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ぽルカ!
ぽルカ!
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ぱんっぽーん、と
チャイムが鳴って、出た先に居たのは見慣れた桃色のロングヘアだった。
うつむきがちに手の中の包みを気にする様子は、まるで成人型には見えない。
「ルカちゃん? どうしたのー?」
「あ」ば、と顔を上げたルカの表情が一瞬タイムラグを作ったのを認識「カイト、さん」
んんん、とカイトはほほえみを作りながら少し複雑な気分になる。別に良いけどさ、がっかりした顔されるより。
当のルカは持っていた手提げをがさがさやりだし、陶器で出来た保存タッパーを見せた。半透明のふたからは、チョコレートの色が見て取れた。
ケーキか何かか、と目敏くチェックする。マスターもカイトもがくぽも、揃いも揃って甘い物に目がない一家な事をルカは知っているため、時々こうして差し入れを持ち込んでくれるのだ。
発揮できない若干のえこひいきを伴って。
「あの、これ。ケーキを作りましたので、みなさんで召し上がって下さ」
「ちょおっと待て! 今連れてくるから!」
「へ?」
お茶にしょうか
「がくぽがくぽがくぽがくぽ」
「何だ何だ何だ兄者、髪ひっぱるな痛いだろうが」
「早く! 早く来なさいお前!」
「いだだいだだだいだ抜ける抜ける抜ける」
今でテレビを見ながら今にもスリープに入らんとしていたがくぽを引っ張り、ルカの元まで引いていく。どたどたと成人男性二人分の足音が響いて、ご近所さんごめんなさいと内心でカイトは謝罪した。
ぽかんと玄関で待ちぼうけをしていたルカは、がくぽが現れると共に身をぎゅっと固めた。細い肩が怒り、顎を引いて右斜め下を睨みつける格好。
がくぽもがくぽで寝ぼけかけた顔でカイトに思い切り引っ張られた髪を気にしている。
相対しながらも全く視線の交わらない二人に、少しは気まずさを感じても良いのだろうが、カイトはあえて気付かないことにした。むしろ気づいてたまるかと若干やけになっている。
ぐいとがくぽの髪を引っ張った。「いたい」の悲鳴には完璧な無視をかます。
そうしていつだかアカイトにも伝授したにっこりスマイル。
「ほらルカ! がくぽ!」
「……ですわね」
いやだから何だよというつっこみを入れるはずだった彼らのマスターは、胃痛と闘いながら仕事に励んでいた。後々カイトからの報告によりこの時の状況を知った彼が、うわその場唯一のつっこみに成らずに済んで良かった、仕事gjと二十数年間の人生で初めて労働していたことに感謝した事はただの与太に過ぎない。
手を広げてがくぽを指し示し、満足そうに言う兄妹機をどう思ったのか、ルカの対応はひたすらに冷淡。もしも大人の遠慮という物がなかったら「だからなんだってんだ」とでも吐き捨てそうな勢いだ。
だがしかしカイトは全く動じない。伊達にコミュニティ内で最古参を貼っている訳ではない。いろんな開き直りには定評がある。
うろうろと視線をさまよわせるルカの手からトートバックを受け取り、奥を指し示す。
「まぁ取りあえずルカ、上がってってよ」
「え、ちょっと待て兄者、俺何で呼ばれたんだ。ちょっと全然意味が分からないんだが」
「今日風強かったでしょ? 暖かいもん淹れるから。これケーキ? ちょうど良い、おやつにしよう」
「兄者? おい兄者聞いてるか? 聞いてないな?」
「がくぽルカの荷物持ってあげて。俺、皿とか用意してくるから」
「なぁこれ俺怒ってもいいんじゃないか」
ルカから取り上げた鞄をがくぽに押しつけ、二人をほっぽって台所へと舞い戻る。
手早くポットからケトルにお湯を移した。がたたんと慌ただしい音を立ててコンロへおろす。確か先週ワゴンセールになっていた茶葉があったはずだ。アールグレイなら、取りあえずはずれはないはず。
外部端末が暖まるのはよいことではないが、其れでもカイトは温かいお茶を飲むのが好きだった。
それがなんだか正しい形のように感じられるのだ。
AIの端にこびり付いたバグのような違和。
いい加減来客用のティカップを用意するようマスターに提言しようと心の底から考えながら、三人分のマグカップを用意した。ルカの分はマスターのもので代用する。
鼻歌(トマト嫌●の歌)を奏でつつ、戸棚からティポットを取り出した。カイトの片手でも収まらないようなそれは、明らかに一人暮らしには大きすぎるサイズだ。あんたはイギリス人かというマスターへのつっこみは随分前に済ましていた。
ポットからお湯を注ぎ、ティポットを暖める。
「あ、ルカ、紅茶でいいよね」
「……はい、構いません」
一言も喋らないままにリビングへとやってきた二人にそう問いかけた。
ぼそりと応えるルカの視線は相変わらず右斜め下を睨み続けているが、その表情はさっきよりも幾分柔らかい。がくぽの服の端をちょいと摘もうとしているところもポイントが高い。いいなぁオイ、俺だってめーちゃんにそんなことして貰ったこと無いぞ。なにを言ったのか知らんがよくやった弟よ、とカイトは背中に回した手で密かにガッツポーズを作った。
「じゃあこれ切るけど、がくぽフォーク配って」
「ん、わかった」
お気に入りらしい陶器の容器から現れたのは、ごとりと重たそうなガトーショコラ。おお旨そう、と期待に胸を膨らませながら皿に移すと、台所をのぞき込んだがくぽの顔がひくっとひきつった。
まるでトラウマでも引っかかれたかのそうなその顔に首を傾げる。
「どうしたがくぽ」
「あー、いや、なんでもない」
「あ、あのカイトさん、生クリームがあるんですが、トッピングいたしますか?」
「なんでそんなの常備してんのルカ」
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あ、あれぇ……ぽルカ……?
カイメイとぽルカはもう四人で仲良し仲良しなイメージがあるのはいいんですが、どっちかで話を作ろうとするともう片方も出張ってくる罠
大人組が大好きすぎるにも程がある
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