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ぼーかろいどのSSとかを書いてたりするよ
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にこめ!



**********




「おい、嬢ちゃん」

「んっ?」

「あんたじゃねぇよ。嬢ちゃんって歳でもあるめぇに、お姉さんよ。そっちの嬢ちゃんだよ」


「……ミク?」


 顔を上げたミクに、店主は「ん」と頷いてみせる。


「お前さんが見てるそいつは、二つで一つ身だからな。そっち買ったらこっちの薄紅のも付いてくる、お買い得もんだぜ」

「何子供相手に商売してんのよ」


 あきれたリンがミクの頭を抱き抱える。
 しかし二つで一つ分の値段は、確かに買い得だ。自分も買おうか、と緋毛氈に目を落とす。
 目に付いたのは、黄色と緑の鮮やかな髪留め。メイコやルカが手に取っているものよりは物は劣るが、それでも細かい細工の美しいものだ。
 どうやら同色の櫛が付いてくるらしい。


「ミクはそれ? 買うの?」

「あ、……でも」


 先ほどからずっと眺めていた髪留めをさっと毛氈の上に戻してしまう。
 怪訝に思っていると、小さな手をリンお下がりの梅紅色の着物の袂に当て、ミクは困ったように俯いた。


「おかね、たりない」


「……」

「……」


 リンが店主の方を見たときには、既に店主は手を伸ばして、ミクの小さな手にその髪留めをまとめて二つ、握り込ませたところだった。


 自らの手の内に舞い込んだ薄紅と薄紫の紫陽花を模した髪飾りを不思議そうに見つめ、それからミクはまた困ったように眉を下げた。




















「……若ぁ」

「何だ、カイト」


 何事も万事問題無しと言わんばかりの態度で着物を捌いて胡座をかき、緑茶を飲みのみカストリ新聞に目を落とすがくぽに、カイトは大きくため息をはいた。
 その流れる長い髪は頭頂近くで高く結わえられ、常々切れせめて纏めろと口を酸っぱくしていたカイトとしてはうれしい変化だったの、だが。


「お前さぁ、威厳とか、人目とか、気にしてくれやしないの?」

「……何のことだ」


 カストリから目を上げ、本気で首を傾げるのだから始末に負えない。
 かくりと意図切れた人形のように彼が首を傾けた拍子に、しゃらりと結わえられた髪の根本で薄紅が微かな音を立てた。

 煌びやかとは言わない。
 豪奢でも派手でも無いが、決して地味ではない。確かにしっかりと主張する美しい細工の髪飾りが、そこで揺れていた。


「仮にも、ここら一帯の総元締めの、長男がさ、……その髪は」

「これか?」乱してしまわぬようにと気遣っているのか、ひどくそっと優しげな手つきで自分の髪をつまみ上げる「これはルカのだからな。私は何もできん」

「……ああ、そう」


 大きく息を吐き、肩を落として座敷から退散する。既に傾き者と名高い神威家長男である。
 もうこれ以上どうあっても傘下はどうも思うまい。

 しかしなぁと再度ため息を吐いたところで、どたどたと荒い足音がこちらへと向かってきた。
 思わずそちらへ目を遣ると、見慣れた黄色い頭があわただしく廊下を走っている。


「おう、レン、どうし……」カイトの元にたどり着き安心したのか、ぜぇと息を吐くその頭を見下ろす「た、その頭」

「リンに、リンに……、直ぐ外しますんで……!」

「ああ、もういいよ、好きにしろよ」

「外させてください!」


 世の中は自由になったなぁ、と弟分の頭で秋の光を目映く照り返していた髪留めを思いながらカイトはまたふらりふらりと廊下を行く。
 しばらくすると、随分目に慣れた鳶色がこちらへ歩いてくるのが見えた。手を振ると、笑顔もなく手を振り替えされる。愛想がないのが彼女の愛嬌のようなものだと言うのは、この屋敷に出入りするものならばだいたいが知っている事項だった。


「何よ、茶でも飲みにきたの? 座敷で待ってればそろそろ持って行ってやったのに」

「あー、そうなんか。ありがとう」

「……何よ、昼間から」

「いやねぇ、ちょっと疲れたよ。世の中の流れに付いていけない」

「何のこと?」


 不思議そうに彼女は肩口に頭を寄せるカイトを見やる。


「うん、まぁ、ちょっとね……」

「……ふうん、ま、いいわ。そう、それよりちょっとあんたに聞きたいんだけど」



 あんたは髪、のばさないの?


 ……伸ばしません





















「あ、若、今日はこの髪留めを使っても宜しいですか?」

「お前の好きにしろ」

「ええ、好きにさせていただきますわ」

「ルカ、お前の髪を結ってるそれ、」

「ん? ああ、ミクから頂いたんですよ。てっきり自分用に買ったと思ったら、もう、あの子は、ほんにいじらしいですね」

「……そうか」



 文机の引き出しにいつの間にか入っていた髪留めのことを思い、がくぽの口元が綻ぶ。
「くれてやる」とは随分な送り状だと思っていたら、あのミクの仕業だったとは。



「……ルカ、やはりそれはやめて、使ってほしいのがあるんだが、」













**********

最後の力尽きっぷりがハンパないです。
こんなに長いスパンを短い文に入れたのは初めてかも知れません。なにこのぐだぐだ感


なつさんからのリクエストで「和風パロのぽルカ」だったんですが、なんというオールキャラ。カイメイの方がカップリングらしい気がするのは私だけでしょうか
これは苦情が来ても良いレベル。なので返品は可です
書き直しも厭わない!書いてて楽しかったから後悔はしていない!
というわけでなつさん、どうぞお納めください

リクエスト企画はまだまだ続行中です
大木に書けよというような設定、諸々有りましたら、専用記事のコメント欄か拍手メッセージへどうぞ



しかしこの和風パロ本気で時代背景が掴めない
何時代? 何時代なの一体?

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