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初めて聞いたサイハテがりっちゃんのサイハテで、一番好きなサイハテもりっちゃんのサイハテです
あのウィスパーボイスが好きすぎる



というわけでサイハテss
マスターさんに亡くなっていただきました


どうでもいいけどりっちゃんは旧公式衣装のほうが好きです
喪服っぽさが
ほんとにどうでもいいけど


**********



 そちらはどんな所ですか。
 あたしはどうやら無機物なので向こうへはいけないので、手紙とか書いて教えて下さい。

 ばかなことばかりやっていたマスターですが、手紙くらいなら書けるよね?







  明日への勘違い






 抜けるような晴天の空は憎たらしいほどに綺麗で、かねてから喪服みたいだ喪服みたいだとマスターに言われ続けていたこの服が本当に喪服になるなんて思ってなかったなぁとあたしは考えていた。
 斎場は兎も角、火葬場の中までロボットを入れることは出来ないらしい。新しいマスターはスタッフの人を相手に随分粘ってくれたけれど、なんだかそれがより一層悲しくなって、待っているからと外にいることにした。
 たくさんの人が居るところよりも、外の方がよっぽど気が楽だ。マスターも何時だかそう言っていた。あれは確か、マスターのお母さんが死んだとき。

 親父が生きてて良かった、俺が喪主をしないですんだ。

 そうやって笑って、やっぱり外で待っていた私の隣に腰を下ろして、やっと安心したように泣き出したすマスターは子供みたいで。その内に抱きついてきたのでロリコンと言ってやるとちげぇよショタコンだよと泣き笑いで言われた。

 マスター、お母さんと同じ所へはいけましたか?










「りっちゃん」



 聞き慣れた声が後ろからかかった。振り向くと居るのは、バカみたいに大きなロボット。
 近くに住んでいる欲音ルコだった。

 あたしのことをりっちゃんりっちゃんと呼んで弟、もしくは妹扱いする彼もしくは彼女は、なんでもないようにいつも通りに笑って手を振って見せた。
 がさがさと植え込みを難なく乗り越え、私の座るベンチに腰掛ける。
 歌うときはいつも女性の声の彼女もしくは彼は、どうやら会話は男性の声でするらしい。大分ややこしいけれど、九割男なんだから当然といえば当然かもしれない。
 あたしは地声から変わらないけど。


「りっちゃん、行くあてある?」

「え?」

「なんなら家においでよってマスターが言ってたからさ。それ良いに来たんだお」

「……新しいマスター、出来たから。ありがとうって言っといて」

「へえ? ご家族?」

「ますたーの……恋人予定の、ともだち」


 そう言うと、へえ、とルコは可笑しそうに笑った。
 おいて行かれたもの同士、仲良くしようねとロボットのあたしに笑いかけたあのひとを思い出す。
 DTMは素人らしいけれど、絶対音感があると生前マスターが自分のことでもないのに誇らしげに言っていたから、マスターよりも良いマスターになってくれそうだ。
 生前マスターがあんなにも慕っていた彼女は、マスターの為に泣いてくれて、あたしのために笑ってくれた。
 いい人だ。

 ほんとうにいいひとだ。



 あーあ、マスター、折角両想いだったのに、キスどころか手も繋ぐ前に死んじゃって、告白さえ出来なかった。だからさっさと告っちゃえって言ってたのに。
 今年のクリスマスこそは祝ってやるを歌ってやらずに済むと、あたしも安心してたのに。


 安価でどんなメールを送ってもさらりとかわすような、クオリティが高い上に美人な恋人なんてマスターには勿体なすぎたのかもね。



 どっちにしろ、祝ってやるはもう歌えないけれど。



 マスターの葬儀に出る前に、VIPの書き込み欄に残ったクッキーを使ってコテ雑に書き込んできた。クソコテをやっていたマスターの代わりに『彼女出来たからVIP卒業するわ』と草を生やすと、沢山の『死ね』だのの恨み言が安価をつけて送られてきた。
 もう死んでるよなんて言えるはずもなかった。




「ふーん」



 うつむいた私をどう想ったのか知らないが、ルコは曖昧に笑った。
 かすかに珈琲の匂いがする。



「俺、ロボットだからさ、死ぬこととか、そういうの、あんまり良く分かんないんだけど」



 ぐしゃ、と帽子をよけるようにして頭をなでられる。
 九割男の、大きくて骨っぽい乱暴な、でも一割女の柔らかい手のひら。



「多分泣けるなら、そういう機能があるならさ、泣いていいんだと思うよ?」



 ぐしゃりぐしゃりと遠慮もなくあたしの髪をかき混ぜる。
 あんまり乱暴なその手つきに涙がこぼれそうになったけれど、必死で其れをのみくだした。
 空を見上げると突き抜けたみたいに青い空に、微かな煙が昇っていくところで。
 マスターの体を燃やして出来た煙が雲になっていく。馬鹿の象徴みたいだったマスターが『ちょっと酸性雨ふるぼっこにしてきてやんよ』とでも笑っているような気がした。


 あたしの隣でおんなじように空を見上げるルコの片目がやたらと綺麗に空を写していて、ああきれいだと素直に思った。

 マスターの姿が赤く色づいて駆けめぐっていく。




 無意味に夜中に全裸で走り回るマスター。
 
 なんか急にもやしを買い込んでそれをうpするマスター。

 自殺実況のスレに本気でつられて必死になるマスター。

 安価で二階から飛んで骨折したマスター。




 ……なんか涙が引っ込んできた。





 白黒だった世界にぽたんと落ちた変な色のようだったマスターへ。
 あたしはどうやらあなたが初恋でしたが、それを認めるのはなんだか悔しいです。
 いつだかまたあえたら、全然悲しみに酔えなかったって文句を言ってやろうと思っているので、覚悟しておいて下さい。



 そう思っていれば、まだなんとか涙をやり過ごせそうな気がした。







**********

たおやかな恋でしたー  は何処行った。
もう知らん

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