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 人間パロ
 パロディばっかり書いてるなんてそんなことはけっしてないですよ


 読みにくさが追求されてます

**********



 うげぇとメイコはその端正な顔をおもいっきり歪めた。
 なんだか極彩色な一団が道の先から走ってきているのだ。走ってくるだけならまだしもどうやらその一団に自分は見覚えがあるのだから顔を歪めるしかない。
 しかも極彩色の一人にいたってはメイコに気づいたのかぶんぶんと満面の笑みで手を振ってくる。なんだその笑顔ムカつく。折角お気に入りのブーツをおろして気分揚々とおでかけとしゃれ込むつもりだったのに。そんなささやかかつかわいらしい計画が瓦解していくのをメイコは感じた。
「今度は何やらかしたのよ、あんたら……」
 つぶやき迷いのない足取りでこちらへ向かってくる先頭の青頭に向かってメイコはロングブーツでの助走を始める。





  ぶちぎれコードの平和な世界!





「いてぇ」「おお、腫れとる」「たんこぶだたんこぶ」「めーちゃん知ってる? 俺一応ボーカルなんだけど。口とか切れたらどうすんの? ねぇ、ローリングソバットもどきってどういうこと?」「つついていい? ねぇつついていい?」「ミクちゃんやめて」「おらおら」「ねぇ、っていたっちょ、がくぽ止めろ」「えいえいえい」「へぁ」「ミクちゃ、いたいいたいいたい」「……」「ルカ様止めてぐりぐりしないで!」「うりゃー」「そぉい」「がくぽぉぉおおおおいい加減にしろよてっめぇえええ」「うおおカイトが怒ったぞ、ミクちゃんにルカ様ここは俺に任せて逃げるが良い!」「むがぁあああ」「きゃー! ルカちゃん逃げるよー!」「……」「あ、いや? うん、そっか」「おお、ルカ様も一緒に戦ってくれるか! よぉし行くぞ、俺とルカ様のラブパワーでカイトなんていちころじゃ!」「だぁあああお前はいつもいつもいつもぉおおお」「わー! ルカちゃんがくぽさん頑張ってー!」「あーはっはっはっは無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」「うおおお前そんなに俺を怒らせたいのかぁああいたいいたいいたいルカ様止めてそれ本気でいたいたいた、やっ! それはそ
ういうための道具じゃな、やめてぇええ!」

「……あんまり暴れんじゃないわよ」

 がくぽと取っ組み合うカイトそこに菜箸で応戦するルカとチアリーダーのように応援をするミク。そんなにんともかんともケイオスなその状況を宥めながらメイコは机に人数分の水道水入りのコップを置く。
 ひふみよいつむ。人数通りだ。
 カイトもがくぽも本当の本気で取っ組み合いをしているわけではあるまいと考えながらメイコはそのうちの一つを手に取る。その証拠に床を踏みならしたりと近隣の部屋の住民に騒音や揺れの被害がゆくような行動はしていない。手をがっちり組み合ってぐいぐいやっているだけだ。大声こそ上げているがそれはメイコのすむマンションが防音完備と知っていての行動だろう。腹式呼吸の通った大声はそれでも多少響くけれども平日の今の時間ならばそこまでとやかくもいわれないはずだ。
 聡いんだかあほうなんだかと思いながら手に取ったコップを部屋の端でちぢこまる極彩色の一部に差し出した。
「で、あんたは何?」
 メイコのあんまりにぶっきらぼうなしゃべり口に彼はびくりと肩を震わせる。ああまたいらん癖がとメイコは自戒した。どうにも自分には配慮とか気遣いとかいわれるあれがじゃっかん足りていないらしい。一応その辺の自覚はあるメイコだった。あれってどれだ。
 うむうむきをつけよう明日からといつものようにおもいながら彼を観察する。人目を引きそうな少年だ。肩に付くくらいのオトコノコにしては長めの金髪をハーフアップのようにくくり上げている。染めたにしたって自然すぎるその色やカラーコンタクトにしては発色の鈍い碧眼からわーおガイジンだとメイコは肩をすくめた。日本語が通じるかしら。メイコは英歌詞も歌うは歌うがバイリンガルなわけではない。おもいっきりの日本語英語発音者だ。takeをタケと発音してルカに激怒されるというはこのグループの間では誰もが通る共通の経験値だった。そんな感じで不安に成りつつもおもいきり日本語で喋りかける辺り彼女の図太さが現れているがメイコにその自覚はない。
 路上ダッシュをしていた時には「はやくはやく」とミクに手を引かれルカに押されしまいには「はやくはいれ」「そいやー」とがくぽとカイトに抱えられてメイコの家に押し込まれた彼はすっかりおびえきっていた。うんまぁそりゃあねぇとメイコは後ろでなおも暴れる友人たちを振り返る。
 全員が全員愉快すぎる様相を示している彼らに拉致られたとなればおびえもしよう。認識的にはアタマのオカシい麻薬中毒者にさらわれたのと似たようなものだったろう。「ああ、違うのよ、」何が違うんだと自分でつっこみつつもメイコは少年にコップを持たせる「あいつらちょっと常識通じない所があるから、何かやらかしたんなら私が変わりに謝るわ」「あ、いえ、そんなご丁寧に」
 頭を下げたメイコに恐縮した少年の声はきれいなボーイソプラノだった。
 小節がきいていてなかなかに力強い。あらいい声と感心する。
 っていうか日本語通じた。よかったよかった一安心。
「あー! そうなの、聞いてよめーちゃん!」「ぐええ」「うわ、メイコ凄い声」
 どんと衝撃が背中にぶち当たってメイコは絶息する。ごりっと背中で何かいやなおとがした。そのついでに清涼系のシャンプーの匂いが鼻をくすぐりそれだけで体に悪そうな緑色の髪が視界のはじでふぁさりと舞う。
 ごっきと愉快な音を立てた首をさすりさすり振り向いた。突撃をかましてきた張本人のミクは清涼飲料水に砂糖をぶち込んだような笑みでメイコの首に細い腕を絡ませる。スキンシップのかわいらしい少女なのだ。同じような体勢で姉のような妹に抱きついているのをよくみる。ごりっと言った痛いのはどうやら彼女が首にぶら下げていたウサギのモチーフのペンダントだ。
「危ないじゃないの、子供じゃないんだから気をつけなさいな」
「ん、ごめんごめん」悪びれることもなくミクは笑った「いきおい付いちゃってさ」
「……で?」「あー、うん。カイトさんがあの公園はパフォーマンス禁止してないっていったから路上セッションしてたらねー、お巡りさんに追いかけられたの!」「びっくりしたよな」
 なあと同意するようにがくぽがルカの顔をのぞき込む。照れたルカにぷいと顔を背けられ「ルカ様にふられた」としょげた。するとあわてたようにルカがそれに寄り添う。いつ見てもおもしろいふたりねぇと何だか感心みたいな思いを浮かべながらメイコは「へえ」と頷いた。
 恐らくちょっと音量が大きすぎたか人が集まりすぎたかしたのだろう。
 しかし別に逃げなくても注意くらいで終わったろうに。奇抜な髪色や服装といった外見のせいで何度も経験した職務質問のせいで随分と警察嫌いな四人だった。まぁそれはある意味彼らの自業自得なのだけどと並ぶカラフルな青緑ピンク紫を見やる。
 そりゃあ、そんな頭をしてたらねぇ。
 注意をしにいったら速攻で逃げられたものだから警察官も後ろめたい何かがあると勘違いしたに違いない。
「で?」「『で?』」「それで、何でこの子連れてきたの?」
 しかしそれがなぜこの少年と関係してくるのかしらと改めて彼をみる。
 この近くにある私立中学校だか高校だかの制服に鞄からはみ出たカナル式のイアフォン。ふつうの中学生と言えばふつうの中学生だ。少なくとも髪の色以外はミクやルカがくぽカイトと似合わない。誰かの知り合いかとも思ったが少年の様子からも接点があるようには思えなかった。
「それはねぇ、追いかけられる前に、近くにいたから」「つれてきた?」「そう」
 連れてきたんだよねえとミクは頷いた。
 当然という風にそう言う緑髪に驚きの声を上げたのは青とピンクと紫だった。
「「「……え?」」」「えって言ってるわよちょっと」「えっ」「えっじゃないわよミク、あんたが連れてきたんでしょ?」
 全員が全員彼をらちっていた気がするが率先していたのはどうやらミクだったらしい。ルカが冷ややかな瞳で自分よりも小柄な姉を見やる。
「もしかしてミクちゃん、なんとなくで連れてきたの」「……」
 さっとミクがその青いカラーコンタクトの入った目から視線を逸らした。だめだこの子なんとかしないととカイトがつぶやく。うるさいお前は黙ってろとメイコは思う。
「だ、だって近くにいたしさ! このこ、こんな髪の色してるし、ケーサツにあたしたちに仲間だと思われたらややこしいと思って!」「いや、でも違うんだから、違うって言えば良いじゃん」「わー! カイトさんが味方してくれないっ!」「ミク、ちょっと、考え無しよそれ」「るっ、ルカちゃんまでひどい!」「ミクちゃん、もうちょっと考えてから行動しよう、な?」「がくぽさんに諭されたーっ!」「えっちょっと待ってそれひどくない」
 またぎゃいぎゃいとやりだす四人を余所にメイコは少年に話しかける。お詫びに何かないか、とポケットを探りながら。
「なんか巻き込んじゃってごめんね。家大丈夫? なんならクルマで送らせるから、連絡入れとく?」「あ、はい大丈夫です」「ほんと? あー、そうだお詫びにこれあげるわ。ドリンク代入ってるから、この近くだし暇があったら来てちょうだい」
 それを目撃したカイトが「あーっ!」と大声を上げる。
「メイコそれ俺たちのライブのチケットぉ!」「知ってるわよ! これぐらい自腹でお詫びしなさい!」「今月きついのに!」「ミクちゃんたちの分からも、はい」「えええ! あの箱高いんだよぉ?!」「俺らとばっちりみたいな気がするんだけど」「あんたらも連れてきたんでしょ、同罪」「えー!」


「あんなんでも一応、歌ってるときは格好良い奴らだからさ」


 ぶうぶう文句を言い出すカラフルなやつらを後目にウインクをひとつ。ぼんやりとそれを眺めていた少年が、あわてたようにこっくりと頷いた。



「知って、ます」




**********

だめ人間なこいつらが存外気に入っててどうしようです
メイコ登場

リンこねぇなぁ

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