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小話
ルカとミク 現代パロ
いろいろとただれてるので、注意注意


**********


 どんなに辛くても私たちは泣かないし、暴れないし、弱音は吐かないし、正しく笑ったままで居る。
 善良で、健全で何一つ間違ったことはしていない。
 

 だから、それなのに。


 なんだか頭の奥がぼんやりと重いのは、合成樹脂が染み込んでいるからだ。







  プラスティック人間の行く末とその頭部








「結局死ぬしか解決法はないのよ」


 ルカはそんな風に言う。
 冷たくてぼんやりとした瞳とざらつきのない偽物みたいな白い肌。艶やかな髪は腰まで伸びていて、神様が手ずから作り上げたような肢体を持つ彼女は、だから美しかった。こんな一都市の高校に埋もれているのがひどく不自然なくらいに。
 しかし私は知っている。
 彼女がこんな場所で埋もれている理由を。
 そうでなければ彼女は私なんて触れられもしない世界へ選ばれていって当然なのだ。それなのにそうならないのは、すべて彼女のその性格が理由。

 ひどく鋭利で何者も受け入れようとしないその思考。


「そうすればみんな解決する。憎たらしいことにそういうことになってる。そうでしょ? ミク」

「私には、」


 そんなルカと対峙する私は、唯一彼女に対抗しうると思っている自分の声を耳朶に含ませながら、言う。
 ゆるんだように作る笑顔。重力への抵抗をあきらめたような笑顔。どこかの誰かの笑顔をペーストしてきたようなそれを、ルカは鬱陶しそうに見やった。そんな表情をするために生まれてきたのだとでも言うようだね。


「よく、わからないや」


 思考放棄。

 それがこの場で一等全うなソート。
 死や命なんて物を深く考える意味はない。そういった思考はそれだけで乱す。何を? 無心を。
 健康でまっとうな思考を私たちは続けなくてはならない。
 それなのにルカときたら、なんだ。


「……帰る」

「うん、じゃあ一緒に帰ろうか。もうすぐ暗くなるし、一人で帰ると危ないよ」

「いらない」


 すぱりと言われた言葉に、思わずまなじりが垂れる。
 あんたなんかいらない。そうやってルカは世界を切り離して捨てていく。そうしていつか自分だけのかけらになってぱっと消えてしまいたいのだろう。
 けれど私は捨てられないし、ほんとの事を言うとルカは一つだって世界を切り捨てられていない。だからルカは消えないし、私に向かって冷たく言い放つ。
 リノリウムはオレンジ色を乗せている。
 窓の外を悠々カラスが飛んでいった。

 あぁ、今日も良い日だった。

 当てられた数学の問題は昨日予習した箇所だったし、休み時間にカイト君からお菓子を分けてもらえた。行きの電車も思ったより混んでいなかったし、いつも見かける中の良さそうな二人組も元気そうだった。いつもの通りグミを居眠りから起こすとお礼を言ってくれたし、お弁当には好きなおかずがあった。部活でもがくぽ先輩からほめてもらえたし、その放課後はルカとおしゃべりが出来た。そういえば今日はいとこの姉妹が遊びに来るって母さん言ってた。

 あぁなんてすばらしき毎日。そんな風に思わなくては成らない。


 それが私たちの生きていく上での義務で、そうでなければいけないのだ。


 ルカはそれがちっとも分かっていない。
 彼女は窓から見下ろした景色を美しいと思うことすら罪悪だと思うのかもしれないね。


「……ねーえルカちゃん」

「何」


 まだ居たの、と私から一切視線を動かしていなかったくせにルカはそう言う。
 いたよ、と笑うとやっぱり顔を歪めた。


「屋上行ってさ、飛んできなよ」

「……は?」

「きっといい眺めだよ。私ね、ルカちゃんにきれいな景色、見て貰いたいんだ」



 これはまっとうなしこう。








**********

『プラスチック人間の埋められた頭』 とか聞きながら
けだるげなあの雰囲気が好きです


けどこれはもう何がなんだか

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