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現代パロディー
ヤンデレ!ヤンデレ!
ぽルカ!ぽルカ!



**********



「がくぽ」

「ん? 何?」

「なんでもないわ」


 ソファから出た肩を暖めるのは、大好きな彼女の声。首に回った細い腕にぎゅっと力がこもれば、俺の肩胛骨にはなんかもうものすごい柔らかい御胸様が押し当てられる。

「そっ、か、ぁ」


 そんな幸せを噛みしめながら、その白い腕と首の間に指をねじ込もうと試みる。


 俺の手首くらいしかないんじゃないかと疑いたくなるようなその細い腕からは想像も出来ないような剛力が、気管を圧迫し始めている。
 声帯が押しつぶされだした。ちょっとさすがに苦しい。
 右手も動員しようと開いた雑誌を手放すと、すかさず彼女の空いた手がそれを捕らえて、肩固めのような体勢にもっていかれる。

 え、ちょっとちょっと、それは反則じゃありませんか彼女さま。っていうか何その訳わかんない高等技術?!

 体を浮かそうとすれば、逆に引き寄せられるかたちでソファに押しつけられる。
 その間も肩固めもどきによって着々と意識が遠のき出した。


「る、ルカ?」

「……」


 声帯ごと圧迫された自分の声がまるで死人の如きで逆に笑える。いや全然笑えないんだけれども。
 なんだこれは、可笑しい。いや確かに我が彼女さまはちょっとびっくりするような怪力の持ち主だけど、さすがに俺も男だし力で負けるなんて、そんな馬鹿な。


「な、ん……」


 あ、やばいこれ落ちる。
 視界が暗濁して、黄色く染まって、鮮やかに明滅しだす。
 ぱさりと顔にかかった彼女さまの髪の匂いに誘われるようにして、横転回転暗転座礁。最後に目に映ったのは珍しく彼女が淹れてくれたコーヒー。妙に甘ったるかったっけ。そういうことか、どういうことだ。

 そう言えばルカ、シャンプー変えた?









   彼女の愛情と彼の異常








「……ぁ、あ」


 あたまがいたい。

 薄目を開け確認した時計は五のところを指している。
 ずいぶん日が高くなってきた初夏の今日この頃。彼女さまは起きているが生活リズムがてんでむちゃくちゃな彼女の起床時間は全く宛にならない。今は、午後なのか午前なのか……!


「がくぽ、おはよう」

「お、おはよお」


 俺が悩んでいるといつも通りと言った風に挨拶をして下さる彼女さま。いやぁ今日もお綺麗ですねなんて言ったら「当たり前でしょ」とか言われそうだ。
 勿論そんなの冗談だって分かってるけど。
 コンプレックスなんて一個もなさそうに見える、というのがコンプレックスの彼女さまは、そうやって場に応じて対応してしまえるのが悲しい娘だ。だから疲れるんだろう。素直に喜んだりすればいいのに。

 そんな彼女さまの精神鑑定はおいておいて、さてはて一体この状況はなんなのだろうかね。


「えっと、る、ルカさんや」

「何かしら」

「これは一体なんですか?」


 寝かされていたベッドマットから起き上がり身じろぎすると、がちゃりと金属と金属が触れ合う音がする。
 その発生源は、窓から差し込む朝の光をまばゆく反射していた。あ、これ朝だ。このまぶしさはみまごうことなき朝だ。
 最後の記憶が正しいとすれば、半日くらい意識を失ってた事になるのか。トイレ行きたくなってきた気がする。

 そんな与太を考えていると、少し目を細め、外したエプロンで手を拭きながら彼女はこちらへやってきた。
 かすかに甘い匂いがする。香ばしいこの芳香は、彼女さま特製のクロワッサンサンドの香りだ。どうやら朝食を作ってくれていたらしい。


「鎖よ」

「それくらいはさすがに見りゃ分かる」

「ペットショップで買ってきたわ」

「犬扱いですか、俺は。いやそうじゃなくて、」

「そう、『大型犬が逃げそうで周りに迷惑をかけるといけないから』って店員さんに言ったのよ」


 右足にはまった合皮性の首輪は、俺の足首の太さに合うようにきっちりと改造してある。几帳面な彼女さまらしい仕事が伺えた。
 長く伸びる鎖は部屋に備え付けの家具に固定されている。試しに引っ張るけれども、びくともしない。ああ、さすが俺の彼女さま、仕事ちょう完璧。涙が出てくるね。


「じゃなくて、なんでこんなことって、聞きたいんだが……」


 思わず顔をひきつらせていると彼女は俺の顔をのぞき込んで、思わずキスしたくなるくらいにきれいな顔で笑って見せた。


「あなた、この前ミクと楽しそうに話してたんだもの」


 その言葉に思い起こされるのは、輝く笑顔で「ルカさんと夏休み遊びに行くんだけど、何処が良いと思うー?」と聞いてくる年下の先輩の顔。


「あ、あれは初音ちゃんの相談にのってて、」

「それにメイコとは呑みに行ったって?」

「カイトも居たよ! 見せつけられて悲しくなってルカんとこ行っただろ!」

「そう、そのカイトとも遊びに行ってたし」

「あいつと遊ぶのも駄目なの?! あたり判定どうなってんだよそれ!」

「リンちゃんやレンくんとも遊んでるし、グミちゃんとはご飯食べたって聞いたわね」

「十四歳相手になんで俺が! っていうか、妹だし! ルカ、聞け! 俺の話聞け!」


 半ば自棄になって叫ぶと、ふわりと甘い香りがまた意識を曖昧にさせる。
 鎮静作用でもあるみたいだ、と抱きついてきたルカの背に手を回しながら考えた。首筋に立っている爪は痛いけれど、我慢する。
 生ぬるい感覚。流血したのかもしれない。彼女の爪は何時だってきれいに整えられていて、それが汚れてしまったのなら少し悲しいなぁと思う。


「不安なのよ。みんなあなたのことが好きだから」

「……あくまでlikeだろ。それに、みんなはルカの事だって大好きだぞ」


 むしろ俺よりもルカの方が好かれていように、彼女はそう言うところに自信がない。

「不安なのよ、たまらないの。でも、私以外の前では笑わないで、喋らないで、歌わないで、なんて、言えないじゃないの」

「……別に言えばいいだろうが」


 彼女がそう言ったなら、俺はおそらくそれを実行する。
 彼女以外の前では笑わないし喋らないし歌わない。彼女が嫌がるなら彼女以外の人間と接することだって止めてやろう。
 でも俺の彼女さまはそんなことを言ったりはしないのだ。優しい優しい彼女は、そんな程度のことで俺が苦しむとでも思っているのだろう。

 ああ、可哀想なルカ。
 優しい癖に欲深くて、思慮深い癖に考えなし。
 だからこんな風になってしまうんだ。


「ずっと我慢してたわ。けど、もうだめ。もうだめなの」

「そうか、もうだめか」

「ごめんなさい、がくぽ」

「気にしちゃいないよ」


 肩から伝い落ちる水は、俺の血液かルカの涙か、考えている内にルカ特製の朝ご飯はすっかりさめてしまう。
 それが何となく惜しくて、彼女さまがご飯作ってくれるなんてレアなのになぁと俺は考えていた。









   それできみがしあわせなら、ぼくはなんだっていいよ








**********

……あれ? なんか書きたかったのと違、あれー?
もっとこうハードなヤンデレになる予定だったのになんだこれ。がくぽの一人称の所為か! 緊張感がない!

監禁ルカさまとはねっかえりがくぽを本格的に書こうかどうか迷ってます
書いたらこれがちょっと対になるのかな
両方ともぽとルカ。これは譲らん。
あれ? ルカぽ?



ルカの異常な愛情と、がくぽの異常な包容、みたいなそう言う話
ヤンデレ×ヤンデレはえらい楽しいね!

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和風パロ第四弾?
会話ばっかり


ミクとだれか。だれでしょう

**********




 ――お嬢ちゃんお嬢ちゃん、こんな時間に一人で、こんなところに如何したい?
 もう夜だよう、真っ暗だよう? 危ないよ?


「……今から帰る」








  HoMゑ








 ――ああ、お嬢ちゃんかむいさまのお家の子かい?
 お使いにいくって事は世話っ子かな? こんな子供に一人で出歩かせる何てかむいさまもあくどいねぇ


「……違う、わたしが、かってに」


 ――勝手に? 勝手に出てきたのかい?
 そりゃあいけねぇなぁ、お嬢ちゃん
 最近はエラい物騒だって噂じゃないのさ。お嬢ちゃんみたいに可愛い子は人攫いにかっさらわれちゃうよう?


「ひとさらい?」


 ――あらさ箱入り娘だねぇ、聞いてないのかい?
 どうやら育ちも良いようだし、こんな世話っこどこから仕入れたんだか


「あなた、ひとさらい?」


 ――えっ、やだな、違うよう。
 さすがにそこまでおまんまに困っては居ないよう


「でも、町ではあなた、見ない」


 ――あんまり昼間は出歩かないからねぇ
 夜型なのさ。猫みたいなもんさね

 ――しかし、お嬢ちゃん、よくよく町に出るのかい?
 それじゃあいっそう困り物だねぇ。かむいさまのとこの子なんて浚いがいのある獲物がぁふらふらしてちゃいけないよ
 ほら、お屋敷まで連れてってやるから、一緒にいこうよう


「……」


 ――なんだい? 怪しくてならないって?
 安心してよう、こう見えてかむいさまのとことはちょっとした知り合いでね
 あそこに勤めてるリンってのは一等のともだちだし、レンなんてのは弟分みたいなもんだよ


「……」


 ――ん? 安心してくれたかい?
 そいじゃあね、お手てつないでからからいこうか
 お嬢ちゃん、かむいさまのとこの若はどうだい? お台所様とはなかよくしてるかい?
 泣かせてなんて居ないだろうね?


「あねさま、知ってるの?」


 ――やぁ、お嬢ちゃんお台所様の世話っこかい
 それじゃあ育ちが良いのもうなづけらぁね。お台所様のしつけは厳しそぉだ
 そうそう、知ってるよう。おきれいなかただからねぇ、一度見たらわすれないねぇ


「あねさまは、おきれい」


 ――そうさねぇ、まるで人ではないようだものねぇ


「……あいつも、おきれい」


 ――あいつ? あいつってぇと、流れからしてかむいさまの若のことかい?


「そう」


 ――……そうだねぇ、あの方も確かにおきれいだねぇ
 あそこんとこはきれいどころの寄せ集めみたいなもんだからねえ


「おふたりとも、とても仲が宜しいから、いっしょにいると、すごくおきれいで」


 ――うんうん
 おきれいだねぇ。まるで絵画のようだねぇ


「それから、おふたりとも、すごく優しくて
 あねさまはおこると恐いけど、いつもすごく優しくて、おぐしを結って下さる
 あいつはすごく腹立たしいけど、ほんとはすごく優しくて、あたまをなでてくださる」


 ――うん、うん


「それから、おふたりとも、笑って下さる
 おふたりが笑ってるところを見るのが、わたしは一等しあわせ」


 ――そうだねぇ、ウチもあのお二人を見てるのはしあわせだよ
 おきれいだものねぇ、お強いものねぇ


「わたしはそれをずっとみれるなら、しんだっていい」


 ――……そりゃあ、まぁ、ずいぶんと
 こりゃあしつけって訳じゃあなさそうだねぇ。あな、すえおとろしぃねぇ


「? なに?」


 ――お嬢ちゃん、ウチ来るかい?
 お嬢ちゃんのその忠誠心なら立派な裏犬に……







『あ、ミク! どこ行ってたのよ、この子は!』








 ――っと、お嬢ちゃんお迎えだよ
 メイコの姉さん、相変わらず元気そうで何よりだねぇ。カイトの兄さんと仲良くして欲しいねぇ
 ほらお嬢ちゃん、おいき


「……おねえさんは、いかないの?」


 ――こっちはあんまり昼間に顔を出さないことにしてるからねぇ
 まぁ、また気が向いたら遊びに来るよう。若様とルカさまに、宜しくなさってね




『ミク? あ、ちょっとそっちの、』




 ――さてと、そんじゃ、メイコの姉さんが来る前に退散いたしやしょうか
 お嬢ちゃん、またね



 ――"自分がしんでも"じゃなくて、"ひとを殺してでも"大事なお二人を護りたいと思うようになったらね、こちらへおいで


「……うん。送ってくれてありがとう」


 ――いいよういいよう、こんぐらいしかしてやれなくて申し訳ないくらいだよう
 今度は一緒にお歌でも歌おうねぇ




 にっと暗がりへとけ込むように彼女は笑って、きびすを返して行ってしまった。
 かけ寄ってきたメイコの姉さんをよそにそのうしろ姿に目をこらす。
 ゆれないくらい短い髪に裾のまくり上げた浪人みたいな格好は、みょうに颯爽としていた。




『あっ、こら、待ちなさい! ちょっと!』




 見失ってしまったのか、眉根を寄せて暗いろじから目を離し、わたしのほうへと視線をおろした。


「メイコの姉さん」


『ミク、さっきの、知ってる人だった?』


「……知らないひと」






 おそらく、わたしはまだ知らなくていいひと、だった。











**********


グミでした
グミ、グミって分かるのか? これ……


和風パロのグミたん
おっさん臭いしゃべり方をする粋なおねーちゃんみたいなイメージで

こういう話には絶対不可欠だよね暗殺者キャラ
このグミとがくぽとカイトあたりのシリアスな絡みも書きたいし、ルカとリンとも絡ませてきゃいきゃい女の子もさせたい。妄想広がる!


あとがくぽとルカの出会い編も書きたいんだよなぁ
ルカが薔薇植えてる理由とか

ただ書くとなるとなぁ、ひどいオリジナルキャラの跋扈がなぁ
あ、いまさらか……



どんどん設定が深くなっていく和風パロですが、別に長編化とかする気は一切起こらない不思議
設定考えるの楽しいです^q^

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恋距離遠愛ルカカバーバージョンハードリピート曲


すごくはずかしい


**********



 午後から後輩と買い物に行く約束をしている。遅めのランチを一緒に食べませんかと言われているから、移動時間を含めてそろそろ出なくては成らないのではないのだろうか。

 携帯電話の時計を確認する。
 ふと見た送信ボックスに並んだ宛先は、それだけで苦しくなるくらいに好きな名前。






  手を伸ばしたら、届く






『電話もするし、メールもする。けど、手紙は苦手だから書かない。遠いから、会うのは難しいかも知れない。それでもいいのか』

『構うわけないじゃないの』

『無理なら、いいんだぞ。好きな人ができたら、俺を振ってくれ』

『はあ?! あなたとうとういかれたの? ちょっとこっち来なさい、踏んづけて直してあげるから』

『冗談を言ってるんじゃないんだって』

『何よ、あなた私と別れたいの? 言っておくけど、私ほどあなたが好きな女なんて居ないわよ』

『別れたいわけないだろ! でも、……』

『でももくそもないわ。じゃあ一体なんだって言うの。高々数百キロ離ればなれになる程度で情けないわね』

『……ルカにかかったら形無しだな』


 そう言っていつものようにへらっと笑った顔を胸に焼き付けて、剥がれないように心に留めた。
 その面影を抱きしめるようにして腕を抱く。


『言っておくけどね、わたしはあなたと会わなくったってあなたをずっと好きでいる自信があるわよ。あなたにはないの?』

『あるさ。あるともさ』

『だったら全然平気じゃないの。何が問題なのよ』

『ああ、そうだな、全然平気だな』



「そうよ、全然平気なんだから……」



 ばふりと力を抜いて、枕に頭を落とす。
 九十度傾いた視界が白い天井を映して、瞳を閉じれば思い浮かぶのはあの笑顔。
 お世辞にも広いとはいえない部屋はもので溢れていて、所有欲の薄い私に彼が贈ってくれたものたちも存在感を必死で主張していた。
 おすすめの本。小物入れ。私の好きなアーティストが特集されていたからとくれた音楽雑誌。服はよく分からないからとプレゼントしてくれたバレッタ。クレーンゲームで取ってくれた桃色の炊き枕。恥ずかしげに私の手に握らせたピンキーリング。下らないものからそうでないものまで。

 彼が出発する前日に一緒に選んで買ったマグカップは、彼が紺色で私がくすんだ紅色。
 彼も向こうで使っているのだろうか。



「電話だって忙しいなら要らないし、メールだって疲れてるなら送んなくたっていいのよ」


 履歴に並ぶのは、律儀なまでに毎日送られてくるメール。
(今日は晩飯茄子ドリア! だとか、実験失敗してなんかもういっそテンションあがってきた、だとか)
 不定期に、けれど必ず三日に一回はかかってくる電話。
(味玉子の作り方を教えて下さいだとか、寂しいから何かはなしてくれだとか)

 そんなに私をつなぎ止めておきたいの、なんて。
 そんなに私が浮気しないか心配なの、なんて。

 うれしすぎて冗談でも言えない。
 有り難すぎて口にも出せない。


「会いたい」


 だなんて、間違ってもいえない。


 枕元に転がった携帯電話をつついた。
 かちりと爪とプラスチックがぶつかる軽い音が、静かな部屋に響く。


「……あ、い、た、い」


 アドレス帳を呼び出して、彼の名前を表示させた。
 携帯番号を選択してコールすれば、恐らく今の時間なら五コール目にはつながるだろう。
 彼が何かを言うより早くその魔法の言葉を言ってしまえば、きっとその言葉は彼を連れてくる。走って、電車に乗って、もどかしい時間を歯噛みしながら、そうして魔法のように私の目の前に。決して嘘を吐かない彼はきっと、『今すぐ行く』と言ってやってくる。


 でも。


「……そろそろ出なきゃ」


 そう言わないのは、きっと私の意地だ。











「先輩、どうしたんですか?」


 そう首を傾げる後輩ちゃんに「ううん」と首を振る。
 そんな私の様子を見た彼女は、軽く眉を顰めて傍らの恋人の耳に口を寄せた。


「ホラ、レンくんが勝手に着いてくるから先輩怒ってんじゃん。もう帰れよレンくん」

「なっ、なんでそう言うこと言うんだよ! 先輩すみません、俺帰った方がいいですか」

「帰れよ! あたしが先輩といちゃいちゃできないじゃん!」

「おーまーえーは黙ってろって!」


 後輩ちゃんと後輩くんは、そう言ってじゃれ合う。
 仲の良い二人を見るのは嫌いではなくて、寧ろ好きなので大歓迎だった。高校生をやっていた時にも、彼と一緒に二人の喧嘩を見守っては『ほほえましいな』と笑い合っていたのを思い出す。

 そうだ、四人で遊園地へ遊びに行ったときもそうだった。

 この二人がはしゃぎ回って、私たち二人はその後ろを着いて行って、『まるきり子どもとその保護者たちみたいね』とメイコに笑われたのだ。確かにそうだとがくぽが頷くと、子供扱いされた彼らは声をそろえて『『そんな!』』と顔をしかめて、それを見て彼はますます笑って、

 彼は、



「先輩? せんぱー、い?」

「っあ、な、何かしら」

「……調子、悪いんですか?」後輩ちゃんは心配そうにこちらをのぞき込む「体調良くないなら、帰った方が……」

「そんなことないわ。全然平気よ」


 即答した私をどうおもったのか、後輩ちゃんはやはり心配そうにしながら、けれども「それなら、いいんですけど」と引き下がった。


「それじゃご飯食べにいきましょーよ」

「レンくんのおごりですねわかります!」

「違ぇよ!」

「おごれよ!」

「はいはい、割り勘ね、割り勘。平等にいきましょ」


 また下らない言い争いを始める二人を仲裁しようと間に割ってはいると、二人はぽかんと私の方を見つめてきた。
 四つ分の視線に思わずたじろぎながら、どうしたのだと問うと、後輩くんが堰を切ったように笑い出す。その隣で後輩ちゃんも同様に笑っている。おいていきぼりな私はおろおろする。


「す、みませ、……ルカ先輩、がくぽ先輩みたいで……っ!」

「絶対言いそうなこと言ったぁ、がくぽ先輩乗り移ってたぁ」

「ごめんなさ、あああでも絶対ルカ先輩そんなこと言わないと思ってたからっ」



「……先輩? え?」


















「今日ね、あなたに似てきたって言われちゃったわ」

『嘘だ、ルカが俺に似るなんてあり得ない』

「何よ、本当に言われたのよ」

『何かの間違いだろ。そいつの見る目がないんだ』

「あなた、レンくんに謝りなさいよ」

『あいつは観察眼が良くない』









『ルカ、好きな人、できたか』

「いるわよ、今電話してる」

『誰かとキスとかしたか』

「いま話してる人とならしたいわね」

『まだ、俺のこと好きでいてくれてるか』

「なんだって好きじゃなくなるとあなたは思うの」

『なあ、俺はまだおまえが好きでいいか』

「あなたが私が好きかどうかなんて関係ないわ。だってあなたは私のだもの。違うの?」

『……違わない』










「がくぽ」

『なんだ』

「会いたい、よ」

『俺だって』









     (会いに行こうか)




**********



恥ずかしいよ!死ぬ!砂糖をもってこい!


書きたいところだけ書いたらもう支離滅裂。
後輩くんのお相手の後輩ちゃんはお好きにご指定下さい。だいたい誰にでもできるようにしてある筈。レングミとかレンミクとかレンリンとか可愛いからどれもこれも好きです。

ボカロは本当の本当にどんなCPでも萌えられる優等生です。
BLだろうがGLだろうがNLだろうがどんな組み合わせでもいけるよ!いやまじで!
ぽルカがおそらく一番好きですが!

拍手[6回]




人狼狂死曲ハードリピート作品

ぽもルカも出てこないけど心の目で見ればぽルカになります
人狼パロ?
続きませんよ


**********




 父親の帰りが遅い。

 どうにも過保護のきらいがある彼は、女だから子供だからと何かにつけもっともらしい理由を盾に、リンが狩りへ出ることを嫌った。
 彼女の頭の上でひらひらと揺れる白い布も、安寧を祈る願掛けなんだと言って置いて、その実恐らく彼女がどこへ居ても目立つようにという目印に違いないとリンは思っていた。たしかに頭部にに布を巻き、世につなぎ止めるという願掛けは確かに存在しており、それは父親のリンへの溺愛ぶりが伺えるものだったのだが、彼女自身にとってはその白い上等な布は鬱陶しいような、くすぐったいような不思議な物だった。

 それをいじりながら、リンは傍らの『母親の息子』に目を遣る。
 狩りに出たくてうずうずしていたであろう彼は先日の怪我を理由に狩りを禁止されており、消化不良な表情で地面に転がっていた。リンの視線に気づき、不機嫌そうに「なんだよ」と顔をしかめる。





  私を*る貴様の刃





 気が付いたらリンに彼という父親が居たように、レンにも彼女という母親が居たのだろう。

 産みの母親の亡いリンの記憶最初の記憶は、父親の長く伸びた髪にくるまれるようにして抱えられ、彼の寝床へと運ばれるものだ。それが父親に拾われたときの記憶なのか、それともその後の出来事を混濁して最古の物としているのかは、リンには庸として知れない。

 彼は十三年前、捨てられていたのか親に死なれたのか、一人森で泣きわめくリンを拾い上げたのだという。名付け男ながらに苦労しながら育て上げ、リンの一番心地の良い場所は今も変わらず父親の腕の中だ。
 血がつながらないことも知りながら、けれど気が付いたらリンは彼の娘だった。
 彼に名付けられ、育てられ、守られてきた。


 それはきっと、レンも同じなのだ。


 父親と旧知だったらしいレンの母親は、彼につれられるリンを一目見て、自分が拾い育てている息子の血縁者に違いないと思ったらしい。
 それほどまでにリンとレンは似ていて、確かに自分たちでもそれは否定したくない。それほどに、同一。二人が性徴を迎える前だったならば、恐らくそれぞれの親も見分けがつかなかったであろう。
 そのうちに、彼女はリンの母親となることを決意して、彼はレンの父親になることを決意した。
 それぞれを片親で育て続けるのは難しい。女には女の教育が要るし、男には男の教育が要る。今のままでは不十分でかけていて、それを満たすものがすぐそばにあるのだから、彼と彼女は躊躇しなかった。

 夫婦の契りを交わしたわけではないと本人たちは言うが、どうだかとリンとレンは肩を竦める。
 今だとて二人仲良く狩りへ出かけて、そのお互いに背中を預け合う様子と来たら。


「……遅いな」

「遅いね」


 一方、リンとレンはと言えば、同じ二人を両親に持つようになり血縁に、間違いなく双子に違いないと言われながらも、お互い兄弟という気はさらさらに無かった。リンにとって彼女は母親だが、等式でその息子であるレンが兄弟だとはどうしても思えないのだ。
 それはどうやらレンも同じで、二人はお互いにお互いの処遇をどうすればよいのかいまいち計りかねながらも、そこそこに仲良くやっていくことに決めたのだった。両親はどうやら二人がきょうだいとして親しくなることを望んでいるようだが、あって二、三月でいきなりきょうだいと言われてはいそうですかと慣れる方が可笑しい。


「手こずってるのかな」

「母さんと父さんに限ってそんなわけ、無いじゃないか」

「それもそっか……でもほら、最近流れ者がきたじゃん」

「ああ、グミねえが言ってた?」

「そう、それ。そいつらが邪魔してるのかもよ?」

「ばっか、そんなん母さんが許すわけねぇじゃん。だいたい、一人はおれらと同じ様な子供だって言ってたぜ?」

「えっ、そうなの?」

「うん。だからどっちかってと、手助けしてやってるほうなんじゃないかなぁ」

「そっかぁ」


 そう言うレンの顔は少しだけ苦い形をしている。
 誰かを助けるのは美徳だが、生きていく上では美徳は重たい。

 リンの父親もレンの母親も、そういう意味では生きにくい性格をしていた。
 しかし、それは彼らの一番よいところで、ならば私たちがそれを補って行けばいいと、リンとレンは誓い合ったばかりだった。











「リンちゃんっ! レンくんっ!」




「おっ、噂をすれば。グミねえどうしたの」


 息を切らして駆け込んできた父親の妹に、身をもたげてリンは手を差し伸べる。
 それを取った彼女は、大きく息を一つ吐いて、勢い込んで二人をみた。軽やかに朗らかな性格の彼女が、それまで浮かべたこともなかったような表情に、リンとレンは面食らう。


「どうしたの……?」







「ルカねえさんがっ!!」










**********


別に続きませんが、あのなんというか、狂死曲を効いてるときのたぎりようっていうのはなんかもうすごいですよね
一家全員の遠吠えですよあれもう

いや、別に親子じゃなくても部下とかでもいいかもしれないのですが、個人的に義親子っていう関係が大好きなので、そんな感じに


欲望の赴くままに書いたらもうなんだこれ

拍手[2回]


なつさんからのリクエストで、この前書いた和風パロの続き……のようななんというか
時系列的に並べたら恐らく遡る話ですが


ちなみにこの和風パロ、時代考証もなんもしてませんのでなんか変なところがあってもつっこまないでやって下さい。いったい何時代なんだろうか。明治とか江戸とか色々混じってる気がする!

文の作り方も『それっぽい』のを適当に書いてるだけなのでやっぱり変なところがあっても適当に鼻で笑ってやっておいて下さい



**********





「若、随分御髪が伸びましたねぇ」

「……そうか?」


 さらりと手の中からこぼれ落ちてゆく紫色を惜しむような気分で指に絡めながら、ルカはつぶやいた。その言葉に、下らないカストリ新聞に注いでいた濁り無い視線を自らの肩口にやるようにしながら彼は首をかたぶける。

 それにつられるようにしてまたさらりと紫色が流れた。


「本当ですよ。初めてお会いしたときはこーんなでしたのに」


 こーんな、と自らの首の横へ手を当て、ルカはにっこりと微笑んで見せる。幼い頃の彼の髪の長さを示しているらしかった。
 如何にも愉しそうなその様子に、何時時分の話だ、とがくぽは苦々しく端正な顔を歪める。何時の話でしたかねぇ、とますます気分良い声音でルカは歌うようだ。
 麗らかな陽気が縁側から差し込み、座敷を照らしている。

 ルカの笑顔から逃げるようにまたしてカストリへと視線を落としてしまったがくぽの髪を戯れに手櫛し、ルカはそのぱさりと乾いたような手触りに複雑な心中になりながら広い背中へ、横向きにもたれ掛かる。中々に不精者の彼の髪は彼自身の生活の所為もあってか軽く痛んでいて、きちんと手入れをして労ってやりたいという思いが沸き上がるが、過ぎたことと頭を振る。

 気を取り直してはなだ色の着物の背中の半ば過ぎまでにさらりと流れる藤の小川を眺めていると、ルカの心中に満ちるのは言いようもない幸福感。
 幼い頃にルカが父にそうしていたのと同じ格好。僅かに父よりも小さく華奢な背中。


「何か、願掛けでもなさっておられるんですか?」


 ん、とうめくような声がする。
 耳を当てた広い背中にその低い声はどうどうと轟き、大河の流れのようだ。


「いや」呟いて、顔に落ちてきた一房をつまみ上げる「……気になるか」

「いえ、そんなことは」


 男児が長髪などと、この時世、確かに世間の目は奇異を向けるだろう。けれどもルカは彼のそのたゆたう髪がたまらなく好きだった。
 藤の色をそのまま移したかのように、涼やか。


「私は、若の御髪、好きですよ」

「……気がついたら伸びてただけだ」

「そうですか」にこりと微笑む。彼はやはり罰悪そうにそれから視線を逸らした「それならば仕様がありませんね」


 それきり黙ってしまった彼に、合わせるようにしてルカも口を噤む。
 彼が背中を向けているのを良いことに一房ゆるりとうねり流れからはみ出た髪を梳き、撫でつけ、頬に唇に当て楽しんだ。微かに人らしい香りがルカの鼻を擽る。まるで人形のような彼が、無機物から人へ。


「お前は、髪を触るのが好きか」

「ええ、とても好きですよ? 私は若の髪を触っているときがいっとう幸せです」


 わがままを言えば、もっときちんと手入れをしていただきたい所ですけれどね、とぱさついた髪をつまみ上げた。
 髪の手入れなぞ分からん、と切り捨てた彼は、暫くしてああと身じろいだ。


「それなら、私の髪をお前にやるから、お前が好きにしたら良い」

「……本当ですか?」

「ああ」

「手入れをさせていただいてもいいんですか?」

「……お前がしたいのなら、そうすればいい」

「昨日ちょうど椿油を買ってきていただいたんです! 若も一緒に付けましょう!」

「……」


 思わず意気込んでそう言ったルカの声をどう思ったのか身を捩ってこちらを伺った彼は、しばらく瞬きを繰り返してから長い睫を緩く震わせてまた前をむき直した。機嫌を損なったか、と不安になっていると、一声。


「切るなり刈るなり、好きにしろ」


 そう低い声が背中へ轟くのに耳を当て、思わずルカはぎゅうと『自分のもの』になったその髪を抱きしめた。





  MInヱ





「駄目かしら」

「うーん、そりゃあたしのじゃあ何とも言えませんねぇ」


 細い腕を組み、年寄りじみた仕草でリンは首を捻る。
 其れを不安げに見つめながら、ルカはこそりと溜息を吐いた。
 いつもはそう気にしていないこの身分が、こういう時ばかりは重苦しく彼女の細い双肩にしなだれかかる。いくら住人に姉と呼び慕われようが、未だに自分は自由な外出も叶わぬひ弱な客娘なのだ。


「あたしが選んで買ってくるんじゃあ、駄目なんですよね?」

「そんな事は無いのだけれど、」其処まで言って言葉に詰まった「けど、けれども、ね……」

「……うーん。若の為ってぇ姉さんの気持ちも分かるんだけど、最近物騒ですしねぇ」


 ううむ、とたくし上げた着物の袖を直し、リンはもう一つ唸った。その足下で、カイトから借りてきたらしい草子を抱えたミクが立ち止まり、二人を見上げる。
 丸く照る瞳に目を細め、ルカはその柔らかな頬を撫でた。擽ったそうにミクは首を竦める。


「ね、少しだけ。時間をとったりなんてしないわ」

「でも、あたしに言われても。若に、……は言えませんよねぇ」

「……? あねさま、どうか、したんですか?」


 見上げてくるミクのみどりの長髪を梳きながら「すこしね」と簡単に応えた。子供の髪独特の指の先でするりとほどけていく感触を楽しむ一方、ルカはまつげを揺らして再び溜息を吐く。
 リンを困らせているのは承知していた。本当ならば自分はこのような事を言っても良い立場ではないのだ。座敷牢の奥の奥、押し込め閉じこめられたとて何一つ言えない身でありながら、こんな待遇まで頂いて。その上自由を借りたいなどと烏滸がましくも申し立てる。
 それでも、とルカは下唇を噛んだ。彼はそんな自分に自由にしても良い何かを与えてくれたのだ。


「……」


 たっ、とミクがルカの手をどけ、座敷を走り去っていった。子供ながらに気まずい雰囲気を感じ取ったのやもしれない。不愉快な気分にしてしまっただろうか、と申し訳なく思う。
 相変わらずリンは困ったように眉を曲げ、ルカから目を逸らすようにしていた。

 これ以上は不毛に困らせるばかりだ。
 ルカはあきらめのいい方だ。溜飲の下がらないものの、何とかしょうがないと言うところまで気分を持って行くことにした。
 工夫をすれば他にもいくらか遣りようがあるはずだ。まずはカイト辺りに相談してみよう、と考えた。

「それならば仕様がありませんね」と口を開きかけたところで、ばたばたと騒がしい足音が廊下からこちらの座敷までやってくる。



「ミク?! 何、どうしたってのよ!」

「こっち!」


 どたばた騒々しい足音に、赤髪を揺らした若衆の一人が不可思議そうな顔をして座敷をのぞき込んだ。が、それから足音の主をみとめて軽く肩を竦めて無言で去っていく。
 それにも気づかない足音の主は、それまで小さなミクに手を引かれ前のめっていた姿勢をぴんと正すとそこでやっとこルカとリンに気づいた。


「リンにルカじゃない。どうしたの、ふたりして」

「メイコの姉さん!」


 走った拍子で顔にかかった鳶色の髪をひょいとはねのけたメイコは「ん?」と首を傾げた。


















「はぁ、まぁ私がいりゃあ安心ってね……」

「メイコの姉さんならそんじょそこらの若衆連れるより安心だもんね」

「どういう意味かしら、それは」


 後ろでリンとメイコが長閑に会話しているのを余所に、からころからとミクは下駄を鳴らして鳴らしてルカの手を引き歩いていく。
 主に雑貨や嗜好品を売る店屋が並ぶ通りは、麗らかな秋の天気も手伝ってか大勢の人で賑わっていた。


「あねさま、あねさま、こっちです」

「待って、ミク、走ったら厭よ」


 様々な雑貨に目移りするものの、結局の所ルカの目当ては一つなのだ。
 ミクに手を引かれていった先の一つの店屋に、ぱあと目を輝かす。簡略化されたかんざしの看板を掲げたそこは、煙管をくわえた男が店頭に座っているばかりでは陰気な様子だったが、それでも何人もの女子供が集まっているおかげか随分とにぎやかな空気を辺りに漂わせていた。




「簪屋?」メイコはかくんと首を傾げる「ルカ、重いからってかんざしはあまり着けなかったわよね?」

「そうだね」

「急に興味がわいたって?」


 メイコの言葉に、にししとリンが婆臭く笑う。




「あねさま、ここです」

「……わぁ」


 幼子のように淡い歓声を上げて、店先に並べられた煌びやかな小物達を見下ろす。
 金や銀の装飾を纏った其れは秋の日差しをまばゆく反射し、木や陶器で作られた其れはしっとりと光を吸い込むようだ。


「……こりゃ、珍しいお客様だ。かむいさまのお台所様ときた」


 不意に、煙管を加えていた店主の男が口を開いた。
 髪を引っ詰め疲れた顔つきの男はひどく緩慢な態度で一息吐くと、薄く隈の浮いた瞳でルカを見上げる。


「え? 何かお言いになられましたか?」

「っあんた」


 上手く聞き取れなかったルカと男の間さに素早くメイコが割り込んだ。
 韋駄天もかくやのその早さに、男はひゅうと唇をとがらせる。


「いんやぁ、何にもしたりはしねぇよ。こちとら処場代払って厄介払いしてもらってる身だ。……身内もかむいさまに雇われてることだしな」

「身内?」

「こっちの話だよ。とにかくあんたらが買い物してくれて処場代が還元されるならこっちのモンってこった」


 さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、これほど見事な髪差し簪捻り止め、この国広しと言われども、手ずから一から作り上げたるはこの本音堂ばかり! まずはお手にとって一見、一目で分かるはその違い! お国の総本山も御用達だよ!

 両手を広げにやりと笑い、やたらと朗々と男は言った。












「あら、それいいじゃない、きっと似合うわよ」

「そうですか?」


 メイコに言われて、顔を輝かせてルカは自分の手の内をのぞき込む。
 藤袴を象った華奢な作りの髪飾り。控えめで主張は激しくないがしかし凛と儚く流れるそれは、桃色のルカの髪にならさぞかし似合おう。メイコはそう考え言ったのだが、本人としてはその意味ではないらしい。抱きしめるようにして其れを抱え込み「それならこれにしましょうか」と懐から財布を取りだし、自分の頭に当てることすらしない。


「枝垂れ桜もよいかと思ったのですが、若には藤袴が似合うのではないかと」


 花の咲くような笑顔とはこのことと言わんばかりの顔でそう言ってみせる。


「……若? それ、若にあげるの?」

「ええ」


 頷き愛おしそうに手の中の髪飾りを撫でる様子は余りに甘い菓子のようで、うわぁっとメイコは充てられた気分だった。


「そう……若に、髪飾り、ねぇ」

「やはり、可笑しいでしょうか? 男性に、そんなもの……」


「……まぁ、いいんじゃないの? 若、似合いそうだしね」


 買っていっておやりよ、とその白い手の中の薄紅を軽くはじく。
 もう一度ぱあと咲いた笑顔の花を横目で見ながら、メイコは自分も何か買おうかと緋毛氈に並べられた色とりどりの花簪や髪留めへ目を向ける。竜胆桔梗、鬼灯水仙、芥子に椿に枝垂れ桜。どれも精巧に、かつ美しく造り上げられている。職人の腕が伺えた。
 恐らくそれを造ったのであろう張本人は、煙管を片手にひたすら気怠げな様子で街通りへ目を遣っている。






**********
この下のその2に続きます
なんで和風パロはこんなに長引くんだい?

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にこめ!



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「おい、嬢ちゃん」

「んっ?」

「あんたじゃねぇよ。嬢ちゃんって歳でもあるめぇに、お姉さんよ。そっちの嬢ちゃんだよ」


「……ミク?」


 顔を上げたミクに、店主は「ん」と頷いてみせる。


「お前さんが見てるそいつは、二つで一つ身だからな。そっち買ったらこっちの薄紅のも付いてくる、お買い得もんだぜ」

「何子供相手に商売してんのよ」


 あきれたリンがミクの頭を抱き抱える。
 しかし二つで一つ分の値段は、確かに買い得だ。自分も買おうか、と緋毛氈に目を落とす。
 目に付いたのは、黄色と緑の鮮やかな髪留め。メイコやルカが手に取っているものよりは物は劣るが、それでも細かい細工の美しいものだ。
 どうやら同色の櫛が付いてくるらしい。


「ミクはそれ? 買うの?」

「あ、……でも」


 先ほどからずっと眺めていた髪留めをさっと毛氈の上に戻してしまう。
 怪訝に思っていると、小さな手をリンお下がりの梅紅色の着物の袂に当て、ミクは困ったように俯いた。


「おかね、たりない」


「……」

「……」


 リンが店主の方を見たときには、既に店主は手を伸ばして、ミクの小さな手にその髪留めをまとめて二つ、握り込ませたところだった。


 自らの手の内に舞い込んだ薄紅と薄紫の紫陽花を模した髪飾りを不思議そうに見つめ、それからミクはまた困ったように眉を下げた。




















「……若ぁ」

「何だ、カイト」


 何事も万事問題無しと言わんばかりの態度で着物を捌いて胡座をかき、緑茶を飲みのみカストリ新聞に目を落とすがくぽに、カイトは大きくため息をはいた。
 その流れる長い髪は頭頂近くで高く結わえられ、常々切れせめて纏めろと口を酸っぱくしていたカイトとしてはうれしい変化だったの、だが。


「お前さぁ、威厳とか、人目とか、気にしてくれやしないの?」

「……何のことだ」


 カストリから目を上げ、本気で首を傾げるのだから始末に負えない。
 かくりと意図切れた人形のように彼が首を傾けた拍子に、しゃらりと結わえられた髪の根本で薄紅が微かな音を立てた。

 煌びやかとは言わない。
 豪奢でも派手でも無いが、決して地味ではない。確かにしっかりと主張する美しい細工の髪飾りが、そこで揺れていた。


「仮にも、ここら一帯の総元締めの、長男がさ、……その髪は」

「これか?」乱してしまわぬようにと気遣っているのか、ひどくそっと優しげな手つきで自分の髪をつまみ上げる「これはルカのだからな。私は何もできん」

「……ああ、そう」


 大きく息を吐き、肩を落として座敷から退散する。既に傾き者と名高い神威家長男である。
 もうこれ以上どうあっても傘下はどうも思うまい。

 しかしなぁと再度ため息を吐いたところで、どたどたと荒い足音がこちらへと向かってきた。
 思わずそちらへ目を遣ると、見慣れた黄色い頭があわただしく廊下を走っている。


「おう、レン、どうし……」カイトの元にたどり着き安心したのか、ぜぇと息を吐くその頭を見下ろす「た、その頭」

「リンに、リンに……、直ぐ外しますんで……!」

「ああ、もういいよ、好きにしろよ」

「外させてください!」


 世の中は自由になったなぁ、と弟分の頭で秋の光を目映く照り返していた髪留めを思いながらカイトはまたふらりふらりと廊下を行く。
 しばらくすると、随分目に慣れた鳶色がこちらへ歩いてくるのが見えた。手を振ると、笑顔もなく手を振り替えされる。愛想がないのが彼女の愛嬌のようなものだと言うのは、この屋敷に出入りするものならばだいたいが知っている事項だった。


「何よ、茶でも飲みにきたの? 座敷で待ってればそろそろ持って行ってやったのに」

「あー、そうなんか。ありがとう」

「……何よ、昼間から」

「いやねぇ、ちょっと疲れたよ。世の中の流れに付いていけない」

「何のこと?」


 不思議そうに彼女は肩口に頭を寄せるカイトを見やる。


「うん、まぁ、ちょっとね……」

「……ふうん、ま、いいわ。そう、それよりちょっとあんたに聞きたいんだけど」



 あんたは髪、のばさないの?


 ……伸ばしません





















「あ、若、今日はこの髪留めを使っても宜しいですか?」

「お前の好きにしろ」

「ええ、好きにさせていただきますわ」

「ルカ、お前の髪を結ってるそれ、」

「ん? ああ、ミクから頂いたんですよ。てっきり自分用に買ったと思ったら、もう、あの子は、ほんにいじらしいですね」

「……そうか」



 文机の引き出しにいつの間にか入っていた髪留めのことを思い、がくぽの口元が綻ぶ。
「くれてやる」とは随分な送り状だと思っていたら、あのミクの仕業だったとは。



「……ルカ、やはりそれはやめて、使ってほしいのがあるんだが、」













**********

最後の力尽きっぷりがハンパないです。
こんなに長いスパンを短い文に入れたのは初めてかも知れません。なにこのぐだぐだ感


なつさんからのリクエストで「和風パロのぽルカ」だったんですが、なんというオールキャラ。カイメイの方がカップリングらしい気がするのは私だけでしょうか
これは苦情が来ても良いレベル。なので返品は可です
書き直しも厭わない!書いてて楽しかったから後悔はしていない!
というわけでなつさん、どうぞお納めください

リクエスト企画はまだまだ続行中です
大木に書けよというような設定、諸々有りましたら、専用記事のコメント欄か拍手メッセージへどうぞ



しかしこの和風パロ本気で時代背景が掴めない
何時代? 何時代なの一体?

拍手[10回]


 人間パロ
 パロディばっかり書いてるなんてそんなことはけっしてないですよ


 読みにくさが追求されてます

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 うげぇとメイコはその端正な顔をおもいっきり歪めた。
 なんだか極彩色な一団が道の先から走ってきているのだ。走ってくるだけならまだしもどうやらその一団に自分は見覚えがあるのだから顔を歪めるしかない。
 しかも極彩色の一人にいたってはメイコに気づいたのかぶんぶんと満面の笑みで手を振ってくる。なんだその笑顔ムカつく。折角お気に入りのブーツをおろして気分揚々とおでかけとしゃれ込むつもりだったのに。そんなささやかかつかわいらしい計画が瓦解していくのをメイコは感じた。
「今度は何やらかしたのよ、あんたら……」
 つぶやき迷いのない足取りでこちらへ向かってくる先頭の青頭に向かってメイコはロングブーツでの助走を始める。





  ぶちぎれコードの平和な世界!





「いてぇ」「おお、腫れとる」「たんこぶだたんこぶ」「めーちゃん知ってる? 俺一応ボーカルなんだけど。口とか切れたらどうすんの? ねぇ、ローリングソバットもどきってどういうこと?」「つついていい? ねぇつついていい?」「ミクちゃんやめて」「おらおら」「ねぇ、っていたっちょ、がくぽ止めろ」「えいえいえい」「へぁ」「ミクちゃ、いたいいたいいたい」「……」「ルカ様止めてぐりぐりしないで!」「うりゃー」「そぉい」「がくぽぉぉおおおおいい加減にしろよてっめぇえええ」「うおおカイトが怒ったぞ、ミクちゃんにルカ様ここは俺に任せて逃げるが良い!」「むがぁあああ」「きゃー! ルカちゃん逃げるよー!」「……」「あ、いや? うん、そっか」「おお、ルカ様も一緒に戦ってくれるか! よぉし行くぞ、俺とルカ様のラブパワーでカイトなんていちころじゃ!」「だぁあああお前はいつもいつもいつもぉおおお」「わー! ルカちゃんがくぽさん頑張ってー!」「あーはっはっはっは無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」「うおおお前そんなに俺を怒らせたいのかぁああいたいいたいいたいルカ様止めてそれ本気でいたいたいた、やっ! それはそ
ういうための道具じゃな、やめてぇええ!」

「……あんまり暴れんじゃないわよ」

 がくぽと取っ組み合うカイトそこに菜箸で応戦するルカとチアリーダーのように応援をするミク。そんなにんともかんともケイオスなその状況を宥めながらメイコは机に人数分の水道水入りのコップを置く。
 ひふみよいつむ。人数通りだ。
 カイトもがくぽも本当の本気で取っ組み合いをしているわけではあるまいと考えながらメイコはそのうちの一つを手に取る。その証拠に床を踏みならしたりと近隣の部屋の住民に騒音や揺れの被害がゆくような行動はしていない。手をがっちり組み合ってぐいぐいやっているだけだ。大声こそ上げているがそれはメイコのすむマンションが防音完備と知っていての行動だろう。腹式呼吸の通った大声はそれでも多少響くけれども平日の今の時間ならばそこまでとやかくもいわれないはずだ。
 聡いんだかあほうなんだかと思いながら手に取ったコップを部屋の端でちぢこまる極彩色の一部に差し出した。
「で、あんたは何?」
 メイコのあんまりにぶっきらぼうなしゃべり口に彼はびくりと肩を震わせる。ああまたいらん癖がとメイコは自戒した。どうにも自分には配慮とか気遣いとかいわれるあれがじゃっかん足りていないらしい。一応その辺の自覚はあるメイコだった。あれってどれだ。
 うむうむきをつけよう明日からといつものようにおもいながら彼を観察する。人目を引きそうな少年だ。肩に付くくらいのオトコノコにしては長めの金髪をハーフアップのようにくくり上げている。染めたにしたって自然すぎるその色やカラーコンタクトにしては発色の鈍い碧眼からわーおガイジンだとメイコは肩をすくめた。日本語が通じるかしら。メイコは英歌詞も歌うは歌うがバイリンガルなわけではない。おもいっきりの日本語英語発音者だ。takeをタケと発音してルカに激怒されるというはこのグループの間では誰もが通る共通の経験値だった。そんな感じで不安に成りつつもおもいきり日本語で喋りかける辺り彼女の図太さが現れているがメイコにその自覚はない。
 路上ダッシュをしていた時には「はやくはやく」とミクに手を引かれルカに押されしまいには「はやくはいれ」「そいやー」とがくぽとカイトに抱えられてメイコの家に押し込まれた彼はすっかりおびえきっていた。うんまぁそりゃあねぇとメイコは後ろでなおも暴れる友人たちを振り返る。
 全員が全員愉快すぎる様相を示している彼らに拉致られたとなればおびえもしよう。認識的にはアタマのオカシい麻薬中毒者にさらわれたのと似たようなものだったろう。「ああ、違うのよ、」何が違うんだと自分でつっこみつつもメイコは少年にコップを持たせる「あいつらちょっと常識通じない所があるから、何かやらかしたんなら私が変わりに謝るわ」「あ、いえ、そんなご丁寧に」
 頭を下げたメイコに恐縮した少年の声はきれいなボーイソプラノだった。
 小節がきいていてなかなかに力強い。あらいい声と感心する。
 っていうか日本語通じた。よかったよかった一安心。
「あー! そうなの、聞いてよめーちゃん!」「ぐええ」「うわ、メイコ凄い声」
 どんと衝撃が背中にぶち当たってメイコは絶息する。ごりっと背中で何かいやなおとがした。そのついでに清涼系のシャンプーの匂いが鼻をくすぐりそれだけで体に悪そうな緑色の髪が視界のはじでふぁさりと舞う。
 ごっきと愉快な音を立てた首をさすりさすり振り向いた。突撃をかましてきた張本人のミクは清涼飲料水に砂糖をぶち込んだような笑みでメイコの首に細い腕を絡ませる。スキンシップのかわいらしい少女なのだ。同じような体勢で姉のような妹に抱きついているのをよくみる。ごりっと言った痛いのはどうやら彼女が首にぶら下げていたウサギのモチーフのペンダントだ。
「危ないじゃないの、子供じゃないんだから気をつけなさいな」
「ん、ごめんごめん」悪びれることもなくミクは笑った「いきおい付いちゃってさ」
「……で?」「あー、うん。カイトさんがあの公園はパフォーマンス禁止してないっていったから路上セッションしてたらねー、お巡りさんに追いかけられたの!」「びっくりしたよな」
 なあと同意するようにがくぽがルカの顔をのぞき込む。照れたルカにぷいと顔を背けられ「ルカ様にふられた」としょげた。するとあわてたようにルカがそれに寄り添う。いつ見てもおもしろいふたりねぇと何だか感心みたいな思いを浮かべながらメイコは「へえ」と頷いた。
 恐らくちょっと音量が大きすぎたか人が集まりすぎたかしたのだろう。
 しかし別に逃げなくても注意くらいで終わったろうに。奇抜な髪色や服装といった外見のせいで何度も経験した職務質問のせいで随分と警察嫌いな四人だった。まぁそれはある意味彼らの自業自得なのだけどと並ぶカラフルな青緑ピンク紫を見やる。
 そりゃあ、そんな頭をしてたらねぇ。
 注意をしにいったら速攻で逃げられたものだから警察官も後ろめたい何かがあると勘違いしたに違いない。
「で?」「『で?』」「それで、何でこの子連れてきたの?」
 しかしそれがなぜこの少年と関係してくるのかしらと改めて彼をみる。
 この近くにある私立中学校だか高校だかの制服に鞄からはみ出たカナル式のイアフォン。ふつうの中学生と言えばふつうの中学生だ。少なくとも髪の色以外はミクやルカがくぽカイトと似合わない。誰かの知り合いかとも思ったが少年の様子からも接点があるようには思えなかった。
「それはねぇ、追いかけられる前に、近くにいたから」「つれてきた?」「そう」
 連れてきたんだよねえとミクは頷いた。
 当然という風にそう言う緑髪に驚きの声を上げたのは青とピンクと紫だった。
「「「……え?」」」「えって言ってるわよちょっと」「えっ」「えっじゃないわよミク、あんたが連れてきたんでしょ?」
 全員が全員彼をらちっていた気がするが率先していたのはどうやらミクだったらしい。ルカが冷ややかな瞳で自分よりも小柄な姉を見やる。
「もしかしてミクちゃん、なんとなくで連れてきたの」「……」
 さっとミクがその青いカラーコンタクトの入った目から視線を逸らした。だめだこの子なんとかしないととカイトがつぶやく。うるさいお前は黙ってろとメイコは思う。
「だ、だって近くにいたしさ! このこ、こんな髪の色してるし、ケーサツにあたしたちに仲間だと思われたらややこしいと思って!」「いや、でも違うんだから、違うって言えば良いじゃん」「わー! カイトさんが味方してくれないっ!」「ミク、ちょっと、考え無しよそれ」「るっ、ルカちゃんまでひどい!」「ミクちゃん、もうちょっと考えてから行動しよう、な?」「がくぽさんに諭されたーっ!」「えっちょっと待ってそれひどくない」
 またぎゃいぎゃいとやりだす四人を余所にメイコは少年に話しかける。お詫びに何かないか、とポケットを探りながら。
「なんか巻き込んじゃってごめんね。家大丈夫? なんならクルマで送らせるから、連絡入れとく?」「あ、はい大丈夫です」「ほんと? あー、そうだお詫びにこれあげるわ。ドリンク代入ってるから、この近くだし暇があったら来てちょうだい」
 それを目撃したカイトが「あーっ!」と大声を上げる。
「メイコそれ俺たちのライブのチケットぉ!」「知ってるわよ! これぐらい自腹でお詫びしなさい!」「今月きついのに!」「ミクちゃんたちの分からも、はい」「えええ! あの箱高いんだよぉ?!」「俺らとばっちりみたいな気がするんだけど」「あんたらも連れてきたんでしょ、同罪」「えー!」


「あんなんでも一応、歌ってるときは格好良い奴らだからさ」


 ぶうぶう文句を言い出すカラフルなやつらを後目にウインクをひとつ。ぼんやりとそれを眺めていた少年が、あわてたようにこっくりと頷いた。



「知って、ます」




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だめ人間なこいつらが存外気に入っててどうしようです
メイコ登場

リンこねぇなぁ

拍手[3回]

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