と自分の背後に手を振った。その視線の先には、やたらとひらひらした服を着たピンクの髪の女のひとと、大きな荷物を抱え紫のポニーテイルを揺らす美形の男の人とその隣でアイスをくわえる青い頭のお兄さんがいる。
え、なにこの集団。あ、危ない。
逃げた方がいいのかと僕は腰を浮かせかけた。
なんだか彼らはその髪の色が当然のように似合っていて、妙にはまっているのが気になった。
僕が瞬きを繰り返していると、灰色の風景の中でぽっかり浮くようにカラフルな集団は、僕の隣でがたんがたんとなにやら始める。
「がくぽそっち押さえて」「ルカちゃん、電源コードは?」「え? あ、……あ、あ!」「ルカ様、これ違うか?」「あっそれそれ、がくぽさんありがとー。ほらルカちゃんあったよー」「ぎゃー! アイスが垂れた!」「レスポールにアイス!」「おまえなにやってんだ」「勿体ねええ! リッチミルクぅぅうう!」「そっち?!」「設置出来たわよ」「あれ、アンプ何処やった」
しゃきんとスタンドが現れ、とんと小型アンプがラバーソールの足下に置かれる。
あっと言う間に大きな鞄からはキーボードが出てきて、ツインギターとベースも加わったバンドの携帯ができあがった。
派手な外見の彼らがそうしているのに、沢山の人が興味深そうに横目を送っていく。
「じゃ、いこーか」
ぎ、とギターケースから現れた真っ赤なギターを抱え、緑の髪の子が後ろに控える三人に目配せした。
頷きを確認して前に向き直ったその子は、もう一度振り返って僕に笑いかける。え、と僕が面食らっていると、ひィと喉のなるおと。
「 ―――ッ!」
強烈なシャウト。
がり、と鼓膜をひっかくようなそれに、無数の視線がぞろりとこちらを向いた。
後を追うように地を這うベースが鳴る。音の主はひたすらに楽しそうに紫の髪を振り乱して四弦を引っかく。
打楽器のないその形態に、不思議に薄いドラムの音が鳴った。キーボードを叩く女の人が一定のリズムで鍵盤に指をたたきつけている。
馬鹿みたいなテクニックのギターにびりびりと頬がひきつる。其れをならす青い頭はアイスの棒をくわえたまま涼しい表情。
なんだ、この人たち。
先ほどとは違った意味のそのつぶやきは、吐き出して叫ぶような女の子の歌声にかき消された。マイクも無しに叫ぶそれは楽器にかき消されても可笑しくないのに、全然負けていない。まるで彼女自身が一個の楽器のようだった。
嘔吐をするようなシャウト。
最近はやっているアイドル歌手の声と少しだけ似ていた。
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リンはどこへいったの!
リクエストをいただいたがくぽ×ルカ
特に指定は無かったので、もうフリーダムにしようかとも思ったのですが、
まぁそんなにフリーダムでもなく、前から書きたかった相互ツンデレのぽルカ
いいよね相互ツンデレ。初々しくて
ぐみたん視点。ぐみたん語り
**********
こんにちわ、グミです。
グミはがくぽさんというひとの妹なんですが、ちょっとそのお兄ちゃんについて、聞いてくれませんか?
あ、がくぽがグミのお兄ちゃんなんではなくて、グミががくぽの妹なんですよ。それだけは絶対に譲れない事なんです。
って、そんな風なグミのこだわりは置いておきまして、ちょっと聞いて下さい。
いい加減にしてよね!
お兄ちゃんとグミのお友達はだいたいが共通しているのです。例えば、ミクさんとか、MEIKOさん、リンちゃんなんていうお友達はみんなお兄ちゃんから紹介していただいて、仲良くなったんです。そのかわり、グミのお友達もお兄ちゃんに紹介しているんですよ? mikiちゃんや、キヨテル先生とか。
その中の一人にルカさんっていうお友達がいるんです。
ルカさん、知っていますか?
あの髪が長くておっぱいが大きい綺麗なひとです。
グミはあのハスキーな声が大好きなんですが、それはどうでもいいですね。
どうやらお兄ちゃんはあの人が好きで、ルカさんのほうもお兄ちゃんが好きみたいなんです。
……え? 両想いだから? さぞラブラブだろうって?
とんでもない!
あの二人と来たら、顔を合わせれば喧嘩、喧嘩の嵐で、素直になるなんてもってのほかなんです!
聞いて下さいよ、この前だって、
『何よ、この茄子っ!』
『せらしい、蛸女がほざけ!』
その、ボーカロイドとしての美声を無駄遣いした怒鳴り声を聞いたとき、グミはああ、またかぁ、って思いました。
その日も、お兄ちゃんとルカさんは、言っちゃあなんですけど低レベルな、幼稚園児みたいな言い争いをしていました。確か原因は、お兄ちゃんの腰に付いた美振がルカさんに引っかかったとか、そんなくっっだらないことだったはずです。
お兄ちゃんが謝れば済むことですし、ルカさんもそこまで激怒するほどのことでもないですよね?
なのにもう、今にもつかみかからん勢いでの罵声の応酬に、グミはちょっとうんざりしてしまいました。
パソコンの中のみなさんは二人が喧嘩するのはいつもの事って分かっているので、もう日常みたいになんとも思わないんですけど、やっぱり喧嘩は良くないって、一応頃合いを見て仲裁するようにと取り決めをしてたんです。
なので、グミも二人が息切れをするくらいの頃を見計らって、間に割り込みました。
『二人とも喧嘩はやめて下さい。お兄ちゃんが謝れば済む話でしょう?』と恐らく幼稚園児でも思いつく解決策を提案したんです。まぁ、ヒートアップしたお兄ちゃんが謝るとは思えませんでしたし、もし謝ったとしてもルカさんも引っ込みが付かないだろうって、分かってはいたんですがね。
何だかんだ言って、そういうのが一番効果があるかなあって、何となく思っちゃったんです。
『五月蠅い、メグは黙っておれ! 口出しをするでない! 下がれ!』
『あう』
お兄ちゃんにびしりと言われ、思わずグミは身を引いてしまいました。
こんな時ばかりにお兄ちゃんの殿属性は遺憾なく発揮され、泰然とした立ち姿から放たれる声はまるで威圧感の無駄遣いです。それに相対するルカさんも限りなく威風堂々という感じで、女王様の無駄遣いという感じでした。この二人はいろんな物を無駄遣いしすぎだと思います。
二人ともその迫力をガチ曲に注げばいいのにとグミがたじろいでいると、急にぐいっと引っ張られ、奇跡のように柔らかいものに頭を押しつけられました。耳のすぐそばからルカさんの声がして、ああルカさんのおっぱいだと気づきました。なんかすごいいい匂いでした。フローラルの化身って感じで。
『グミちゃんに八つ当たりしないでよ! かわいそうでしょ!』
『はひ?』
『っ八つ当たりなど、――大体、お前が我の周りをうろうろとするのが悪いのだ!』
『誰があんたなんかの周りをうろうろするのよ! それはこっちの台詞だわ! 何よそのカタナ! じゃまなのよ!』
ぐいぐい、ルカさんはグミの頭を胸に押しつけます。
もうふわっふわで再現して枕として売り出したら世紀の大ヒット間違いなしの感覚でした。
ちなみに、ルカさんもお兄ちゃんも、お互いに話しかけようと無意識に近付きあっていることに気付いていないようです。
確かに会話をすると言う目標は達成していますが、これ、なんか違う思います。
好きな子を虐めちゃう小学生の男の子みたいなものかなぁ、とグミは考えているんですが、お互いがお互いそんなんなので手に負えません。
『っ貴様、美振をっ!』
『あー! やんなっちゃう! グミちゃん、行くわよ! こんな似非侍の言う事なんて聞いてる事無いわ!』
『え? え?』
ぐいとまたグミの腕を引き、ルカさんはずんずんとフォルダから出て行きました。そりゃもうぐいぐいと引かれながらお兄ちゃんを振り向くと、お兄ちゃんは毒気を抜かれたような、はと我に返ったような顔をして立ちすくんでいました。
ずんずん歩いて、一体何処に行くのかなと思っていたら、どうやらデスクトップのようで、着くなりルカさんはグミの手を離して自分の顔を覆いました。
ずるずると崩れるようにしゃがみ込む様子はまるで小さな子供みたいで、ちょっと可愛いかなぁなんてグミは場違いに思ったんですが、どうでもいいですね?
『なんで、上手く喋れないのよ……』
『あ、あのー』
『あっ、グミちゃん、ごめんね、引っ張って来ちゃって』
『いえぇ、それはいーんですけど、あの、お兄ちゃんがごめんなさい』
『え』
『お兄ちゃん意地っ張りだから、一度言っちゃうと引っ込みが付かないみたいで、あの、多分悪気があった訳じゃないんです』
『え』
『だからグミが代わりに、あの、ごめんなさいです』
グミがそう言うと、ばっとルカさんは顔を上げました。
何かすっごい目が据わってて怖かったです。
『違うわ、違うの。貴方達は全然悪くないから……of all、あ、私が、全然別に痛くもないのに大袈裟に、あの人を、困らせてしまったから……あう、Why did...know...そんなつもり、ないのに。仲良く、ううう』
後半はぶつぶつと自分に問いかけるようにしながら、ルカさんはうつむき、よろよろと自分のフォルダへと行ってしまいました。
その後ろ姿を見送ってから、グミはため息を吐いて、お兄ちゃんを残してきたフォルダに戻りました。
案の定、お兄ちゃんはぼうっと手の中の扇をひたすらに、閉じたり、開いたりしているんです。扇をいじるのはお兄ちゃんの落ち込んだときの癖で、だからお兄ちゃんがすごく凹んでいるのがグミにはすぐわかりました。
『……メグ』
『ちゃんと謝らなきゃ駄目じゃん』
強いて強い口調でそう言うと、お兄ちゃんはおもしろいくらいにしゅんとしてぱたんと手の中の扇を閉じました。
垂れ下がった目尻で眉根を寄せ、メグを見上げるようにします。
『……分かっては、居るのだ』
『お兄ちゃん、一体幾つの設定にされてるの』
『分かって居る。ぶつかったのは我の方だ。ルカ殿は何も悪くない……ルカ殿の周りをうろうろして居ったのが悪かった。話しかけようとして、居たのに』
その言葉に、グミは思わず目を見開きました。
お兄ちゃん、自覚があったんですか。
『どうして上手く行かぬのだろう、メグ。どうすればルカ殿と諍い無しに話せる』
『……グミに聞かないでよ』
ああ、もう全く。
大体そんなに喧嘩ばっかりしてる方が可笑しいんですよ。ねぇ?
その後お兄ちゃんがルカさんのフォルダに入っていくのをみましたから、一応は仲直りできたみたいです。
その次の日の朝ご飯でまた喧嘩したらしくて、今度はルカさんに『どうしたらがくぽさんと仲良くできるのかしら』と泣き泣き相談されてしまいました。
二人とも、いつもいつも、飽きもせず、
喧嘩して悩んで仲直りして、
だから、もう、早くつきあって結婚でも何でもしちゃえばいいとグミは思うんです!
お互い好きなくせに、迷惑ったらないですよう!
もう殆ど惚気みたいな相談をされるグミの身にもなってください!
あっ、笑いましたね?! 酷い!
代わってくださいよ、辛いんですよう?!
いい加減にしてよね!
(応援はしてあげる気満々だけどさあ!)
**********
リクエスト、『がくぽ×ルカもの』
何かぐだぐだ
殿口調のテンプレがくぽがすごい楽しかった。いいなぁ殿口調も、楽しいなぁ。文語っぽいしゃべり方もいいと思うんですが。
がくぽのしゃべり方はいろいろバリエーションあって良いですよね。そのうち爺口調も書いてみたい
相互ツンデレのつもりでしたが何か違う気がしてならない
まぁ、我が家設定ではあり得ん感じのやりとりができたので良かったです
という訳で、リクエストをしてくれたmuniさま、こんなんでよければお好きにお持ち帰りくださいませ
引き続きリクエストは募集していますので、してくださる方は専用記事のコメントかメールフォームまでどぞー
一個前のが恥ずかしすぎるので、マスターズのぐだぐだで流します
オリキャラですフリーダムです注意注意
**********
『俺ちょっと愛宕ん所アシしに行ってくるなー』
『いってらっしゃいませー。じゃあがくぽん昼作んなくていいよ』
『お土産宜しくな。おう、そうだな兄者』
『最悪お前等にもお呼びかかるかもしんないから、端末入っとけよ』
『『えええー』』
「どうしてこうなった」
「……えー? 先輩何かおっしゃいましたかぁ?」
「いや、どうしてこうなった、って」
「同人誌のアシスタントなんて今更じゃないですか。まだ男性向けってだけでも感謝して下さいよー」
「……何で上から? いや、そうじゃなくて、我が家の奴等の事」
「ああ、カイトくんとがくぽくんですか? そうだ今度がくぽくんとルカちゃんのデュエットでも作りませんか先輩。ggrksみたいな感じの」
「えー? ああ、うん、いいけど」
「手は動かして下さいね先輩」
「あ、はい」
「で、その二人がなんですかー?」
「え、あーいや、何かやたらむっさいなぁと思って……」
「先輩の部屋BL小説みたいになってますもんねぇ」
「うるせぇよ? やめてくれる? 人が気にしつつも口に出さなかったこと言うのやめてくれる?」
「確実にカップリングが三つくらい作れますよねぇ」
「ねぇやめて? 現実に対してカップリングとか言うのやめて?」
「リバも含めたら六つですね。あと三つ巴とかも需要ありますよー」
「無いよ! っていうか何なのお前、そういう趣味もあったの、ねぇ」
「いえいえ、一応知識としてはそれくらい……淑女の嗜みですから」
「それ淑女じゃねえよ。仮に淑女だとしても淑女と言う名の変態だよ」
「そういうののしりは我々の業界ではご褒美ですよ?」
「へっ変態だー!」
「先輩手ぇ動かして下さい」
「はい」
「それにしても先輩、そんな文句言うんだったら別のVOCALOIDを買えば良かったんじゃないですか? 初音種とか」
「いや……まぁ、何て言うか、カイトは俺と声質が似てたから」
「ああ、先輩学生時代のカラオケでのあだ名、音痴な風雅な●とでしたもんねぇ」
「……うん、否定はしないが黙れ」
「まぁ確かにその購入理由は結構分かりますよー。私も、ルカを買った理由って設定年齢が同世代だったからですしね」
「へー」
「幅がほしくなってアカイトを買いましたが」
「あー、お前あんまりジェンダーいじんないもんな」
「機械技術的にはまだ未熟なんで……。で、だったら先輩、がくぽくんはどうして買ったんですか?」
「……いや、あの、何て言うか、」
「ふむ」
「デザインの人が、好きで……」
「先輩、馬鹿でしょう」
「うん……我ながらそう思う」
**********
マスター相手に敬語を使いやしねぇ会津家のナイス
時々マスターを呼び捨てたりするよ!
JBFピアノバージョンエンドレスしたらもう妄想が止まらないので吐き出し
例のごとく全然原型はとどめてない
ピクシブのとある絵から着想を得ました。
本人様知らないでしょうが有り難う御座いますすみません。
苦情が出たら速攻消去します
現代パロかつ若干痛々しいので注意
キャラ? とっくの昔に崩壊してますがなにか?
**********
朝起きたら、右手に赤い糸が巻き付けられていた。
其処から伸びた一端の先には、酷く冷たい瞳をした彼女。
友達になんてなれない
「……ルカ?」
なぜだか酷く痛む頭を、気怠い腕で押さえた。ぎしりとベッドのスプリングが腰の下で軋む。
彼女は変わらず冷たい瞳で僕の手をのぞき込んでいる。
右手の指先が鬱血していく感覚におもわず眉を寄せて目を下ろすと、雁字搦めに巻き付けられた赤い毛糸が目に入った。思わず瞬きをする。
化繊でできたそれが僕の片手を締め付け、指の動きを拘束していた。
「ルカ? なんだこれは?」
「赤い糸」
そう言いながら、彼女は僕の手から伸びた毛糸の一端を自分の手に巻き付け始めた。
ぐるぐると、きつく、煩雑な手つきで絡めていく。
みる間に彼女の白い手が赤くまだらになった。
「それくらい、見れば分かる」
「うん」
ぐるぐるとぐるぐると巻き付いた毛糸の先を薬指に結びつけ、ルカはやっと手を止めた。
のっぺりとした無表情が、やっぱり手元の赤い糸をじっと見ている。
その姿に、じりじりと焦燥しているようにこめかみが痛んだ。
白く清潔なシーツのベッドと、殺風景な壁。この落ち着いた内装はルカの部屋だ。
ぽろぽろと昨日の記憶が頭にわき上がる。
そう、昨日は彼女に誘われて。ご飯を食べて、いつものように喧嘩をして、それから、それから、……どうしたのだったか。頭が重くて、思考が鈍い。浅い吐き気がした。喧嘩をいつものように、という風に表現してしまう自分に酷く苛つく。
絶対に大きなベッドは譲らない、というルカの信念の元に部屋に置かれたベッドの上、寝ていたらしい僕の枕元にルカは座っていた。
その手元に赤い持ち手のはさみが転がっていて、その刃に反射した光が僕の目を刺す。白いカーテンは引かれ、大きな窓から朝日が射し込んでいた。
「具合、大丈夫?」
「え? だ、いじょうぶ」
反射的にそう答えるが、全然大丈夫な気はなかった。
ルカは相変わらずうつむいたままで、表情は伺えない。
「急にばたって倒れたから、驚いたのよ」
「あ、ああ……酔ったん、だったか」
それならこの頭の痛みにも、言いようのない倦怠感にも頷ける。
記憶には無いが、苛立ちにまかせ手元にあった酒でも飲んだんだろう。下戸の上に絡み酒の気がある僕の事だから、ルカに相当迷惑をかけてしまったに違いない。
急に申し訳なく感じ慌てて体を起こしたが、ごんと脳を内側から揺さぶられるような痛みに眉を寄せた。胃のあたりがむかむかする。
ああ、これは相当悪酔いしていたに違いない。 心の底から罪悪感がわいてくる。
恐らくルカは僕の世話を焼いてくれたのだろう。
感謝と謝罪を述べようと向き直ると、ルカは転がっていた鋏を手に取るところだった。しゃきんと金属の擦れ合う音がして、僕の声は飲み込まれた。
「……あなたが寝ている間にね、殺してしまおうと思ったの」
ハスキーな彼女の声は、少しだけ泣いているようにも聞こえた。
「は、……何の、冗談だ?」
「冗談なんかじゃないわよ」
ルカは顔を上げた。
そこには人形みたいな無表情が貼り付いている。
それは酷く不気味で。なんだか、悲しかった。
「お酒にスポーツドリンクを混ぜたの。わたしは飲まなかったわ。あなたが寝たら、殺して、わたしも死のうと思ったのよ」
「なん、で」
なんでそんなことを。
「あなたと喧嘩しながらね、こんなことなら別れた方がいいんじゃないのかって思ったのよ。
こんなにつらいなら、もう会わない方がいいんじゃないかって。
でも、それを想像して、そしたら急に怖くなったの。
絶対にいや。
別れたくなんて無い。
無理よ、離ればなれになるなんて。
でも、あなたがもしもそれを望んだら。わたしが思ったように、あなたもそう思ったら、って思ったら、怖くて怖くてたまらなくなった。
だから、殺してしまおうと思ったの。そうすればあなたは別れよう何て言わないもの」
でもね、とルカは顔を伏せた。
「眠ってるあなたをくびり殺そうと思って、手をかけても、全然駄目なの。力が入らないのよ。
殺せないよ。だって生きていてほしいもの。死んでしまったら、あなたは笑ったり歌ったりしてくれないもの。
だから、あきらめることにしたの」
顔を上げて初めて、ルカはにっこりと笑った。
目を細めて、口の橋をあげて、ちょっと小首を傾げた、いつもの笑み。
それは、泣きたくなるくらいに綺麗な顔だった。
「このね、赤い糸。
これを切ったら、全部終わりにしましょ。
全然の他人は悲しすぎるから、友達になりましょう。
あなたはわたしの部屋に遊びに来て酔っぱらって泊まっていった男友達で、わたしはこういうのは困るからもうやめてよねって怒るわ。
友達だったらいいわよね? 恋人みたいに踏み込まないから、わたしがあなたという男友達をどう思っていようが、あなたは知らなければ知らないでいいの。
この糸を切ったら、それでいいわよね? そう、しましょ?」
しゃきん、と鋏が空を切る音がする。
息をのむように、祈るように、ルカは糸を二つの刃に挟んで、それを僕の手に握らせて一緒に手を添えた。
刃の先がふるえる。
「嫌だ!」
金属音は、響かない。
代わりに差し込んだ僕の手に鈍い痛みが広がる。
普通の鋏では流石に傷は付かないけれど、じくじくと痛む。
じくじくとじくじくと。視界がにじむのは、その所為ではない。
「嫌だ。そんなのは駄目だ。断る。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!」
「がく、ぽ」
「無理だ、嫌だ。絶対に嫌だ。何で、何で好きなのに、好きなのにそんな風に」
「でも、もうこんなのは、」
「嫌だ!」
頬を涙が伝っていくのが分かった。
一筋跡が出来れば、あとはもう簡単に、洪水のように流れていく。
駄々っ子のようだ、と冷静な自分が呟いて、その自分さえもルカとは離れがたいからしょうがないと自嘲した。
「いやだ、友達になんてなりたくない。好きだ愛してる、愛してるんだよ」
鋏がベッドから落ちて音を立てた。
ルカの顔は涙で濡れて見えない。困った顔をしているのだろうか。泣きそうな顔をしているのだろうか。分からない。赤いひもが巻き付いたその白い手を両手で握りしめていると、そっと冷たい指がそれを包み込んだ。
僕とルカの体温の差。
「私だって、そんなの嫌よ」
ぐすりと鼻をすすり上げる音が聞こえる。
雨のように、ぼたりぼたりと涙がシーツを叩く。
それは僕のものだろうか。それともルカのものだろうか。
「友達になんてなれない」
(さよならを言う時なんて永遠に来なくていい)
**********
いろいろとごめんなさい。
本当にごめんなっさい。
もうこれがくぽとルカでする必要あんのとかね。
っていうか何かもう恥ずかしいやらなんやらですごく死にそう。恥ずかしいよ!
あとすごくほうぼうの方々にごめんなさいしないといけないよね。ごめんなさい
これがくぽ×ルカをリクエストして下さった方に捧げようかと思ってたんですが流石に無いな!
もっとこうラブラブしたツンデレっとしたのを書きます。少々お待ち下さい。
例のごとく全然原型はとどめてない
ピクシブのとある絵から着想を得ました。
本人様知らないでしょうが有り難う御座いますすみません。
苦情が出たら速攻消去します
現代パロかつ若干痛々しいので注意
キャラ? とっくの昔に崩壊してますがなにか?
**********
朝起きたら、右手に赤い糸が巻き付けられていた。
其処から伸びた一端の先には、酷く冷たい瞳をした彼女。
友達になんてなれない
「……ルカ?」
なぜだか酷く痛む頭を、気怠い腕で押さえた。ぎしりとベッドのスプリングが腰の下で軋む。
彼女は変わらず冷たい瞳で僕の手をのぞき込んでいる。
右手の指先が鬱血していく感覚におもわず眉を寄せて目を下ろすと、雁字搦めに巻き付けられた赤い毛糸が目に入った。思わず瞬きをする。
化繊でできたそれが僕の片手を締め付け、指の動きを拘束していた。
「ルカ? なんだこれは?」
「赤い糸」
そう言いながら、彼女は僕の手から伸びた毛糸の一端を自分の手に巻き付け始めた。
ぐるぐると、きつく、煩雑な手つきで絡めていく。
みる間に彼女の白い手が赤くまだらになった。
「それくらい、見れば分かる」
「うん」
ぐるぐるとぐるぐると巻き付いた毛糸の先を薬指に結びつけ、ルカはやっと手を止めた。
のっぺりとした無表情が、やっぱり手元の赤い糸をじっと見ている。
その姿に、じりじりと焦燥しているようにこめかみが痛んだ。
白く清潔なシーツのベッドと、殺風景な壁。この落ち着いた内装はルカの部屋だ。
ぽろぽろと昨日の記憶が頭にわき上がる。
そう、昨日は彼女に誘われて。ご飯を食べて、いつものように喧嘩をして、それから、それから、……どうしたのだったか。頭が重くて、思考が鈍い。浅い吐き気がした。喧嘩をいつものように、という風に表現してしまう自分に酷く苛つく。
絶対に大きなベッドは譲らない、というルカの信念の元に部屋に置かれたベッドの上、寝ていたらしい僕の枕元にルカは座っていた。
その手元に赤い持ち手のはさみが転がっていて、その刃に反射した光が僕の目を刺す。白いカーテンは引かれ、大きな窓から朝日が射し込んでいた。
「具合、大丈夫?」
「え? だ、いじょうぶ」
反射的にそう答えるが、全然大丈夫な気はなかった。
ルカは相変わらずうつむいたままで、表情は伺えない。
「急にばたって倒れたから、驚いたのよ」
「あ、ああ……酔ったん、だったか」
それならこの頭の痛みにも、言いようのない倦怠感にも頷ける。
記憶には無いが、苛立ちにまかせ手元にあった酒でも飲んだんだろう。下戸の上に絡み酒の気がある僕の事だから、ルカに相当迷惑をかけてしまったに違いない。
急に申し訳なく感じ慌てて体を起こしたが、ごんと脳を内側から揺さぶられるような痛みに眉を寄せた。胃のあたりがむかむかする。
ああ、これは相当悪酔いしていたに違いない。 心の底から罪悪感がわいてくる。
恐らくルカは僕の世話を焼いてくれたのだろう。
感謝と謝罪を述べようと向き直ると、ルカは転がっていた鋏を手に取るところだった。しゃきんと金属の擦れ合う音がして、僕の声は飲み込まれた。
「……あなたが寝ている間にね、殺してしまおうと思ったの」
ハスキーな彼女の声は、少しだけ泣いているようにも聞こえた。
「は、……何の、冗談だ?」
「冗談なんかじゃないわよ」
ルカは顔を上げた。
そこには人形みたいな無表情が貼り付いている。
それは酷く不気味で。なんだか、悲しかった。
「お酒にスポーツドリンクを混ぜたの。わたしは飲まなかったわ。あなたが寝たら、殺して、わたしも死のうと思ったのよ」
「なん、で」
なんでそんなことを。
「あなたと喧嘩しながらね、こんなことなら別れた方がいいんじゃないのかって思ったのよ。
こんなにつらいなら、もう会わない方がいいんじゃないかって。
でも、それを想像して、そしたら急に怖くなったの。
絶対にいや。
別れたくなんて無い。
無理よ、離ればなれになるなんて。
でも、あなたがもしもそれを望んだら。わたしが思ったように、あなたもそう思ったら、って思ったら、怖くて怖くてたまらなくなった。
だから、殺してしまおうと思ったの。そうすればあなたは別れよう何て言わないもの」
でもね、とルカは顔を伏せた。
「眠ってるあなたをくびり殺そうと思って、手をかけても、全然駄目なの。力が入らないのよ。
殺せないよ。だって生きていてほしいもの。死んでしまったら、あなたは笑ったり歌ったりしてくれないもの。
だから、あきらめることにしたの」
顔を上げて初めて、ルカはにっこりと笑った。
目を細めて、口の橋をあげて、ちょっと小首を傾げた、いつもの笑み。
それは、泣きたくなるくらいに綺麗な顔だった。
「このね、赤い糸。
これを切ったら、全部終わりにしましょ。
全然の他人は悲しすぎるから、友達になりましょう。
あなたはわたしの部屋に遊びに来て酔っぱらって泊まっていった男友達で、わたしはこういうのは困るからもうやめてよねって怒るわ。
友達だったらいいわよね? 恋人みたいに踏み込まないから、わたしがあなたという男友達をどう思っていようが、あなたは知らなければ知らないでいいの。
この糸を切ったら、それでいいわよね? そう、しましょ?」
しゃきん、と鋏が空を切る音がする。
息をのむように、祈るように、ルカは糸を二つの刃に挟んで、それを僕の手に握らせて一緒に手を添えた。
刃の先がふるえる。
「嫌だ!」
金属音は、響かない。
代わりに差し込んだ僕の手に鈍い痛みが広がる。
普通の鋏では流石に傷は付かないけれど、じくじくと痛む。
じくじくとじくじくと。視界がにじむのは、その所為ではない。
「嫌だ。そんなのは駄目だ。断る。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!」
「がく、ぽ」
「無理だ、嫌だ。絶対に嫌だ。何で、何で好きなのに、好きなのにそんな風に」
「でも、もうこんなのは、」
「嫌だ!」
頬を涙が伝っていくのが分かった。
一筋跡が出来れば、あとはもう簡単に、洪水のように流れていく。
駄々っ子のようだ、と冷静な自分が呟いて、その自分さえもルカとは離れがたいからしょうがないと自嘲した。
「いやだ、友達になんてなりたくない。好きだ愛してる、愛してるんだよ」
鋏がベッドから落ちて音を立てた。
ルカの顔は涙で濡れて見えない。困った顔をしているのだろうか。泣きそうな顔をしているのだろうか。分からない。赤いひもが巻き付いたその白い手を両手で握りしめていると、そっと冷たい指がそれを包み込んだ。
僕とルカの体温の差。
「私だって、そんなの嫌よ」
ぐすりと鼻をすすり上げる音が聞こえる。
雨のように、ぼたりぼたりと涙がシーツを叩く。
それは僕のものだろうか。それともルカのものだろうか。
「友達になんてなれない」
(さよならを言う時なんて永遠に来なくていい)
**********
いろいろとごめんなさい。
本当にごめんなっさい。
もうこれがくぽとルカでする必要あんのとかね。
っていうか何かもう恥ずかしいやらなんやらですごく死にそう。恥ずかしいよ!
あとすごくほうぼうの方々にごめんなさいしないといけないよね。ごめんなさい
これがくぽ×ルカをリクエストして下さった方に捧げようかと思ってたんですが流石に無いな!
もっとこうラブラブしたツンデレっとしたのを書きます。少々お待ち下さい。