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バレンタイン話
**********
「神威っ!」
だーん、と、机に叩きつけられるようにして陶器の器が置かれた。
置いた張本人は、長い桃色の髪を振り乱し顔を隠している。
怖い。夜叉だ、夜叉。
「チョコです! 食べなさい!」
sweet×bitter×sweet
「……は?」
思わず間抜けな声でそう言ってしまった。
ええと、と時計を確認する。
朝の七時八分。主人に影響され、爛れかけた生活を送っているがくぽにとって、起動しているのが奇跡のような時間だ。実際、ほとんど起き抜けのような状態で、AIも暖まりきっていない。
こんな時間に起きたのは久しぶりだな、と目を擦りモノアイの洗浄を促す。くああと疑似的なあくびが洩れた。
確か昨日はマスターが珍しく出勤をして、朝帰りを通り越して一泊の夜帰りになりそうだと連絡があったのだ。
なら、自分が同居人のカイトを起こしてやらねばならないのか、と面倒くさく思う。
「……神威っ!」
「うぁい!?」
一気に意識が引き戻された。
がくぽをリビングまで引いてきた薄桃色は、相変わらずわなわなと小刻みに震えていた。だんだんとAIが暖まり、記憶がつながり出す。
そう、そうだ、自分は彼女に揺り起こされたのだ。
その際に朝女性の声に起こされるという、ある意味異常な事態にあらぬ事を口走った気がするがそれは忘却領域へ投げ捨てた。
「チョコレート、です」
「お、あ、ああ、うん……」
何で彼女が此処に居るのか、というのはこの際もう気にしないことにした。住宅侵入など彼女にとっては造作もない行動なのだろう。
兎も角、先ほどから再三言われているチョコレートの六文字だ。
おそらく、この陶器の容器の中身のことを指しているのだろう。
擦り硝子の蓋からはうっすらと茶色い影が見える。
彼女はこれを食えと言っているらしい。
「あの、巡音?」
「なにっ!」
「とりあえず、座ったらどうだ?」
「――……っ座るわよ! 座らせていただきます!」
巡音さん敬語キャラ崩れかけてますよ
そんな事がいえる訳も無く、とりあえず何か飲み物でもと入れ替わるように立ち上がり、台所へと向かう。
どうやら先ほどまで座らされていたのはダイニングの机らしいと、移動してから初めて気づいた。いつも履いているスリッパが無い。冷たい木目が足の指を冷やした。
「コーヒーに砂糖、入れるか?」
「……ミルクを」
「あいわかった」
来客用のマグカップなど無いので、青いカイト用のものと紫の自分用のものにインスタントコーヒーを淹れる。
瞬間湯沸かし器から湯気が飛び出る。
冷蔵庫から牛乳を取り出し、紫色のマグカップに牛乳を入れてから間違えたとがくぽは動きを止めた。自分はコーヒーはブラックでのみたい人だ。
「……巡音に飲んでもらうか」
マグカップを持ち、ダイニングに舞い戻る。物音を聞きつけ、机に突っ伏していた薄桃色が跳ね上がりこちらをみた。
とりあえずその前に紫のマグカップを置いてみる。
見事に視線がつられていた。
「とりあえず、飲むとよいよ」
「……ありがとうございます」
「いや」
自分もまた向かいに腰掛け、青いマグカップを呷る。
彼女はぎこちなく紫のマグカップを眺め、壊れものに触れるように両手で持ち上げて一口した。
「あの、神威」
「ん」
「チョコレートケーキ、作ったんです」
「……ケーキ」
ず、と細い指が押しやるように容器をがくぽの方へ移動させる。
指の主はマグカップに手を添えたままうつむいていた。
「知ってますよね、バレンタイン」
「ま、ぁ、一応は」
「食べて下さい」
今、此処で、全部。
蓋をあけると同時に付け足された言葉に、思わずひきつった笑みが漏れた。
容器の中には、がくぽの顔ほどもあるチョコレートのケーキがずっしりと存在感たっぷりに鎮座している。
「巡音、これは……」
「恥ずかしいですから、早く。早く食べなさい。誰かに見られる前に!」
「でも、この量はちょっと、許容範囲が……兄者やマスターと食べてはだめだろうか」
「だめです!」
「えぇ……」
「カイト兄さんや会津さんのために作ったのではありません!」
「は、」
「神威の為に、神威に食べてほしくて……作ったんだから」
「……」
「神威に、……」
其処まで言うと、あう、と言葉がつかえたように黙りこくってしまう。
巡音さん、それは少し反則ではないですか
「……」
深いため息を吐き、言葉にせずに呟いた。
相変わらず薄桃色はうつむいて、今日は一度もあのすゞやかな瞳をみていない。
「……あい、了承した」
既に何等分かされている一切れを取り上げ、口へ含む。
甘い。
甘い上、重い。
重量がある。
生地にチョコレートとココアが混じり、更にチョコレートの固まりと穀物が混ざっている。
これをこの量か、とがくぽは苦笑した。
「美味いな」
「……昨日の夜中から、朝までかけたのですから当然です。手間が違います」
「寝てないのか、大丈夫か?」
「平気です」
「そうか」
「平気です……」
「……出来れば、巡音も手伝ってくれるとうれしい」
がばり、と甘い薄桃色が翻って、初めて澄んだ瞳を見せる。
うれしそうにゆるんでいたその顔が、一瞬にして引き締まった。
「わかりました……仕方が無いから食べてやります」
「ああ、助かる」
作る菓子は甘いのにな、とがくぽは微笑む。
ああ、あまいあまい!
**********
甘いよ!
ツンデルカさんらしきもの
いっそただの情緒不安定という見方もある。
ルカさん視点も書きたいなぁ……
書けるかなぁ……
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UTAU注意
ツンデレテトと喋れないルコの話
設定とかなにそれおいしいの
**********
「君は実にバカだなぁ!」
「……」
耳も口もあるロボットの唄
テトは酷い呆れ顔で、ぼくの隣にふんぞり返った。雨が屋根に打ち当たる音がしている。
公園の片隅に建てられた屋根付きのベンチが大概のぼくらの待ち合わせ場所だった。
「こんなに寒いのに、一時間もボクを待つなんて!」
ぷんぷんとテトは今にも煙を吐き出しそうだ。その様子がおかしくて、ぼくは何だか笑ってしまう。
そうして笑うぼくを見て、テトはますます不機嫌な様子になる。
「なにを笑っている! 君の事だぞ、風邪でも引いたらどうするんだ!」
テトはそういってぼくに指を突きつけた。
小柄なテトから突きつけられる指は丁度銃口のようで、ぼくは降参のポーズを取る。
一体ぼくらは風邪を引くんだろうかと不思議に思ったが、ぼくの倍も生きているようなテトが言うのだからほんとうに違いない。気をつけなくては、と口の端をあげる。
ぼくがテトを待って雨の中、一時間ほど此処で待ちぼうけしていたのが気に入らないらしい。ぼくが傘を持っておらず、濡れて此処まで向かったのがいけなかったようだ。ぼくらの体は防水加工が施されているから、平気だと思ったのだけれど。
まるで小学生のような黄色い傘を伴って現れたテトは、髪を濡らしたぼくを見てきゅっと目をつり上げたのだ。
待ち合わせ場所と言っても、ぼくもテトも時間も日付も指定していないのだから、こうなるのはぼくもほとほと承知していたのになぁ、とぼくを怒鳴りつけるテトを見ながら思う。
初めてあった時は、こんなに怒りっぽいとは思わなかった。もう少し無感情で、機械的だと印象をうけていた。
そうテトに伝えると「UTAU AIは経験によって成長するんだ」と言われた。すると、起動されて間もないぼくは、テトよりもはるかに無感情で機械的なんだろう。そう思うと恐ろしくなって、ぼくは目を細める。
ぼくらが出会ったのは、去年の春のことだ。
マスターに自由時間を言い渡され、されども家でぼうとしている訳にもいかず、仕方なくこの公園のこの場所で時間をつぶしていたぼくに、これまた時間を持て余していたらしいテトが話しかけたのがきっかけだった。
テトは持っていたフランスパンをぼくに千切って渡し、ごくふつうの友人に対するように隣に腰掛けながら、調子はどうだと問いかけてきた。
ぼくらUTAUの外部端末はあまり世に普及していない。
だからその時ぼくは酷く珍しく思い、テトをまじまじと見てしまった。
その頃は酷く機械的にみられたその横顔も、今となっては僅か以上に様々な表情が見えた。
ひとでいう、「ココロをひらいた」という奴なのかもしれない。ぼくが、なのかテトが、なのかは、分からないけれど。
「冷えるな、何処か店に入ろうか」
ぼくをベンチに座らせ、小さなハンドタオルでぼくの髪を拭いていたテトが、不意にそう呟いた。その顔を見上げると、ぴしゃりと濡れたハンドタオルで目元を拭われる。
ぼくらの皮膚は外温センサーと互換していないはずだけど、そう言うテトの顔は少しだけ青ざめていたので、本当なんだと思う。
**********
なにが言いたいのかなんて自分でも分かりません
とりあえずVIPPEROIDたちは個人的に思い入れが強くて好きです
ルコは特に、現行スレにも立ち会ったしなぁ……
畜生、あのとき安価がとれてたら!
テトとテッドはルコに、ルコはリッちゃんにそれぞれ庇護欲みたいなものを感じてたらいい
がくルカのような何か
ルカ様の誕生日にぜんぜん間に合わなかったのでいっそ開き直り
**********
神威がくぽについて考える。
ルカは彼のことを憎からず想っていた。
好きとかそういうのは置いておいて、と自分に言い訳をしながら脳裏に彼を思い浮かべる。
あの何処を見ているか分からないぼうとした目つき。骨張った手指。流れる髪。脳の芯を揺する声。長い体躯をちぢこめるような座り方。朴訥とした立ち振る舞い。
それから、なんというか、あの性格。
例えば、第一印象、初対面のルカに彼が言い放った言葉は
『好きな曲は《よっこらせっくす》です』
だった。いや良い曲だけれども。
朴訥と淡々と、自分のペースをあまり崩さない。
彼のマスターはそれを『病院へ行け』と表現した。
おそらくそれは『神威がくぽ』の特徴ではなく、彼自身の個性と言って変わりない。
『もう少しまともなら』と身内で形容されるのを何度も聞いてきた。
けれども彼のそんな性質を、ルカは好ましいと思うのだ。
堅物の自分にはおそらく辿りつけない――自覚はあるのだ――、その立ち振る舞いが羨ましく感じられていた。
愛を込めて三百八十七円
のだが。
「巡音、ケーキを買いに行こう」
認識を改めようかしら、とルカは悩んでいた。
アカイトは会津の家に泊まり込みで収録があるので帰らない。マスターは珍しく学生時代の友人たちと某夢とネズミの国へ旅立ってしまった。つまり本日、何故か無闇にひろいこの一軒家でルカは一人きり、留守の番を任されてしまったのだ。
風呂からあがって脱衣場から出ると、約三十センチの距離を置いたがくぽが鎮座していた。それだけでも絶句だったが、開口一番飛び出した言葉が「ケーキ」だ。
美声と言って差し支えない声が至って真面目に「ケーキを食べよう」と言うのだ。
『病院へ行け』どころではない。いっそ『病院が来い』だった。
まず何で居る。
そして何故風呂場の前で鎮座している。
とりあえず首に掛かっていたバスタオルを顔に投げつけ、「おお?」と声をあげるその頭に向かって右足を振り抜く。やたらと高い位置にある側頭部をねらったはずだったが、つま先が顎を掠るにとどまった。長身であるのは認識していたが、想定以上だ、とルカは瞬きをする。
「おい巡音、なんだいきなり」
ずれ落ちたバスタオルを持ち上げるその顔に向かって、今度は跳び足刀をたたき込む。ぱし、と小気味の良い音。
ルカの白い御足は、骨張った手に受け止められていた。
「……離して下さい」
「離したら蹴るだろう」
「蹴りません」
「分かった」
手が離され、温い拘束から足が解放される。
がくぽはルカに投げつけられたバスタオルを不思議そうに眺めていた。
「何故、居るのですか」
「アカイトが泊まるから、俺の端末はじゃまなのだそうだ。追い出された。愛宕さんに許可を取ったから、此処で夜を越せ、と」
そう言ってがくぽは、普段アカイトが持たされている家の鍵をルカに手渡す。
淀みのない説明に、言及の余地すら無かった。
実は風呂の前にいた理由は不明のままだったが、ルカはなんかもう忘れていた。本人もとくになにも考えていないだろう。
「そうですか」と頷き、夕食を振る舞ったりしたほうがいいのだろうかと瞬きを繰り返していると、勢い良く手を取られた。ルカははじかれたようにがくぽをみる。
「な、んですか」
「巡音、ケーキだ」
「はぁ?」
「ケーキを買いに行こうではないか」
そのままルカの手を引き、廊下を走り出す。え、なに、ほんとになに、と割りと本気で混乱しながらルカはそれについていった。足のリーチが違うので、ぐいぐいと手が引っ張られる。
一体なんだというのだ。
「神威?! 一体何ですか?!」
「ケーキだ、ケーキ」
玄関にあった靴に足をひっかけ、がくぽが玄関に激突。痛々しい音をたてた鼻を押さえ、立ち止まったのを良いことにルカはその襟首をつかみあげる。
けれども鼻を赤くした彼は飄々とその三文字ばかりを繰り返した。
「ケーキって……こんな時間じゃ、もう何処の店も開いてないわよ」
「……コンビニでいい」
兎も角、行くぞ。
言われ、再度腕を引かれた。あわててサンダルを引っかける。先ほどの激突に学んだのか、今度は割りとゆっくりめなペースだ。
とはいえ、がくぽが二歩で歩く距離をルカは三歩かけなければならないので、ルカにとってはそんなに遅いという早さには感じられない。
向かう先はどうやら本当にコンビニだった。住宅街の外れ、煌々と電灯が光っている。
手を引いたままコンビニへ入り、ルカに戸惑う暇も与えずずんずんと奥のスイーツコーナーへ。
「俺はこれを食う」ちょん、とチョコムースのケーキを指さした「巡音はなにを食べる。好きなのを選ぶとよいよ」
「……? どういうこと?」
「誕生日、祝えなかったからな」
ところ狭しと並ぶスイーツに向けていた視線をガッとがくぽに移す。口の両端を緩やかに曲げ、穏やかに笑んでいた。
握られたままの手を離してほしい、とルカは口を開閉する。
確かに先月の末日は自分の製品の発売日だった。が、自身が起動されたのはもっとあとのことで、と言い訳じみた言葉が脳内で駆け巡る。
それらをそのまま口に出そうとして――飲み込んだ。
ほほえむがくぽから視線を逃した。
そして、イチゴの乗ったチーズケーキを指さす。
**********
病院が来いながくぽと、先生、タグロックもうそこでいいですなルカ
我が家のがくルカはこんな感じか、もっとツンデレか
ツンデレ系も書いてみたいなぁ
がくぽのキャラ固め
会話だけ
**********
「がくぽって」
「ん?」
「『拙者』って言わないよな」
「え……うん、言わないけど」
世の中は良く出来ている
「神威がくぽが来たって聞いて、俺、リアル侍! ってちょっとわくわくしてたんだけど」
「あー、わたしもー」
『初めまして、神威がくぽだ。鏡音リンとレン……で良いな? 宜しく』
『おー、宜しくー』
『宜しくねー。お茶飲むー? ジュースもあるよ。なっちゃん』
『お、』
『(来るぞ!)』
『(来るよ、生《かたじけない》!)』
『『(てーへんだー、てーへんだー、てーへんだったらてーへんだー!)』』
『じゃあ、なっちゃんを貰おうかな』
「そうとうがっかりしたよね」
「なー」
「え、あ、ああ……それは悪い事したな」
「うん……結構凄く、がっかりしたよ」
「しかもがくぽ正規衣装、着ないしな……」
「今もジャージだもんね……」
「俺らイメージ商売なんだからさぁ……」
「別に良いけどさぁ……」
「しっ、仕方無かろうが、俺の正規衣装やたらと暑いんだぞあれ」
「でもねぇ?」
「なぁ?」
「……った、確かに、兄者が割と普通にコートとか全然着てないと知ったときのしょんぼり感は酷かったけど」
「あー、カイト兄?」
「いやでもカイト兄は結構しっかりしてるよ。家の外ではちゃんと着てるでしょ、コートとマフラー」
「あれは暑くないものなのか」
「まぁおれら外気温センサーと互換して無いから」
「あーそっか、がくぽん新型だもんね。端末作ってる会社も違うし。暑い寒いわかるんだ、いいなー」
「これは善し悪しだぞ」
「「ふーん」」
「基本外気温に対する反応なぞ不快感くらいしかあるまいよ」
「って言ってもさぁ、だからってそんな普通のジャージ……」
「しかも背中にドMって……」
「これは会津の趣味だから俺は知らん」
「ドMなんだ……」
「がくぽん髪もあんまり長くないよね」
「髪?」
「ほら、端末によってはミク姉もかくやってくらい長かったりするじゃん」
「あー、あれは個体差……というかぶっちゃけ各のマスターの趣味で適当に注文出来るようになってて。俺はデフォルトより少し短めらしい」
「中途半端な長さだよな。もみあげも妙な長さだし」
「そういう文句は会津に言ってくれ」
「いや別に文句とかは無いけどさ」
「いっそおとなのラジオのがくぽさんくらい短くすれば良かったのにね!」
「あの方は正規衣装の時一体髪をどうしておるのか非常に気になるな……」
「おれと同じくらいの長さだもんな」
「後さー、この前がくぽんの曲聴いたんだけどさー」
「はぁ」
「がくこちゃんって居るの?」
「……少なくとも我が家には居らぬが」
「うおおがくこボイス! がくこボイスががくぽから発せられてる現実!」
「ギャップが怖い! ギャップ怖いよがくぽん!」
「仕事は選ぶ物ではなく、受けるものだと、兄者が……」
「分かった、分かったから止めようかがくぽん」
「リン殿……」
「なんでがくこ声だとテンプレな話し方になるの? 怖いよ」
「あっ! ちゃんと動画みたら結構髪長かった!」
「本当だ! ごめんなさい!!」
「鏡音兄妹とがくぽん、仲良いよねー」
「でかいのと小さいのがころころしてると癒されるわねぇ」
**********
最後は兄さんと姉さん
我が家のがくぽはこんな感じ
ちょっと古風のしゃべり方程度
一人称は俺
髪の長さは背中半ばちょい上くらい?
会津さん宅にいます
会話だけ
**********
「がくぽって」
「ん?」
「『拙者』って言わないよな」
「え……うん、言わないけど」
世の中は良く出来ている
「神威がくぽが来たって聞いて、俺、リアル侍! ってちょっとわくわくしてたんだけど」
「あー、わたしもー」
『初めまして、神威がくぽだ。鏡音リンとレン……で良いな? 宜しく』
『おー、宜しくー』
『宜しくねー。お茶飲むー? ジュースもあるよ。なっちゃん』
『お、』
『(来るぞ!)』
『(来るよ、生《かたじけない》!)』
『『(てーへんだー、てーへんだー、てーへんだったらてーへんだー!)』』
『じゃあ、なっちゃんを貰おうかな』
「そうとうがっかりしたよね」
「なー」
「え、あ、ああ……それは悪い事したな」
「うん……結構凄く、がっかりしたよ」
「しかもがくぽ正規衣装、着ないしな……」
「今もジャージだもんね……」
「俺らイメージ商売なんだからさぁ……」
「別に良いけどさぁ……」
「しっ、仕方無かろうが、俺の正規衣装やたらと暑いんだぞあれ」
「でもねぇ?」
「なぁ?」
「……った、確かに、兄者が割と普通にコートとか全然着てないと知ったときのしょんぼり感は酷かったけど」
「あー、カイト兄?」
「いやでもカイト兄は結構しっかりしてるよ。家の外ではちゃんと着てるでしょ、コートとマフラー」
「あれは暑くないものなのか」
「まぁおれら外気温センサーと互換して無いから」
「あーそっか、がくぽん新型だもんね。端末作ってる会社も違うし。暑い寒いわかるんだ、いいなー」
「これは善し悪しだぞ」
「「ふーん」」
「基本外気温に対する反応なぞ不快感くらいしかあるまいよ」
「って言ってもさぁ、だからってそんな普通のジャージ……」
「しかも背中にドMって……」
「これは会津の趣味だから俺は知らん」
「ドMなんだ……」
「がくぽん髪もあんまり長くないよね」
「髪?」
「ほら、端末によってはミク姉もかくやってくらい長かったりするじゃん」
「あー、あれは個体差……というかぶっちゃけ各のマスターの趣味で適当に注文出来るようになってて。俺はデフォルトより少し短めらしい」
「中途半端な長さだよな。もみあげも妙な長さだし」
「そういう文句は会津に言ってくれ」
「いや別に文句とかは無いけどさ」
「いっそおとなのラジオのがくぽさんくらい短くすれば良かったのにね!」
「あの方は正規衣装の時一体髪をどうしておるのか非常に気になるな……」
「おれと同じくらいの長さだもんな」
「後さー、この前がくぽんの曲聴いたんだけどさー」
「はぁ」
「がくこちゃんって居るの?」
「……少なくとも我が家には居らぬが」
「うおおがくこボイス! がくこボイスががくぽから発せられてる現実!」
「ギャップが怖い! ギャップ怖いよがくぽん!」
「仕事は選ぶ物ではなく、受けるものだと、兄者が……」
「分かった、分かったから止めようかがくぽん」
「リン殿……」
「なんでがくこ声だとテンプレな話し方になるの? 怖いよ」
「あっ! ちゃんと動画みたら結構髪長かった!」
「本当だ! ごめんなさい!!」
「鏡音兄妹とがくぽん、仲良いよねー」
「でかいのと小さいのがころころしてると癒されるわねぇ」
**********
最後は兄さんと姉さん
我が家のがくぽはこんな感じ
ちょっと古風のしゃべり方程度
一人称は俺
髪の長さは背中半ばちょい上くらい?
会津さん宅にいます
お題より
**********
べしゃりと布団に沈みこむ。自室としてあてがわれたファイルの内部は、けれどひどく質素だ。
寝て起きるためだけのようなファイル。カイトはPC内での生活を大抵『リビング』で過ごすようにしていた。
入れ替わり立ち替わり、大体いつでも家族がいるその部屋。
もしかしたら、自分はひとりが嫌いなんだろうか、とカイトはもぞもぞ布団に潜り込みながら思う。コートを脱ぎ散らし床へ落とし、靴ごと靴下を脱いで布団へつっこむ。うつろな温さが出迎えた。
PC内部の時計を確認すると、まだまだ宵の口といったところだった。
「……――んがー」
不意に先ほどまで怒鳴り合っていた声帯プログラムが自動メンテナンスを始める。
不調を来してしまうほど怒鳴るなんて、プロ意識に欠けるなぁとセルフで嘆息。
(『だから、この音はもうちょっと高くって!』『マスター! 俺はまだKAIKOにはなりたくありません!』『頑張れよ! おまえならやれるよやれ!』『あああああ!』)
「……ぬぁあ」
ばふ、と枕に頭を押しつける。
『♪♪♪』
「……ん?」
不意に電子音が鳴り響いた。
カイトは頭をもたげ、エーテル漂う宙に指を這わせ電子音の元――仮装メーラの着信音だ――を表示させる。
「ルカ?」
見慣れたアドレスからメールが届いていた。
展開してみるが、本文は空白。ミスだろうか、と首を傾げ、添付されているMP3に気がついた。
再生
《カイト兄さん、お疲れさまです。リビングで皆でお酒を飲んでますので、お手透きでしたらどうぞ》
いつもより僅かに上擦った妹の声。
そのバックには聞き慣れた声もいくつか入っていた。
カイトがそれを聞き終わったと同時に、また鳴り出す電子音。
『♪♪♪』
《兄貴ー! アイスあるぞー!》
『♪♪♪』
《カーイトーさん! あっそびまっしょー!》
『♪♪♪』
《良い泡盛があるぞ。この前手前が飲みたいと言っていた焼酎、早く来ないと飲んでしまうからな》
『♪♪♪』
《かーくん、早く来なさい!》
「……ほんとに全く、うちの大人達はどうしてこう、」
ほころぶ口元を押さえて、カイトはつぶやく。
「疲れてる場合じゃねぇや」
**********
03 真夜中のラブコール
家族からの、ということで
まさかのミクオ
がくぽよりルカより早く、まさかのミクオ
元ネタは某Pの『心壊サミット』
しんかいでいいのかな
少々気持ち悪かったり初音ズの性格が悪かったり極悪だったりします
注意
**********
「初音くん、初音くん」
「なんですかマスタ」
「君に会わせたいひとがいるんだ」
ぼくとわたし狂想曲
「初音ミクオ」
「うん?」
呼び出された部屋に居たのは、私と同じ顔だった。私よりも幾分高い位置に視点を持った緑の目が此方を見据えている。
「初音、ミクオ」
「だからなんだって」
そう呼ばれる初音種派生の亜種が居ることは私も知っていたし、彼らが歌う歌も――あまり多くはないが――聞いたことがあった。
が、実際現実でこうして端末通しであうのは始めてた。
亜種はまず、外部端末が存在しない。
PC内部での外見ならば(違法の穴を抜けたような)パッチを使えば簡単にできる。会津さん家のアカイトもその部類だ。
あの赤い彼の端末は、私のマスターが、会社で開発している人命救助用のアンドロイドを改造して作ったもの。
そうでもしないと亜種の外部端末は手に入らないのだ。
「頼まれてね、初音ミクのボディを改造したんだ。君と比較したらどんなもんかと思ってな」
「……はぁ」
「ミクオ、これがうちの初音くんだ。まぁ、君の姉みたいなものだね」
「どうぞ宜しく、ネエサン」
「……はぁ」
彼はにっこりと笑って私に右手を差し出した。張り付いたような笑み。私たちにとっては作った表情も自然に出た表情も何も変わらない。それなのに違和を感じた。
電気系統が上手くいっていないのか、プログラム自体が不得意なのかは解らない。
「よろしく」
私と同じ顔に張り付いた笑顔。
それにつられて私も笑みを作っているのでお互い様なのだが、なんだか酷く気に入らない。
聞くところによると、今日中に彼のマスターが彼を迎えにくるらしい。
これ以上は顔をつっきあわずにすむのかと、とりあえず一安心する。
暫く歓談にふけっていると(やはり終始彼は張り付いた笑みを浮かべていた)、不意にマスターが立ち上がった。
「そろそろ迎えがくるらしい」と彼に伝え、部屋を出ていく。
「あ、そうだ」ひょい、と頭だけをドアから出した「私と彼女は少し作業をしなくてはならないから、……そうだな、一時間後にミクオ、来たまえ。初音くん、ミクオを収録室まで案内できるな」
「……はい、もちろんです」
「うん。それじゃあ、それまで親睦を深めて置きなさい」
不遜な態度に似合わない丁寧な手つきでマスターが扉を閉めると、客室として使われているただっ広い部屋に私と彼は二人きりになってしまった。
あの出来損ないの営業スマイルと一時間以上顔を突き合わせるのかとと内心嫌気が刺す。それでもどうにか笑顔を繕い、彼を振り返った。
彼はまだ笑っていた。
しかし先ほどまでの愛想笑いの退化系のような作り笑いでは無い。口の端を歪め、片目を眇めたいびつな笑み。
緑の瞳が私を写す。
「俺は、初音ミクが嫌いだ」
細いような安定感の無い声音が私を突き刺そうとしていた。
「俺はあんたの成り損ないだから、あんたみたいに歌えない。あんたも、その声であのマスターに媚びてるんだろ?」
ますたぁ、ぅたわせてくださぃ、ってな。
けらけらけらと彼は笑う。
その声はやはり安定感が無い。元は初音種独特のソプラノだったのだろう。
「笑っちゃうよ、姉だってさ! 完全版の間違いじゃないの」
「……」
こいつ、は
「……なぁ、おい、なんとか言えよ」
「……」
「おいってば」
なんて、
「……」
「っ無視してんじゃねぇよっ!」
が、とAIが揺れる。
重たい音がして、一瞬世界が途切れた。すぐに復旧する。
がりがりと処理を進める音。
彼は私の肩に両手を置いて背中から電灯の光を浴びていた。
要するに、馬乗りになっている。
「聞いてんのか、クソ、この売女!」
ぎぎり、奇妙な音がする。視界が警告音で染まった。
左腕領域が関知できません。
ごぎりと生々しい音をたてて、彼の手の中に私の細い腕が収まる。彼は一瞬目を見開き、口を悲鳴の形に開いてから、閉じた。
「……っ」
立ち上がり、走りだそうとする。
押さえつけるものがなくなった私は左腕の無いまま起きあがってその背中を見た。
ああ、こいつは、なんて
なんて愛しい愚か者だ
「い゛っ!」
立ち上がり走りよりその背中を踏みつぶす。背骨にあたる器官が足の下でごりごりと鳴った。
彼は信じられないという顔をして私を見上げている。視界は相変わらず警告音。
「っにすんだよ! 足っ、どけっ」
「……うるさい」
かかとで思い切り床に押しつける。
毛足の短い絨毯に彼の頬がすり付けられた。
「あなた、私が好きでしょ」
**********
初音さんドS!
なにがあったおまえ
ミクオくんがもいだ腕にS心を制御するプログラムが組み込まれてたんだよたぶん
ミクオくんは猫っかぶりのツンデレです
本当ならうでもぎの後デレる予定でしたが初音さんが踏みつぶしてしまいました
べつに彼はレギュラーになる予定はなし
やたらあっまい
**********
ディスプレイから見えるのは、無感情に紙面へ目を落とす横顔。
時々隠す気もないような欠伸を洩らしては、悪びれもせずに私の方へ笑ってみせる。
不意に脳核が焼け付くような感覚を覚えた。
エラー、エラー。
警告音は鳴らない。
ひっぱりビラブト
「マスタ」
「何だね初音くん」
「マスタ」
「……呼んでみただけっ♪ うふふっ♪ という奴か?」
「マスタ、怒りますよ」
「君はいつからそんなに冷静に対応するようになったんだい……買ったばかりの頃はまだ普通の十六歳JKと言わんばかりだったのに……うちの部下のようだ」
嘆かわしいねまったくとマスターは首を振る。
「マスタ、部下の方にもそんな態度なんですか」と問いただしたかったが、面倒なので止めた。
「マスタ、マスタ、聞きたいことがあるんです」
「ふむ、なんだい。言ってごらん!」
「……マスタにとって、私はどんな存在ですか。ただの歌うアプリケイションですか」
私の言葉に胸を張り、尊大な態度で両手を広げる。
後ろ暗いところなど何一つ無いような様子と、つり上がった口角が、どこまでもこの人らしい。
「何を聞くのかと思ったら、そんなことかい、我が愛娘」
「……マスタは、私がただのソフトウェアだと、理解していますか?」
「当たり前だろう! 君がアプリだソフトだという程度で、……私の愛の包容力を嘗めているんではないかね初音くん。『そんなことは関係ないね!』」
書類がデスクに落とされ、私の覗いているデスクトップに指が延びてきた。柔らかな曲線をなぞる。
おそらくその指は私の頬を撫でているつもりなのだろう。
平面に変換されたその向こうに触れるなど不可能と、解っているはずの愚かしさを恥じる様子も無くマスターは笑っていた。
「私は君のその声に惚れ込んだのだよ。今じゃ自慢の娘だ」
「……髪が長かったからじゃないんですか」
「それは一要因だよ。まぁ、背中を押す最後の材料ではあったがね」
ああ、この人はいつも。
いつもいつもこうで、この調子で。
私の言いたいことをすべてかっ浚っていってしまう。
だから今日は負けない。
言ってやるのだ。
「……娘、ですか」
「うん? そこに食いつくか」
「お父さんなんて、私は絶対に呼びませんから、マスタ」
「ええっ! なんでだい?!」
絶対に呼んでたまるものか!
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恋人に格上げ希望
こんなしゃべり方ですがミクさんマスターは三十路前です。二十代後半くらい。
ミクのことを溺愛するあまりなんかもう親父気分。いつか『おまえなんぞに娘をやれるか!』をやりたい。