忍者ブログ
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新CM
[09/25 NONAME]
[08/22 isto]
[08/03 AI]
[07/17 大木]
[07/17 AI]
最新TB
プロフィール
HN:
大木 梯子
性別:
非公開
自己紹介:
もろもろ字を書いていたり




カウンター




バーコード
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]
http://dawn.zoku-sei.com/
ぼーかろいどのSSとかを書いてたりするよ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アペンドの話
あの新デザインのエロさは異常 なにあれときめく


小話なのでめっちゃ短いです


本当に短いので続きに拍手の返事を格納してあります

**********



『初音ミク』に追加パックが発売されたことは知っていた。




  追加パックのはなし




「いや、買う予定はないが」

「え、買わないんですか?」

「買っても使いこなせる気がしないしな。精々solidとvividくらいしか使う気がしない」

「ああ、確かにそんな気はしますが……」

「初音君はほしいのか、追加パック」

「それを私に聞きますか?」

「ん? ほしいのか?」


 首を傾け、彼はミクを見やる。
 彼女自身にそういった意志だとか願望があるのが当然だというように。


「表現が広がるのは良いことだとは思います」

「うむ、そうだな。で、欲しいのか欲しくないのかどっちなんだ」

「……明言しかねます」

「曖昧だな。はっきりしたまえよ」


 お前が買うんだからお前が決めろよ、という言葉を必死で飲み込み、ミクはひきつる人工の表情筋を押さえつける。
 そうしている間に、彼は手元にあったパソコンのキーボードをたたき、なにやら検索を始めたようだ。「Go○gle先生にー、答えをー聞きにいこうー」という節を付けたような独り言が聞こえてくる。


「ふん、Append、なぁ……」


 そうして表示された追加パックについての公式ページと、既に購入した者が感想を書き込む掲示板とを同時に表示し、ぎっとデスクチェアへもたれ掛かった。
 傍らで外部端末に入り立っていたミクも、自然にその画面をのぞき込むような視線になる。


「……買うか」

「え?」

「よし、買おう。購入決定だ。そうと決まれば注文だな」

「え?」

「初音君、どこでも良いから通販サイトで購入しておいてくれたまえ。データパックとフルパックがあるようだがくれぐれも間違えないように、フルパックを注文しておいてくれ。
現金は口座から引き落としか、カードで頼む」

「は、はい」


 腕時計を確認し、席を立つと彼はかつかつと部屋から出ていく。
 その背中を見送り、表示されたままの画面を数秒見つめ、ミクは手早くそのパソコンの電源を落とした。
 確か午後からはルカとの歌の音合わせがあったはずだ。


「報告しようっと」


 心なしか足取り軽く部屋から出るミクは、『フルパック:新デザインの衣装付き』の文字を知らない。






**********

謝る準備は出来ている!

拍手[3回]

PR

なつさんからのリクエストで、この前書いた和風パロの続き……のようななんというか
時系列的に並べたら恐らく遡る話ですが


ちなみにこの和風パロ、時代考証もなんもしてませんのでなんか変なところがあってもつっこまないでやって下さい。いったい何時代なんだろうか。明治とか江戸とか色々混じってる気がする!

文の作り方も『それっぽい』のを適当に書いてるだけなのでやっぱり変なところがあっても適当に鼻で笑ってやっておいて下さい



**********





「若、随分御髪が伸びましたねぇ」

「……そうか?」


 さらりと手の中からこぼれ落ちてゆく紫色を惜しむような気分で指に絡めながら、ルカはつぶやいた。その言葉に、下らないカストリ新聞に注いでいた濁り無い視線を自らの肩口にやるようにしながら彼は首をかたぶける。

 それにつられるようにしてまたさらりと紫色が流れた。


「本当ですよ。初めてお会いしたときはこーんなでしたのに」


 こーんな、と自らの首の横へ手を当て、ルカはにっこりと微笑んで見せる。幼い頃の彼の髪の長さを示しているらしかった。
 如何にも愉しそうなその様子に、何時時分の話だ、とがくぽは苦々しく端正な顔を歪める。何時の話でしたかねぇ、とますます気分良い声音でルカは歌うようだ。
 麗らかな陽気が縁側から差し込み、座敷を照らしている。

 ルカの笑顔から逃げるようにまたしてカストリへと視線を落としてしまったがくぽの髪を戯れに手櫛し、ルカはそのぱさりと乾いたような手触りに複雑な心中になりながら広い背中へ、横向きにもたれ掛かる。中々に不精者の彼の髪は彼自身の生活の所為もあってか軽く痛んでいて、きちんと手入れをして労ってやりたいという思いが沸き上がるが、過ぎたことと頭を振る。

 気を取り直してはなだ色の着物の背中の半ば過ぎまでにさらりと流れる藤の小川を眺めていると、ルカの心中に満ちるのは言いようもない幸福感。
 幼い頃にルカが父にそうしていたのと同じ格好。僅かに父よりも小さく華奢な背中。


「何か、願掛けでもなさっておられるんですか?」


 ん、とうめくような声がする。
 耳を当てた広い背中にその低い声はどうどうと轟き、大河の流れのようだ。


「いや」呟いて、顔に落ちてきた一房をつまみ上げる「……気になるか」

「いえ、そんなことは」


 男児が長髪などと、この時世、確かに世間の目は奇異を向けるだろう。けれどもルカは彼のそのたゆたう髪がたまらなく好きだった。
 藤の色をそのまま移したかのように、涼やか。


「私は、若の御髪、好きですよ」

「……気がついたら伸びてただけだ」

「そうですか」にこりと微笑む。彼はやはり罰悪そうにそれから視線を逸らした「それならば仕様がありませんね」


 それきり黙ってしまった彼に、合わせるようにしてルカも口を噤む。
 彼が背中を向けているのを良いことに一房ゆるりとうねり流れからはみ出た髪を梳き、撫でつけ、頬に唇に当て楽しんだ。微かに人らしい香りがルカの鼻を擽る。まるで人形のような彼が、無機物から人へ。


「お前は、髪を触るのが好きか」

「ええ、とても好きですよ? 私は若の髪を触っているときがいっとう幸せです」


 わがままを言えば、もっときちんと手入れをしていただきたい所ですけれどね、とぱさついた髪をつまみ上げた。
 髪の手入れなぞ分からん、と切り捨てた彼は、暫くしてああと身じろいだ。


「それなら、私の髪をお前にやるから、お前が好きにしたら良い」

「……本当ですか?」

「ああ」

「手入れをさせていただいてもいいんですか?」

「……お前がしたいのなら、そうすればいい」

「昨日ちょうど椿油を買ってきていただいたんです! 若も一緒に付けましょう!」

「……」


 思わず意気込んでそう言ったルカの声をどう思ったのか身を捩ってこちらを伺った彼は、しばらく瞬きを繰り返してから長い睫を緩く震わせてまた前をむき直した。機嫌を損なったか、と不安になっていると、一声。


「切るなり刈るなり、好きにしろ」


 そう低い声が背中へ轟くのに耳を当て、思わずルカはぎゅうと『自分のもの』になったその髪を抱きしめた。





  MInヱ





「駄目かしら」

「うーん、そりゃあたしのじゃあ何とも言えませんねぇ」


 細い腕を組み、年寄りじみた仕草でリンは首を捻る。
 其れを不安げに見つめながら、ルカはこそりと溜息を吐いた。
 いつもはそう気にしていないこの身分が、こういう時ばかりは重苦しく彼女の細い双肩にしなだれかかる。いくら住人に姉と呼び慕われようが、未だに自分は自由な外出も叶わぬひ弱な客娘なのだ。


「あたしが選んで買ってくるんじゃあ、駄目なんですよね?」

「そんな事は無いのだけれど、」其処まで言って言葉に詰まった「けど、けれども、ね……」

「……うーん。若の為ってぇ姉さんの気持ちも分かるんだけど、最近物騒ですしねぇ」


 ううむ、とたくし上げた着物の袖を直し、リンはもう一つ唸った。その足下で、カイトから借りてきたらしい草子を抱えたミクが立ち止まり、二人を見上げる。
 丸く照る瞳に目を細め、ルカはその柔らかな頬を撫でた。擽ったそうにミクは首を竦める。


「ね、少しだけ。時間をとったりなんてしないわ」

「でも、あたしに言われても。若に、……は言えませんよねぇ」

「……? あねさま、どうか、したんですか?」


 見上げてくるミクのみどりの長髪を梳きながら「すこしね」と簡単に応えた。子供の髪独特の指の先でするりとほどけていく感触を楽しむ一方、ルカはまつげを揺らして再び溜息を吐く。
 リンを困らせているのは承知していた。本当ならば自分はこのような事を言っても良い立場ではないのだ。座敷牢の奥の奥、押し込め閉じこめられたとて何一つ言えない身でありながら、こんな待遇まで頂いて。その上自由を借りたいなどと烏滸がましくも申し立てる。
 それでも、とルカは下唇を噛んだ。彼はそんな自分に自由にしても良い何かを与えてくれたのだ。


「……」


 たっ、とミクがルカの手をどけ、座敷を走り去っていった。子供ながらに気まずい雰囲気を感じ取ったのやもしれない。不愉快な気分にしてしまっただろうか、と申し訳なく思う。
 相変わらずリンは困ったように眉を曲げ、ルカから目を逸らすようにしていた。

 これ以上は不毛に困らせるばかりだ。
 ルカはあきらめのいい方だ。溜飲の下がらないものの、何とかしょうがないと言うところまで気分を持って行くことにした。
 工夫をすれば他にもいくらか遣りようがあるはずだ。まずはカイト辺りに相談してみよう、と考えた。

「それならば仕様がありませんね」と口を開きかけたところで、ばたばたと騒がしい足音が廊下からこちらの座敷までやってくる。



「ミク?! 何、どうしたってのよ!」

「こっち!」


 どたばた騒々しい足音に、赤髪を揺らした若衆の一人が不可思議そうな顔をして座敷をのぞき込んだ。が、それから足音の主をみとめて軽く肩を竦めて無言で去っていく。
 それにも気づかない足音の主は、それまで小さなミクに手を引かれ前のめっていた姿勢をぴんと正すとそこでやっとこルカとリンに気づいた。


「リンにルカじゃない。どうしたの、ふたりして」

「メイコの姉さん!」


 走った拍子で顔にかかった鳶色の髪をひょいとはねのけたメイコは「ん?」と首を傾げた。


















「はぁ、まぁ私がいりゃあ安心ってね……」

「メイコの姉さんならそんじょそこらの若衆連れるより安心だもんね」

「どういう意味かしら、それは」


 後ろでリンとメイコが長閑に会話しているのを余所に、からころからとミクは下駄を鳴らして鳴らしてルカの手を引き歩いていく。
 主に雑貨や嗜好品を売る店屋が並ぶ通りは、麗らかな秋の天気も手伝ってか大勢の人で賑わっていた。


「あねさま、あねさま、こっちです」

「待って、ミク、走ったら厭よ」


 様々な雑貨に目移りするものの、結局の所ルカの目当ては一つなのだ。
 ミクに手を引かれていった先の一つの店屋に、ぱあと目を輝かす。簡略化されたかんざしの看板を掲げたそこは、煙管をくわえた男が店頭に座っているばかりでは陰気な様子だったが、それでも何人もの女子供が集まっているおかげか随分とにぎやかな空気を辺りに漂わせていた。




「簪屋?」メイコはかくんと首を傾げる「ルカ、重いからってかんざしはあまり着けなかったわよね?」

「そうだね」

「急に興味がわいたって?」


 メイコの言葉に、にししとリンが婆臭く笑う。




「あねさま、ここです」

「……わぁ」


 幼子のように淡い歓声を上げて、店先に並べられた煌びやかな小物達を見下ろす。
 金や銀の装飾を纏った其れは秋の日差しをまばゆく反射し、木や陶器で作られた其れはしっとりと光を吸い込むようだ。


「……こりゃ、珍しいお客様だ。かむいさまのお台所様ときた」


 不意に、煙管を加えていた店主の男が口を開いた。
 髪を引っ詰め疲れた顔つきの男はひどく緩慢な態度で一息吐くと、薄く隈の浮いた瞳でルカを見上げる。


「え? 何かお言いになられましたか?」

「っあんた」


 上手く聞き取れなかったルカと男の間さに素早くメイコが割り込んだ。
 韋駄天もかくやのその早さに、男はひゅうと唇をとがらせる。


「いんやぁ、何にもしたりはしねぇよ。こちとら処場代払って厄介払いしてもらってる身だ。……身内もかむいさまに雇われてることだしな」

「身内?」

「こっちの話だよ。とにかくあんたらが買い物してくれて処場代が還元されるならこっちのモンってこった」


 さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、これほど見事な髪差し簪捻り止め、この国広しと言われども、手ずから一から作り上げたるはこの本音堂ばかり! まずはお手にとって一見、一目で分かるはその違い! お国の総本山も御用達だよ!

 両手を広げにやりと笑い、やたらと朗々と男は言った。












「あら、それいいじゃない、きっと似合うわよ」

「そうですか?」


 メイコに言われて、顔を輝かせてルカは自分の手の内をのぞき込む。
 藤袴を象った華奢な作りの髪飾り。控えめで主張は激しくないがしかし凛と儚く流れるそれは、桃色のルカの髪にならさぞかし似合おう。メイコはそう考え言ったのだが、本人としてはその意味ではないらしい。抱きしめるようにして其れを抱え込み「それならこれにしましょうか」と懐から財布を取りだし、自分の頭に当てることすらしない。


「枝垂れ桜もよいかと思ったのですが、若には藤袴が似合うのではないかと」


 花の咲くような笑顔とはこのことと言わんばかりの顔でそう言ってみせる。


「……若? それ、若にあげるの?」

「ええ」


 頷き愛おしそうに手の中の髪飾りを撫でる様子は余りに甘い菓子のようで、うわぁっとメイコは充てられた気分だった。


「そう……若に、髪飾り、ねぇ」

「やはり、可笑しいでしょうか? 男性に、そんなもの……」


「……まぁ、いいんじゃないの? 若、似合いそうだしね」


 買っていっておやりよ、とその白い手の中の薄紅を軽くはじく。
 もう一度ぱあと咲いた笑顔の花を横目で見ながら、メイコは自分も何か買おうかと緋毛氈に並べられた色とりどりの花簪や髪留めへ目を向ける。竜胆桔梗、鬼灯水仙、芥子に椿に枝垂れ桜。どれも精巧に、かつ美しく造り上げられている。職人の腕が伺えた。
 恐らくそれを造ったのであろう張本人は、煙管を片手にひたすら気怠げな様子で街通りへ目を遣っている。






**********
この下のその2に続きます
なんで和風パロはこんなに長引くんだい?

拍手[10回]


にこめ!



**********




「おい、嬢ちゃん」

「んっ?」

「あんたじゃねぇよ。嬢ちゃんって歳でもあるめぇに、お姉さんよ。そっちの嬢ちゃんだよ」


「……ミク?」


 顔を上げたミクに、店主は「ん」と頷いてみせる。


「お前さんが見てるそいつは、二つで一つ身だからな。そっち買ったらこっちの薄紅のも付いてくる、お買い得もんだぜ」

「何子供相手に商売してんのよ」


 あきれたリンがミクの頭を抱き抱える。
 しかし二つで一つ分の値段は、確かに買い得だ。自分も買おうか、と緋毛氈に目を落とす。
 目に付いたのは、黄色と緑の鮮やかな髪留め。メイコやルカが手に取っているものよりは物は劣るが、それでも細かい細工の美しいものだ。
 どうやら同色の櫛が付いてくるらしい。


「ミクはそれ? 買うの?」

「あ、……でも」


 先ほどからずっと眺めていた髪留めをさっと毛氈の上に戻してしまう。
 怪訝に思っていると、小さな手をリンお下がりの梅紅色の着物の袂に当て、ミクは困ったように俯いた。


「おかね、たりない」


「……」

「……」


 リンが店主の方を見たときには、既に店主は手を伸ばして、ミクの小さな手にその髪留めをまとめて二つ、握り込ませたところだった。


 自らの手の内に舞い込んだ薄紅と薄紫の紫陽花を模した髪飾りを不思議そうに見つめ、それからミクはまた困ったように眉を下げた。




















「……若ぁ」

「何だ、カイト」


 何事も万事問題無しと言わんばかりの態度で着物を捌いて胡座をかき、緑茶を飲みのみカストリ新聞に目を落とすがくぽに、カイトは大きくため息をはいた。
 その流れる長い髪は頭頂近くで高く結わえられ、常々切れせめて纏めろと口を酸っぱくしていたカイトとしてはうれしい変化だったの、だが。


「お前さぁ、威厳とか、人目とか、気にしてくれやしないの?」

「……何のことだ」


 カストリから目を上げ、本気で首を傾げるのだから始末に負えない。
 かくりと意図切れた人形のように彼が首を傾けた拍子に、しゃらりと結わえられた髪の根本で薄紅が微かな音を立てた。

 煌びやかとは言わない。
 豪奢でも派手でも無いが、決して地味ではない。確かにしっかりと主張する美しい細工の髪飾りが、そこで揺れていた。


「仮にも、ここら一帯の総元締めの、長男がさ、……その髪は」

「これか?」乱してしまわぬようにと気遣っているのか、ひどくそっと優しげな手つきで自分の髪をつまみ上げる「これはルカのだからな。私は何もできん」

「……ああ、そう」


 大きく息を吐き、肩を落として座敷から退散する。既に傾き者と名高い神威家長男である。
 もうこれ以上どうあっても傘下はどうも思うまい。

 しかしなぁと再度ため息を吐いたところで、どたどたと荒い足音がこちらへと向かってきた。
 思わずそちらへ目を遣ると、見慣れた黄色い頭があわただしく廊下を走っている。


「おう、レン、どうし……」カイトの元にたどり着き安心したのか、ぜぇと息を吐くその頭を見下ろす「た、その頭」

「リンに、リンに……、直ぐ外しますんで……!」

「ああ、もういいよ、好きにしろよ」

「外させてください!」


 世の中は自由になったなぁ、と弟分の頭で秋の光を目映く照り返していた髪留めを思いながらカイトはまたふらりふらりと廊下を行く。
 しばらくすると、随分目に慣れた鳶色がこちらへ歩いてくるのが見えた。手を振ると、笑顔もなく手を振り替えされる。愛想がないのが彼女の愛嬌のようなものだと言うのは、この屋敷に出入りするものならばだいたいが知っている事項だった。


「何よ、茶でも飲みにきたの? 座敷で待ってればそろそろ持って行ってやったのに」

「あー、そうなんか。ありがとう」

「……何よ、昼間から」

「いやねぇ、ちょっと疲れたよ。世の中の流れに付いていけない」

「何のこと?」


 不思議そうに彼女は肩口に頭を寄せるカイトを見やる。


「うん、まぁ、ちょっとね……」

「……ふうん、ま、いいわ。そう、それよりちょっとあんたに聞きたいんだけど」



 あんたは髪、のばさないの?


 ……伸ばしません





















「あ、若、今日はこの髪留めを使っても宜しいですか?」

「お前の好きにしろ」

「ええ、好きにさせていただきますわ」

「ルカ、お前の髪を結ってるそれ、」

「ん? ああ、ミクから頂いたんですよ。てっきり自分用に買ったと思ったら、もう、あの子は、ほんにいじらしいですね」

「……そうか」



 文机の引き出しにいつの間にか入っていた髪留めのことを思い、がくぽの口元が綻ぶ。
「くれてやる」とは随分な送り状だと思っていたら、あのミクの仕業だったとは。



「……ルカ、やはりそれはやめて、使ってほしいのがあるんだが、」













**********

最後の力尽きっぷりがハンパないです。
こんなに長いスパンを短い文に入れたのは初めてかも知れません。なにこのぐだぐだ感


なつさんからのリクエストで「和風パロのぽルカ」だったんですが、なんというオールキャラ。カイメイの方がカップリングらしい気がするのは私だけでしょうか
これは苦情が来ても良いレベル。なので返品は可です
書き直しも厭わない!書いてて楽しかったから後悔はしていない!
というわけでなつさん、どうぞお納めください

リクエスト企画はまだまだ続行中です
大木に書けよというような設定、諸々有りましたら、専用記事のコメント欄か拍手メッセージへどうぞ



しかしこの和風パロ本気で時代背景が掴めない
何時代? 何時代なの一体?

拍手[10回]

拍手でコメントなんて送っていただけたんですね
そんな機能があることすら最近まで知らなかった阿呆がやっと返信します
何かもう大変遅れてるんじゃなかろうか、ごめんなさい

それからコメント返信とか

拍手[1回]


グミのことは好きです


好きですがキャラが掴めません
めぐぽって呼び方はかわいいと思うんですよ




**********



 掴めないひとがらだよなぁと、グミについてミクは思う。
 まぁ、彼女の周りにはマスターをはじめとしてその友人、彼女自身の家族をも含め、がっちり掴める人という人がいたならばそちらの方が少数派なのだが。



「にっんじっんケーキ! にっんじっんケーキ!」

「じゃあ私はー、抹茶パフェで」

「あーパフェいいなぁ」

「じゃあ半分こしよーか?」

「おっ! その発言待ってました!」

「……グミちゃん、ねらってた?」

「えへへ」




  がぁるずみーつらぶらぶあっぷる!!





「うまぁー」



 モムモムとご満悦という表情でオレンジ色のスポンジを頬張る姿は、ほとんどミクと歳差のない少女のように思える。

 けれどしかし、大人しか参加させて貰えない飲み会にちゃっかりと参加している辺り、もしかしたら成人型なのかもしれない。そんな風には見えないけどなぁ、とパフェ用スプーンを口にくわえながらミクは思う。たとえばルカやメイコは絶対に成人型だと言い切れる。けれど目の前にいるグミは、何だか仕草も幼いし挙動も決して落ち着いているとは言い難い。まだミクの方が落ち着いている自負があるくらいだった。

 むうむうとうなっている内に、もしかして成人型かそうじゃないかって胸で決まったりするのだろうか、などと変な方向へと思考が飛んでいく。確かにグミはそれなりにそれなりなものを持っていらっしゃる。ミクだって別にそこまで小さいわけではないが、どちらが大きいかと問われれば十人中十人がグミを指さすだろう。
 それは事実だし、ミクは一般的な初音ミクよりもそういった事に対してコンプレックスを持ったりはしていなかった。どちらかと言えばどうでもいい類の事象に入っている。「やたらとあってもじゃまだと思うぞ私は。けしからん。しかしもっとやれ」というマスターの発言の影響を多大に受けているとかそういうのではない。受けていたらもうちょっと悩むし、あの人物の発言で思い悩んでいたらAIがすり減って機能が停止する。

 そんな下らないことを考えていると、ぼおっと見つめられているのに気づいたらしいグミがかくんと首を傾げてきた。



「ミクちゃん? どしたの?」

「あ、ううん。グミちゃんもう一口食べる?」

「えっ、くれんの? やった! 食べる食べる、あーん」



 あーん、と開いた口の中に抹茶アイスとクリームとコーンフレークの混ざった物を放り込む。
「じゃあミクちゃんにももう一口ー」と差し出されたオレンジ色のケーキをこれまたあーんして食べる。
 ミクはグミと仲が良いのだ。

 きっかけは、グミがミクをとあるホテルのケーキバイキングに誘ったことだった。
 マスターの知り合いがくれたらしいんだけどさあ、マスターもめーこさんも甘いの嫌いなんだって。お兄ちゃん達にやるのは癪だからさ、ミクちゃん一緒に食べに行かない? という非常に(ミクの)設定年齢相応なお誘いに、ミクはぱちくりしてしまった。

 甘い物は好きだ。
 ケーキバイキングなんてこの世に存在する天国みたいなものだろう。

 けれど、それまで別に其処まで接点があったわけでもないグミが、なぜミクを誘ったのか。
 まぁ真実を言ってしまえばそのお誘いは、ケーキバイキングのチケットを運良く手に入れたグミがミクと仲良くなるべく立てた計画だったのだが、そんな事はミクは一切知らない。

 取りあえず、彼女が食事をするのは完全に趣味の域だったので、こうしてつきあってくれるひとが出来たのは大変喜ばしいことであった。







「で」

「で?」

「そろそろ本題に入ろうか、ミクちゃん」



 人参ケーキと抹茶パフェをそれぞれ食べ終え、お代わり自由の紅茶を一杯飲み干し、新しい中身が運ばれてきたところで、グミの瞳がぎらりと光った。



「……本題、ね」相対するミクも、いい具合に足を組み替える「そうだね」



 かたりとミクのカップがソーサーに置かれた。



「兄さんと姉さんの進展はどうよ?」

「お兄ちゃんとルカさんはー?」




 初音ミクとmeguppoido

 通称頭緑同盟は、全力で他人の恋愛模様を出歯亀する。








**********

グミとミクは正統派オンナノコずという感じで好きです
カフェとかでお茶してるイメージがめっちゃ強い
普通のJKみたいな感じで

拍手[4回]


ぽルカ!
ぽルカ!



**********




 ぱんっぽーん、と

 チャイムが鳴って、出た先に居たのは見慣れた桃色のロングヘアだった。
 うつむきがちに手の中の包みを気にする様子は、まるで成人型には見えない。



「ルカちゃん? どうしたのー?」

「あ」ば、と顔を上げたルカの表情が一瞬タイムラグを作ったのを認識「カイト、さん」



 んんん、とカイトはほほえみを作りながら少し複雑な気分になる。別に良いけどさ、がっかりした顔されるより。
 当のルカは持っていた手提げをがさがさやりだし、陶器で出来た保存タッパーを見せた。半透明のふたからは、チョコレートの色が見て取れた。
 ケーキか何かか、と目敏くチェックする。マスターもカイトもがくぽも、揃いも揃って甘い物に目がない一家な事をルカは知っているため、時々こうして差し入れを持ち込んでくれるのだ。

 発揮できない若干のえこひいきを伴って。



「あの、これ。ケーキを作りましたので、みなさんで召し上がって下さ」

「ちょおっと待て! 今連れてくるから!」


「へ?」




  お茶にしょうか





「がくぽがくぽがくぽがくぽ」

「何だ何だ何だ兄者、髪ひっぱるな痛いだろうが」

「早く! 早く来なさいお前!」

「いだだいだだだいだ抜ける抜ける抜ける」



 今でテレビを見ながら今にもスリープに入らんとしていたがくぽを引っ張り、ルカの元まで引いていく。どたどたと成人男性二人分の足音が響いて、ご近所さんごめんなさいと内心でカイトは謝罪した。
 ぽかんと玄関で待ちぼうけをしていたルカは、がくぽが現れると共に身をぎゅっと固めた。細い肩が怒り、顎を引いて右斜め下を睨みつける格好。
 がくぽもがくぽで寝ぼけかけた顔でカイトに思い切り引っ張られた髪を気にしている。

 相対しながらも全く視線の交わらない二人に、少しは気まずさを感じても良いのだろうが、カイトはあえて気付かないことにした。むしろ気づいてたまるかと若干やけになっている。
 ぐいとがくぽの髪を引っ張った。「いたい」の悲鳴には完璧な無視をかます。
 そうしていつだかアカイトにも伝授したにっこりスマイル。



「ほらルカ! がくぽ!」

「……ですわね」



 いやだから何だよというつっこみを入れるはずだった彼らのマスターは、胃痛と闘いながら仕事に励んでいた。後々カイトからの報告によりこの時の状況を知った彼が、うわその場唯一のつっこみに成らずに済んで良かった、仕事gjと二十数年間の人生で初めて労働していたことに感謝した事はただの与太に過ぎない。

 手を広げてがくぽを指し示し、満足そうに言う兄妹機をどう思ったのか、ルカの対応はひたすらに冷淡。もしも大人の遠慮という物がなかったら「だからなんだってんだ」とでも吐き捨てそうな勢いだ。
 だがしかしカイトは全く動じない。伊達にコミュニティ内で最古参を貼っている訳ではない。いろんな開き直りには定評がある。
 うろうろと視線をさまよわせるルカの手からトートバックを受け取り、奥を指し示す。



「まぁ取りあえずルカ、上がってってよ」

「え、ちょっと待て兄者、俺何で呼ばれたんだ。ちょっと全然意味が分からないんだが」

「今日風強かったでしょ? 暖かいもん淹れるから。これケーキ? ちょうど良い、おやつにしよう」

「兄者? おい兄者聞いてるか? 聞いてないな?」

「がくぽルカの荷物持ってあげて。俺、皿とか用意してくるから」

「なぁこれ俺怒ってもいいんじゃないか」



 ルカから取り上げた鞄をがくぽに押しつけ、二人をほっぽって台所へと舞い戻る。
 手早くポットからケトルにお湯を移した。がたたんと慌ただしい音を立ててコンロへおろす。確か先週ワゴンセールになっていた茶葉があったはずだ。アールグレイなら、取りあえずはずれはないはず。

 外部端末が暖まるのはよいことではないが、其れでもカイトは温かいお茶を飲むのが好きだった。
 それがなんだか正しい形のように感じられるのだ。
 AIの端にこびり付いたバグのような違和。



 いい加減来客用のティカップを用意するようマスターに提言しようと心の底から考えながら、三人分のマグカップを用意した。ルカの分はマスターのもので代用する。
 鼻歌(トマト嫌●の歌)を奏でつつ、戸棚からティポットを取り出した。カイトの片手でも収まらないようなそれは、明らかに一人暮らしには大きすぎるサイズだ。あんたはイギリス人かというマスターへのつっこみは随分前に済ましていた。
 ポットからお湯を注ぎ、ティポットを暖める。



「あ、ルカ、紅茶でいいよね」

「……はい、構いません」



 一言も喋らないままにリビングへとやってきた二人にそう問いかけた。
 ぼそりと応えるルカの視線は相変わらず右斜め下を睨み続けているが、その表情はさっきよりも幾分柔らかい。がくぽの服の端をちょいと摘もうとしているところもポイントが高い。いいなぁオイ、俺だってめーちゃんにそんなことして貰ったこと無いぞ。なにを言ったのか知らんがよくやった弟よ、とカイトは背中に回した手で密かにガッツポーズを作った。



「じゃあこれ切るけど、がくぽフォーク配って」

「ん、わかった」



 お気に入りらしい陶器の容器から現れたのは、ごとりと重たそうなガトーショコラ。おお旨そう、と期待に胸を膨らませながら皿に移すと、台所をのぞき込んだがくぽの顔がひくっとひきつった。
 まるでトラウマでも引っかかれたかのそうなその顔に首を傾げる。



「どうしたがくぽ」

「あー、いや、なんでもない」

「あ、あのカイトさん、生クリームがあるんですが、トッピングいたしますか?」

「なんでそんなの常備してんのルカ」









**********


あ、あれぇ……ぽルカ……?



カイメイとぽルカはもう四人で仲良し仲良しなイメージがあるのはいいんですが、どっちかで話を作ろうとするともう片方も出張ってくる罠
大人組が大好きすぎるにも程がある



拍手[7回]


 人間パロ
 パロディばっかり書いてるなんてそんなことはけっしてないですよ


 読みにくさが追求されてます

**********



 うげぇとメイコはその端正な顔をおもいっきり歪めた。
 なんだか極彩色な一団が道の先から走ってきているのだ。走ってくるだけならまだしもどうやらその一団に自分は見覚えがあるのだから顔を歪めるしかない。
 しかも極彩色の一人にいたってはメイコに気づいたのかぶんぶんと満面の笑みで手を振ってくる。なんだその笑顔ムカつく。折角お気に入りのブーツをおろして気分揚々とおでかけとしゃれ込むつもりだったのに。そんなささやかかつかわいらしい計画が瓦解していくのをメイコは感じた。
「今度は何やらかしたのよ、あんたら……」
 つぶやき迷いのない足取りでこちらへ向かってくる先頭の青頭に向かってメイコはロングブーツでの助走を始める。





  ぶちぎれコードの平和な世界!





「いてぇ」「おお、腫れとる」「たんこぶだたんこぶ」「めーちゃん知ってる? 俺一応ボーカルなんだけど。口とか切れたらどうすんの? ねぇ、ローリングソバットもどきってどういうこと?」「つついていい? ねぇつついていい?」「ミクちゃんやめて」「おらおら」「ねぇ、っていたっちょ、がくぽ止めろ」「えいえいえい」「へぁ」「ミクちゃ、いたいいたいいたい」「……」「ルカ様止めてぐりぐりしないで!」「うりゃー」「そぉい」「がくぽぉぉおおおおいい加減にしろよてっめぇえええ」「うおおカイトが怒ったぞ、ミクちゃんにルカ様ここは俺に任せて逃げるが良い!」「むがぁあああ」「きゃー! ルカちゃん逃げるよー!」「……」「あ、いや? うん、そっか」「おお、ルカ様も一緒に戦ってくれるか! よぉし行くぞ、俺とルカ様のラブパワーでカイトなんていちころじゃ!」「だぁあああお前はいつもいつもいつもぉおおお」「わー! ルカちゃんがくぽさん頑張ってー!」「あーはっはっはっは無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」「うおおお前そんなに俺を怒らせたいのかぁああいたいいたいいたいルカ様止めてそれ本気でいたいたいた、やっ! それはそ
ういうための道具じゃな、やめてぇええ!」

「……あんまり暴れんじゃないわよ」

 がくぽと取っ組み合うカイトそこに菜箸で応戦するルカとチアリーダーのように応援をするミク。そんなにんともかんともケイオスなその状況を宥めながらメイコは机に人数分の水道水入りのコップを置く。
 ひふみよいつむ。人数通りだ。
 カイトもがくぽも本当の本気で取っ組み合いをしているわけではあるまいと考えながらメイコはそのうちの一つを手に取る。その証拠に床を踏みならしたりと近隣の部屋の住民に騒音や揺れの被害がゆくような行動はしていない。手をがっちり組み合ってぐいぐいやっているだけだ。大声こそ上げているがそれはメイコのすむマンションが防音完備と知っていての行動だろう。腹式呼吸の通った大声はそれでも多少響くけれども平日の今の時間ならばそこまでとやかくもいわれないはずだ。
 聡いんだかあほうなんだかと思いながら手に取ったコップを部屋の端でちぢこまる極彩色の一部に差し出した。
「で、あんたは何?」
 メイコのあんまりにぶっきらぼうなしゃべり口に彼はびくりと肩を震わせる。ああまたいらん癖がとメイコは自戒した。どうにも自分には配慮とか気遣いとかいわれるあれがじゃっかん足りていないらしい。一応その辺の自覚はあるメイコだった。あれってどれだ。
 うむうむきをつけよう明日からといつものようにおもいながら彼を観察する。人目を引きそうな少年だ。肩に付くくらいのオトコノコにしては長めの金髪をハーフアップのようにくくり上げている。染めたにしたって自然すぎるその色やカラーコンタクトにしては発色の鈍い碧眼からわーおガイジンだとメイコは肩をすくめた。日本語が通じるかしら。メイコは英歌詞も歌うは歌うがバイリンガルなわけではない。おもいっきりの日本語英語発音者だ。takeをタケと発音してルカに激怒されるというはこのグループの間では誰もが通る共通の経験値だった。そんな感じで不安に成りつつもおもいきり日本語で喋りかける辺り彼女の図太さが現れているがメイコにその自覚はない。
 路上ダッシュをしていた時には「はやくはやく」とミクに手を引かれルカに押されしまいには「はやくはいれ」「そいやー」とがくぽとカイトに抱えられてメイコの家に押し込まれた彼はすっかりおびえきっていた。うんまぁそりゃあねぇとメイコは後ろでなおも暴れる友人たちを振り返る。
 全員が全員愉快すぎる様相を示している彼らに拉致られたとなればおびえもしよう。認識的にはアタマのオカシい麻薬中毒者にさらわれたのと似たようなものだったろう。「ああ、違うのよ、」何が違うんだと自分でつっこみつつもメイコは少年にコップを持たせる「あいつらちょっと常識通じない所があるから、何かやらかしたんなら私が変わりに謝るわ」「あ、いえ、そんなご丁寧に」
 頭を下げたメイコに恐縮した少年の声はきれいなボーイソプラノだった。
 小節がきいていてなかなかに力強い。あらいい声と感心する。
 っていうか日本語通じた。よかったよかった一安心。
「あー! そうなの、聞いてよめーちゃん!」「ぐええ」「うわ、メイコ凄い声」
 どんと衝撃が背中にぶち当たってメイコは絶息する。ごりっと背中で何かいやなおとがした。そのついでに清涼系のシャンプーの匂いが鼻をくすぐりそれだけで体に悪そうな緑色の髪が視界のはじでふぁさりと舞う。
 ごっきと愉快な音を立てた首をさすりさすり振り向いた。突撃をかましてきた張本人のミクは清涼飲料水に砂糖をぶち込んだような笑みでメイコの首に細い腕を絡ませる。スキンシップのかわいらしい少女なのだ。同じような体勢で姉のような妹に抱きついているのをよくみる。ごりっと言った痛いのはどうやら彼女が首にぶら下げていたウサギのモチーフのペンダントだ。
「危ないじゃないの、子供じゃないんだから気をつけなさいな」
「ん、ごめんごめん」悪びれることもなくミクは笑った「いきおい付いちゃってさ」
「……で?」「あー、うん。カイトさんがあの公園はパフォーマンス禁止してないっていったから路上セッションしてたらねー、お巡りさんに追いかけられたの!」「びっくりしたよな」
 なあと同意するようにがくぽがルカの顔をのぞき込む。照れたルカにぷいと顔を背けられ「ルカ様にふられた」としょげた。するとあわてたようにルカがそれに寄り添う。いつ見てもおもしろいふたりねぇと何だか感心みたいな思いを浮かべながらメイコは「へえ」と頷いた。
 恐らくちょっと音量が大きすぎたか人が集まりすぎたかしたのだろう。
 しかし別に逃げなくても注意くらいで終わったろうに。奇抜な髪色や服装といった外見のせいで何度も経験した職務質問のせいで随分と警察嫌いな四人だった。まぁそれはある意味彼らの自業自得なのだけどと並ぶカラフルな青緑ピンク紫を見やる。
 そりゃあ、そんな頭をしてたらねぇ。
 注意をしにいったら速攻で逃げられたものだから警察官も後ろめたい何かがあると勘違いしたに違いない。
「で?」「『で?』」「それで、何でこの子連れてきたの?」
 しかしそれがなぜこの少年と関係してくるのかしらと改めて彼をみる。
 この近くにある私立中学校だか高校だかの制服に鞄からはみ出たカナル式のイアフォン。ふつうの中学生と言えばふつうの中学生だ。少なくとも髪の色以外はミクやルカがくぽカイトと似合わない。誰かの知り合いかとも思ったが少年の様子からも接点があるようには思えなかった。
「それはねぇ、追いかけられる前に、近くにいたから」「つれてきた?」「そう」
 連れてきたんだよねえとミクは頷いた。
 当然という風にそう言う緑髪に驚きの声を上げたのは青とピンクと紫だった。
「「「……え?」」」「えって言ってるわよちょっと」「えっ」「えっじゃないわよミク、あんたが連れてきたんでしょ?」
 全員が全員彼をらちっていた気がするが率先していたのはどうやらミクだったらしい。ルカが冷ややかな瞳で自分よりも小柄な姉を見やる。
「もしかしてミクちゃん、なんとなくで連れてきたの」「……」
 さっとミクがその青いカラーコンタクトの入った目から視線を逸らした。だめだこの子なんとかしないととカイトがつぶやく。うるさいお前は黙ってろとメイコは思う。
「だ、だって近くにいたしさ! このこ、こんな髪の色してるし、ケーサツにあたしたちに仲間だと思われたらややこしいと思って!」「いや、でも違うんだから、違うって言えば良いじゃん」「わー! カイトさんが味方してくれないっ!」「ミク、ちょっと、考え無しよそれ」「るっ、ルカちゃんまでひどい!」「ミクちゃん、もうちょっと考えてから行動しよう、な?」「がくぽさんに諭されたーっ!」「えっちょっと待ってそれひどくない」
 またぎゃいぎゃいとやりだす四人を余所にメイコは少年に話しかける。お詫びに何かないか、とポケットを探りながら。
「なんか巻き込んじゃってごめんね。家大丈夫? なんならクルマで送らせるから、連絡入れとく?」「あ、はい大丈夫です」「ほんと? あー、そうだお詫びにこれあげるわ。ドリンク代入ってるから、この近くだし暇があったら来てちょうだい」
 それを目撃したカイトが「あーっ!」と大声を上げる。
「メイコそれ俺たちのライブのチケットぉ!」「知ってるわよ! これぐらい自腹でお詫びしなさい!」「今月きついのに!」「ミクちゃんたちの分からも、はい」「えええ! あの箱高いんだよぉ?!」「俺らとばっちりみたいな気がするんだけど」「あんたらも連れてきたんでしょ、同罪」「えー!」


「あんなんでも一応、歌ってるときは格好良い奴らだからさ」


 ぶうぶう文句を言い出すカラフルなやつらを後目にウインクをひとつ。ぼんやりとそれを眺めていた少年が、あわてたようにこっくりと頷いた。



「知って、ます」




**********

だめ人間なこいつらが存外気に入っててどうしようです
メイコ登場

リンこねぇなぁ

拍手[3回]

"大木 梯子" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.