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人間パロ二回目ー
前のと同設定です。そういや鏡音姉弟いねぇなぁということで


**********



 人身事故が発生したため、電車の到着が遅れています……


 そんな放送が全部聞こえる前に、僕は改札の前で踵を返した。




  反射の僕と贋作の彼ら





 がこん、と音を立てて落ちてきた缶ジュースのプルタブを引っ張りながら、駅前の広場のベンチに腰掛ける。
 入学祝いに買って貰った腕時計を確認するとアナログな時針は午後五時を指していて、リンはもう家の扉をくぐったのかなぁと僕は思った。放課後真っ直ぐに校門を目指せば、僕だって今頃は家のリビングでスナック菓子でも食べていたろうと思うとなんだかやるせない。
 傾けた缶から甘ったるいバナナオレが口へ流れ込んだ。
 広場の人通りは多いけれど、なんだかその風景が酷く灰色に見える。沢山の色があるはずなのに、飽和してしまったみたいだ。

 不意に誰かと話したいと思った。

 学校でそうやっているように、ふざけて笑いあって、どうにかこの気持ちを流してしまいたいと思った。
 そうでなければ、泣いてしまいそうで。








「ねぇ、君」

「――隣、いいかな?」






 かかった声は嘘みたいに綺麗で、機械音かと思った。


「へ、あ、はい」

「そっか。ありがとうね」



 思わず弾かれたように其方を見ると、腰まであるような長い長い緑色に染められた髪を二つに結って笑う女の子がいた。
 僕よりも少し年上だろう、けれどなんだかいたずらっ子のような無邪気な笑み。

 いわゆるゴシックパンクというような格好とその奇抜な髪の色に僕が思わず眉をしかめていると、その子はくるりと振り返って「いいってさー」と自分の背後に手を振った。その視線の先には、やたらとひらひらした服を着たピンクの髪の女のひとと、大きな荷物を抱え紫のポニーテイルを揺らす美形の男の人とその隣でアイスをくわえる青い頭のお兄さんがいる。

 え、なにこの集団。あ、危ない。
 逃げた方がいいのかと僕は腰を浮かせかけた。

 なんだか彼らはその髪の色が当然のように似合っていて、妙にはまっているのが気になった。
 僕が瞬きを繰り返していると、灰色の風景の中でぽっかり浮くようにカラフルな集団は、僕の隣でがたんがたんとなにやら始める。
「がくぽそっち押さえて」「ルカちゃん、電源コードは?」「え? あ、……あ、あ!」「ルカ様、これ違うか?」「あっそれそれ、がくぽさんありがとー。ほらルカちゃんあったよー」「ぎゃー! アイスが垂れた!」「レスポールにアイス!」「おまえなにやってんだ」「勿体ねええ! リッチミルクぅぅうう!」「そっち?!」「設置出来たわよ」「あれ、アンプ何処やった」

 しゃきんとスタンドが現れ、とんと小型アンプがラバーソールの足下に置かれる。
 あっと言う間に大きな鞄からはキーボードが出てきて、ツインギターとベースも加わったバンドの携帯ができあがった。
 派手な外見の彼らがそうしているのに、沢山の人が興味深そうに横目を送っていく。


「じゃ、いこーか」


 ぎ、とギターケースから現れた真っ赤なギターを抱え、緑の髪の子が後ろに控える三人に目配せした。
 頷きを確認して前に向き直ったその子は、もう一度振り返って僕に笑いかける。え、と僕が面食らっていると、ひィと喉のなるおと。








「           ―――ッ!」







 強烈なシャウト。


 がり、と鼓膜をひっかくようなそれに、無数の視線がぞろりとこちらを向いた。
 後を追うように地を這うベースが鳴る。音の主はひたすらに楽しそうに紫の髪を振り乱して四弦を引っかく。
 打楽器のないその形態に、不思議に薄いドラムの音が鳴った。キーボードを叩く女の人が一定のリズムで鍵盤に指をたたきつけている。
 馬鹿みたいなテクニックのギターにびりびりと頬がひきつる。其れをならす青い頭はアイスの棒をくわえたまま涼しい表情。

 なんだ、この人たち。

 先ほどとは違った意味のそのつぶやきは、吐き出して叫ぶような女の子の歌声にかき消された。マイクも無しに叫ぶそれは楽器にかき消されても可笑しくないのに、全然負けていない。まるで彼女自身が一個の楽器のようだった。

 嘔吐をするようなシャウト。
 最近はやっているアイドル歌手の声と少しだけ似ていた。





**********

リンはどこへいったの!

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