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お題より
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べしゃりと布団に沈みこむ。自室としてあてがわれたファイルの内部は、けれどひどく質素だ。
寝て起きるためだけのようなファイル。カイトはPC内での生活を大抵『リビング』で過ごすようにしていた。
入れ替わり立ち替わり、大体いつでも家族がいるその部屋。
もしかしたら、自分はひとりが嫌いなんだろうか、とカイトはもぞもぞ布団に潜り込みながら思う。コートを脱ぎ散らし床へ落とし、靴ごと靴下を脱いで布団へつっこむ。うつろな温さが出迎えた。
PC内部の時計を確認すると、まだまだ宵の口といったところだった。
「……――んがー」
不意に先ほどまで怒鳴り合っていた声帯プログラムが自動メンテナンスを始める。
不調を来してしまうほど怒鳴るなんて、プロ意識に欠けるなぁとセルフで嘆息。
(『だから、この音はもうちょっと高くって!』『マスター! 俺はまだKAIKOにはなりたくありません!』『頑張れよ! おまえならやれるよやれ!』『あああああ!』)
「……ぬぁあ」
ばふ、と枕に頭を押しつける。
『♪♪♪』
「……ん?」
不意に電子音が鳴り響いた。
カイトは頭をもたげ、エーテル漂う宙に指を這わせ電子音の元――仮装メーラの着信音だ――を表示させる。
「ルカ?」
見慣れたアドレスからメールが届いていた。
展開してみるが、本文は空白。ミスだろうか、と首を傾げ、添付されているMP3に気がついた。
再生
《カイト兄さん、お疲れさまです。リビングで皆でお酒を飲んでますので、お手透きでしたらどうぞ》
いつもより僅かに上擦った妹の声。
そのバックには聞き慣れた声もいくつか入っていた。
カイトがそれを聞き終わったと同時に、また鳴り出す電子音。
『♪♪♪』
《兄貴ー! アイスあるぞー!》
『♪♪♪』
《カーイトーさん! あっそびまっしょー!》
『♪♪♪』
《良い泡盛があるぞ。この前手前が飲みたいと言っていた焼酎、早く来ないと飲んでしまうからな》
『♪♪♪』
《かーくん、早く来なさい!》
「……ほんとに全く、うちの大人達はどうしてこう、」
ほころぶ口元を押さえて、カイトはつぶやく。
「疲れてる場合じゃねぇや」
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03 真夜中のラブコール
家族からの、ということで
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