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上の続きです
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無言のままエディターは閉じられ、そのままそのデータは消されてしまった。
がくぽはその光景を見ずに自らのフォルダへ帰って行ったし、消去を終えた所有主はさっさとパソコンの電源を切ってしまう。
その場に残されたルカは妙な虚脱感を抱えて暗くなったディスプレイを見上げた。
重ならない声 2
もしかしたら、何となく言いたいことが分かるだなんて、ルカの思いこみだったのかもしれない。
いつも浮かべていた柔らかな笑みの裏には、どんな感情が隠れていたのだろう。なぜ自分は其れを読みとれなかったのだろう。音の連なったばかりの声。一体何を言わんとしていたのか。
『……分からない、です』
VOCALOIDに泣く機能は備わっていない。泣いたような声を出すことは出来ても、PC内で与えられただけの外形が涙を出すことはない。ただ歌声の表情付けの為に搭載された感情だけがぐるぐると渦を描く。
理解できないことへの不満や、一度与えられた歌を取り上げられた喪失感。
ルカが声をふるわせた理由は、言ってしまえばそんな物なのかもしれない。
それからしばらく、
『……』
所有主がエディターを開くこともなく。
がくぽがデータを片手にフォルダに現れることもなく、ルカは一人で過ごしていた。
『……暇ですね』
これまではそれが普通だった。所有主は曲作りの方に集中しがちで、ルカに構うことは少ない。
必然的にルカは一人で過ごしていた。なのでそれに退屈を覚えるなどと言うことは、なかったはずだ。
がくぽに握られた右手を見て、その手で掴まれた腕をなでる。
もうさすがに痛みはない。
<ルカ>
所有主から声がかかったのは、そんな時だった。
『マスター』
<長らく放置しててごめんな>
『いえ……』
自分が呼ばれたからにはがくぽも呼ばれているのだろう。
そう思って辺りを見回すが、広がったピアノロールに例の紫色は見られない。
『あの、マスター、がくぽは』
<呼んでない>
『そ、……そうですか』
ぴしゃりと言われた言葉がまるで拒絶のように感じられた。
所有主はさくさくとピアノロールにノートを並べていく。確かめに再生しようと言う様子もない。
ルカはそれをしばらく眺めていたが、一つ息を吐いてディスプレイを見上げた。
今聞かなくては、もうずっと聞けない気がする。あらゆる根本の話だ。
『前々から聞きたかったのですが、質問しても宜しいでしょうか?』
<うん? いいよ>
『なぜ、わたしはがくぽの言葉が理解できないのですか?』
同じVOCALOIDなのに。
同じエンジンを積んでいるのに。
同じものの、同じ一つのはずなのに。
がくぽの思いが、分かりたいのに。
<何でって>
その問いに、画面の向こうで所有主が瞬きをした。ように思われた。
予想もしていなかったと言わんばかりの様相に、もう一度問いかけようとする。
『何で、』
<発音記号が違うんだから当たり前だろ>
『え?』
<英語ライブラリで十分だと思ってたからなぁ…でもさすがに英語ライブラリで日本語の曲は、そりゃ無理があるよな>
『え?』
<英語ライブラリ縛りにも未練はあったんだけどさ。うん、俺もこの曲、好きだし>
かち、とマウスをクリックする音が聞こえた。
ルカの口から声が飛び出す。
その声を聞き、所有主は満足げにうなづいた。
<巡音ルカ日本語ライブラリ、正常に発声。そんじゃあ、作り直したの歌ってもらうから、>
がくぽ、連れてきて。
「……――はいっ!」
がくぽと同じ音を吐き出して、ルカはほほえんだ。
二つの言葉で生きる僕らに、祝福の架け橋を
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英語ライブラリと日本語ライブラリって発音記号違うらしいぜ!と聞いて駆けめぐったのがこの曲で、なんかこんなん出来てました
設定とかがえらいカオスですが、取りあえずこんなものでもぽルカと言い張ってみます
ちなみにがくぽのせりふは書いてるときには考えてましたが後書きを書く今となっては何か全部忘れました
そしてよく考えたらがくぽがある意味一言もしゃべっていないという衝撃の事実に今気づきました
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