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がくルカのような何か
ルカ様の誕生日にぜんぜん間に合わなかったのでいっそ開き直り
**********
神威がくぽについて考える。
ルカは彼のことを憎からず想っていた。
好きとかそういうのは置いておいて、と自分に言い訳をしながら脳裏に彼を思い浮かべる。
あの何処を見ているか分からないぼうとした目つき。骨張った手指。流れる髪。脳の芯を揺する声。長い体躯をちぢこめるような座り方。朴訥とした立ち振る舞い。
それから、なんというか、あの性格。
例えば、第一印象、初対面のルカに彼が言い放った言葉は
『好きな曲は《よっこらせっくす》です』
だった。いや良い曲だけれども。
朴訥と淡々と、自分のペースをあまり崩さない。
彼のマスターはそれを『病院へ行け』と表現した。
おそらくそれは『神威がくぽ』の特徴ではなく、彼自身の個性と言って変わりない。
『もう少しまともなら』と身内で形容されるのを何度も聞いてきた。
けれども彼のそんな性質を、ルカは好ましいと思うのだ。
堅物の自分にはおそらく辿りつけない――自覚はあるのだ――、その立ち振る舞いが羨ましく感じられていた。
愛を込めて三百八十七円
のだが。
「巡音、ケーキを買いに行こう」
認識を改めようかしら、とルカは悩んでいた。
アカイトは会津の家に泊まり込みで収録があるので帰らない。マスターは珍しく学生時代の友人たちと某夢とネズミの国へ旅立ってしまった。つまり本日、何故か無闇にひろいこの一軒家でルカは一人きり、留守の番を任されてしまったのだ。
風呂からあがって脱衣場から出ると、約三十センチの距離を置いたがくぽが鎮座していた。それだけでも絶句だったが、開口一番飛び出した言葉が「ケーキ」だ。
美声と言って差し支えない声が至って真面目に「ケーキを食べよう」と言うのだ。
『病院へ行け』どころではない。いっそ『病院が来い』だった。
まず何で居る。
そして何故風呂場の前で鎮座している。
とりあえず首に掛かっていたバスタオルを顔に投げつけ、「おお?」と声をあげるその頭に向かって右足を振り抜く。やたらと高い位置にある側頭部をねらったはずだったが、つま先が顎を掠るにとどまった。長身であるのは認識していたが、想定以上だ、とルカは瞬きをする。
「おい巡音、なんだいきなり」
ずれ落ちたバスタオルを持ち上げるその顔に向かって、今度は跳び足刀をたたき込む。ぱし、と小気味の良い音。
ルカの白い御足は、骨張った手に受け止められていた。
「……離して下さい」
「離したら蹴るだろう」
「蹴りません」
「分かった」
手が離され、温い拘束から足が解放される。
がくぽはルカに投げつけられたバスタオルを不思議そうに眺めていた。
「何故、居るのですか」
「アカイトが泊まるから、俺の端末はじゃまなのだそうだ。追い出された。愛宕さんに許可を取ったから、此処で夜を越せ、と」
そう言ってがくぽは、普段アカイトが持たされている家の鍵をルカに手渡す。
淀みのない説明に、言及の余地すら無かった。
実は風呂の前にいた理由は不明のままだったが、ルカはなんかもう忘れていた。本人もとくになにも考えていないだろう。
「そうですか」と頷き、夕食を振る舞ったりしたほうがいいのだろうかと瞬きを繰り返していると、勢い良く手を取られた。ルカははじかれたようにがくぽをみる。
「な、んですか」
「巡音、ケーキだ」
「はぁ?」
「ケーキを買いに行こうではないか」
そのままルカの手を引き、廊下を走り出す。え、なに、ほんとになに、と割りと本気で混乱しながらルカはそれについていった。足のリーチが違うので、ぐいぐいと手が引っ張られる。
一体なんだというのだ。
「神威?! 一体何ですか?!」
「ケーキだ、ケーキ」
玄関にあった靴に足をひっかけ、がくぽが玄関に激突。痛々しい音をたてた鼻を押さえ、立ち止まったのを良いことにルカはその襟首をつかみあげる。
けれども鼻を赤くした彼は飄々とその三文字ばかりを繰り返した。
「ケーキって……こんな時間じゃ、もう何処の店も開いてないわよ」
「……コンビニでいい」
兎も角、行くぞ。
言われ、再度腕を引かれた。あわててサンダルを引っかける。先ほどの激突に学んだのか、今度は割りとゆっくりめなペースだ。
とはいえ、がくぽが二歩で歩く距離をルカは三歩かけなければならないので、ルカにとってはそんなに遅いという早さには感じられない。
向かう先はどうやら本当にコンビニだった。住宅街の外れ、煌々と電灯が光っている。
手を引いたままコンビニへ入り、ルカに戸惑う暇も与えずずんずんと奥のスイーツコーナーへ。
「俺はこれを食う」ちょん、とチョコムースのケーキを指さした「巡音はなにを食べる。好きなのを選ぶとよいよ」
「……? どういうこと?」
「誕生日、祝えなかったからな」
ところ狭しと並ぶスイーツに向けていた視線をガッとがくぽに移す。口の両端を緩やかに曲げ、穏やかに笑んでいた。
握られたままの手を離してほしい、とルカは口を開閉する。
確かに先月の末日は自分の製品の発売日だった。が、自身が起動されたのはもっとあとのことで、と言い訳じみた言葉が脳内で駆け巡る。
それらをそのまま口に出そうとして――飲み込んだ。
ほほえむがくぽから視線を逃した。
そして、イチゴの乗ったチーズケーキを指さす。
**********
病院が来いながくぽと、先生、タグロックもうそこでいいですなルカ
我が家のがくルカはこんな感じか、もっとツンデレか
ツンデレ系も書いてみたいなぁ
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がくぽのキャラ固め
会話だけ
**********
「がくぽって」
「ん?」
「『拙者』って言わないよな」
「え……うん、言わないけど」
世の中は良く出来ている
「神威がくぽが来たって聞いて、俺、リアル侍! ってちょっとわくわくしてたんだけど」
「あー、わたしもー」
『初めまして、神威がくぽだ。鏡音リンとレン……で良いな? 宜しく』
『おー、宜しくー』
『宜しくねー。お茶飲むー? ジュースもあるよ。なっちゃん』
『お、』
『(来るぞ!)』
『(来るよ、生《かたじけない》!)』
『『(てーへんだー、てーへんだー、てーへんだったらてーへんだー!)』』
『じゃあ、なっちゃんを貰おうかな』
「そうとうがっかりしたよね」
「なー」
「え、あ、ああ……それは悪い事したな」
「うん……結構凄く、がっかりしたよ」
「しかもがくぽ正規衣装、着ないしな……」
「今もジャージだもんね……」
「俺らイメージ商売なんだからさぁ……」
「別に良いけどさぁ……」
「しっ、仕方無かろうが、俺の正規衣装やたらと暑いんだぞあれ」
「でもねぇ?」
「なぁ?」
「……った、確かに、兄者が割と普通にコートとか全然着てないと知ったときのしょんぼり感は酷かったけど」
「あー、カイト兄?」
「いやでもカイト兄は結構しっかりしてるよ。家の外ではちゃんと着てるでしょ、コートとマフラー」
「あれは暑くないものなのか」
「まぁおれら外気温センサーと互換して無いから」
「あーそっか、がくぽん新型だもんね。端末作ってる会社も違うし。暑い寒いわかるんだ、いいなー」
「これは善し悪しだぞ」
「「ふーん」」
「基本外気温に対する反応なぞ不快感くらいしかあるまいよ」
「って言ってもさぁ、だからってそんな普通のジャージ……」
「しかも背中にドMって……」
「これは会津の趣味だから俺は知らん」
「ドMなんだ……」
「がくぽん髪もあんまり長くないよね」
「髪?」
「ほら、端末によってはミク姉もかくやってくらい長かったりするじゃん」
「あー、あれは個体差……というかぶっちゃけ各のマスターの趣味で適当に注文出来るようになってて。俺はデフォルトより少し短めらしい」
「中途半端な長さだよな。もみあげも妙な長さだし」
「そういう文句は会津に言ってくれ」
「いや別に文句とかは無いけどさ」
「いっそおとなのラジオのがくぽさんくらい短くすれば良かったのにね!」
「あの方は正規衣装の時一体髪をどうしておるのか非常に気になるな……」
「おれと同じくらいの長さだもんな」
「後さー、この前がくぽんの曲聴いたんだけどさー」
「はぁ」
「がくこちゃんって居るの?」
「……少なくとも我が家には居らぬが」
「うおおがくこボイス! がくこボイスががくぽから発せられてる現実!」
「ギャップが怖い! ギャップ怖いよがくぽん!」
「仕事は選ぶ物ではなく、受けるものだと、兄者が……」
「分かった、分かったから止めようかがくぽん」
「リン殿……」
「なんでがくこ声だとテンプレな話し方になるの? 怖いよ」
「あっ! ちゃんと動画みたら結構髪長かった!」
「本当だ! ごめんなさい!!」
「鏡音兄妹とがくぽん、仲良いよねー」
「でかいのと小さいのがころころしてると癒されるわねぇ」
**********
最後は兄さんと姉さん
我が家のがくぽはこんな感じ
ちょっと古風のしゃべり方程度
一人称は俺
髪の長さは背中半ばちょい上くらい?
会津さん宅にいます
会話だけ
**********
「がくぽって」
「ん?」
「『拙者』って言わないよな」
「え……うん、言わないけど」
世の中は良く出来ている
「神威がくぽが来たって聞いて、俺、リアル侍! ってちょっとわくわくしてたんだけど」
「あー、わたしもー」
『初めまして、神威がくぽだ。鏡音リンとレン……で良いな? 宜しく』
『おー、宜しくー』
『宜しくねー。お茶飲むー? ジュースもあるよ。なっちゃん』
『お、』
『(来るぞ!)』
『(来るよ、生《かたじけない》!)』
『『(てーへんだー、てーへんだー、てーへんだったらてーへんだー!)』』
『じゃあ、なっちゃんを貰おうかな』
「そうとうがっかりしたよね」
「なー」
「え、あ、ああ……それは悪い事したな」
「うん……結構凄く、がっかりしたよ」
「しかもがくぽ正規衣装、着ないしな……」
「今もジャージだもんね……」
「俺らイメージ商売なんだからさぁ……」
「別に良いけどさぁ……」
「しっ、仕方無かろうが、俺の正規衣装やたらと暑いんだぞあれ」
「でもねぇ?」
「なぁ?」
「……った、確かに、兄者が割と普通にコートとか全然着てないと知ったときのしょんぼり感は酷かったけど」
「あー、カイト兄?」
「いやでもカイト兄は結構しっかりしてるよ。家の外ではちゃんと着てるでしょ、コートとマフラー」
「あれは暑くないものなのか」
「まぁおれら外気温センサーと互換して無いから」
「あーそっか、がくぽん新型だもんね。端末作ってる会社も違うし。暑い寒いわかるんだ、いいなー」
「これは善し悪しだぞ」
「「ふーん」」
「基本外気温に対する反応なぞ不快感くらいしかあるまいよ」
「って言ってもさぁ、だからってそんな普通のジャージ……」
「しかも背中にドMって……」
「これは会津の趣味だから俺は知らん」
「ドMなんだ……」
「がくぽん髪もあんまり長くないよね」
「髪?」
「ほら、端末によってはミク姉もかくやってくらい長かったりするじゃん」
「あー、あれは個体差……というかぶっちゃけ各のマスターの趣味で適当に注文出来るようになってて。俺はデフォルトより少し短めらしい」
「中途半端な長さだよな。もみあげも妙な長さだし」
「そういう文句は会津に言ってくれ」
「いや別に文句とかは無いけどさ」
「いっそおとなのラジオのがくぽさんくらい短くすれば良かったのにね!」
「あの方は正規衣装の時一体髪をどうしておるのか非常に気になるな……」
「おれと同じくらいの長さだもんな」
「後さー、この前がくぽんの曲聴いたんだけどさー」
「はぁ」
「がくこちゃんって居るの?」
「……少なくとも我が家には居らぬが」
「うおおがくこボイス! がくこボイスががくぽから発せられてる現実!」
「ギャップが怖い! ギャップ怖いよがくぽん!」
「仕事は選ぶ物ではなく、受けるものだと、兄者が……」
「分かった、分かったから止めようかがくぽん」
「リン殿……」
「なんでがくこ声だとテンプレな話し方になるの? 怖いよ」
「あっ! ちゃんと動画みたら結構髪長かった!」
「本当だ! ごめんなさい!!」
「鏡音兄妹とがくぽん、仲良いよねー」
「でかいのと小さいのがころころしてると癒されるわねぇ」
**********
最後は兄さんと姉さん
我が家のがくぽはこんな感じ
ちょっと古風のしゃべり方程度
一人称は俺
髪の長さは背中半ばちょい上くらい?
会津さん宅にいます
まさかのミクオ
がくぽよりルカより早く、まさかのミクオ
元ネタは某Pの『心壊サミット』
しんかいでいいのかな
少々気持ち悪かったり初音ズの性格が悪かったり極悪だったりします
注意
**********
「初音くん、初音くん」
「なんですかマスタ」
「君に会わせたいひとがいるんだ」
ぼくとわたし狂想曲
「初音ミクオ」
「うん?」
呼び出された部屋に居たのは、私と同じ顔だった。私よりも幾分高い位置に視点を持った緑の目が此方を見据えている。
「初音、ミクオ」
「だからなんだって」
そう呼ばれる初音種派生の亜種が居ることは私も知っていたし、彼らが歌う歌も――あまり多くはないが――聞いたことがあった。
が、実際現実でこうして端末通しであうのは始めてた。
亜種はまず、外部端末が存在しない。
PC内部での外見ならば(違法の穴を抜けたような)パッチを使えば簡単にできる。会津さん家のアカイトもその部類だ。
あの赤い彼の端末は、私のマスターが、会社で開発している人命救助用のアンドロイドを改造して作ったもの。
そうでもしないと亜種の外部端末は手に入らないのだ。
「頼まれてね、初音ミクのボディを改造したんだ。君と比較したらどんなもんかと思ってな」
「……はぁ」
「ミクオ、これがうちの初音くんだ。まぁ、君の姉みたいなものだね」
「どうぞ宜しく、ネエサン」
「……はぁ」
彼はにっこりと笑って私に右手を差し出した。張り付いたような笑み。私たちにとっては作った表情も自然に出た表情も何も変わらない。それなのに違和を感じた。
電気系統が上手くいっていないのか、プログラム自体が不得意なのかは解らない。
「よろしく」
私と同じ顔に張り付いた笑顔。
それにつられて私も笑みを作っているのでお互い様なのだが、なんだか酷く気に入らない。
聞くところによると、今日中に彼のマスターが彼を迎えにくるらしい。
これ以上は顔をつっきあわずにすむのかと、とりあえず一安心する。
暫く歓談にふけっていると(やはり終始彼は張り付いた笑みを浮かべていた)、不意にマスターが立ち上がった。
「そろそろ迎えがくるらしい」と彼に伝え、部屋を出ていく。
「あ、そうだ」ひょい、と頭だけをドアから出した「私と彼女は少し作業をしなくてはならないから、……そうだな、一時間後にミクオ、来たまえ。初音くん、ミクオを収録室まで案内できるな」
「……はい、もちろんです」
「うん。それじゃあ、それまで親睦を深めて置きなさい」
不遜な態度に似合わない丁寧な手つきでマスターが扉を閉めると、客室として使われているただっ広い部屋に私と彼は二人きりになってしまった。
あの出来損ないの営業スマイルと一時間以上顔を突き合わせるのかとと内心嫌気が刺す。それでもどうにか笑顔を繕い、彼を振り返った。
彼はまだ笑っていた。
しかし先ほどまでの愛想笑いの退化系のような作り笑いでは無い。口の端を歪め、片目を眇めたいびつな笑み。
緑の瞳が私を写す。
「俺は、初音ミクが嫌いだ」
細いような安定感の無い声音が私を突き刺そうとしていた。
「俺はあんたの成り損ないだから、あんたみたいに歌えない。あんたも、その声であのマスターに媚びてるんだろ?」
ますたぁ、ぅたわせてくださぃ、ってな。
けらけらけらと彼は笑う。
その声はやはり安定感が無い。元は初音種独特のソプラノだったのだろう。
「笑っちゃうよ、姉だってさ! 完全版の間違いじゃないの」
「……」
こいつ、は
「……なぁ、おい、なんとか言えよ」
「……」
「おいってば」
なんて、
「……」
「っ無視してんじゃねぇよっ!」
が、とAIが揺れる。
重たい音がして、一瞬世界が途切れた。すぐに復旧する。
がりがりと処理を進める音。
彼は私の肩に両手を置いて背中から電灯の光を浴びていた。
要するに、馬乗りになっている。
「聞いてんのか、クソ、この売女!」
ぎぎり、奇妙な音がする。視界が警告音で染まった。
左腕領域が関知できません。
ごぎりと生々しい音をたてて、彼の手の中に私の細い腕が収まる。彼は一瞬目を見開き、口を悲鳴の形に開いてから、閉じた。
「……っ」
立ち上がり、走りだそうとする。
押さえつけるものがなくなった私は左腕の無いまま起きあがってその背中を見た。
ああ、こいつは、なんて
なんて愛しい愚か者だ
「い゛っ!」
立ち上がり走りよりその背中を踏みつぶす。背骨にあたる器官が足の下でごりごりと鳴った。
彼は信じられないという顔をして私を見上げている。視界は相変わらず警告音。
「っにすんだよ! 足っ、どけっ」
「……うるさい」
かかとで思い切り床に押しつける。
毛足の短い絨毯に彼の頬がすり付けられた。
「あなた、私が好きでしょ」
**********
初音さんドS!
なにがあったおまえ
ミクオくんがもいだ腕にS心を制御するプログラムが組み込まれてたんだよたぶん
ミクオくんは猫っかぶりのツンデレです
本当ならうでもぎの後デレる予定でしたが初音さんが踏みつぶしてしまいました
べつに彼はレギュラーになる予定はなし
ゆめにっきEDネタバレ
あれは……だめだろ……
ほんとだめだろ……
**********
あ、という声につられてそちらを見た。
アカ兄とレンがパソコンの画面を見ている。何、と思わずのぞき込むんだ。
荒いドットの画面。
小さなベランダのような場所から、ひゅうというような効果音を思わせる軽々しさで、ピンク色の服を着た少女が落ちていった。
ふと画面が暗くなる。
中央に浮かび上がってくるのは、これまたドットの荒い、赤。
「うそ」
唖然とした声で呟いたのは、レンなのかアカ兄なのか、はたまた私なのだろうか。
どりーむだいあり
「……嘘だろ、こんなん、ありかよ」
「……」
私たちは電脳空間に於いて、わりと自由度の高い待遇を受けている。マスターたちはコミュニティ内でネット上に共有できるフォルダを作っていて、私たちはパソコンの中で待機している時、いつでも其処に出入りできるのだ。
もちろんweb上のページを渡り歩くことも、可能。ただしこれは自己責任なので、危険そうなページには出入りしないのが暗黙の了解だった。
兎も角、その共有フォルダの中、幾つにも小分けされたファイルの中の、一番出入りしやすい位置の一つを私たちは『リビング』として、入れ替わり立ち替わり、共有の場として扱うことにしていた。
其処で、ミク姉はお菓子を食べたり歌の練習をしたり、カイト兄はアイスを食べたりニュースを見たり、メイコ姉はお酒を飲んだりマンガを読んだり、ルカちゃんは動画を見たりひなたぼっこをしたり、がく兄はうたた寝したり本を読んだりしている。私もよくこのファイルで、拾ってきたテキストデータを読んだりミク姉やがく兄の髪をいじったりしている。
レンはなんだかフリーゲームにはまっているらしくて、他のきょうだいを巻き込んで良くパソコン(便宜的な画面の代わりに作られたものだ)に向かっているのをみる。
今日のお供はどうやらアカ兄で、さっきから楽しそうな声が飛んでくるなぁと料理のレシピデータを読んでいた私は思っていたのだ。
それなのに、振り返って見たのは、
「後味、悪」
「ん……」
アカ兄が眉を寄せてマウスを寄せ、ぱちぱちと操作して黒いウィンドウを消した。
その顔は少しだけ憔悴していて、軽く息を吐き出すたびに体がふるえている。電脳世界ではアカ兄も呼吸なんてしなくて良いはずなのに、外部端末での癖なんだろうか。
レンは俯いて、ぼうっとしている。
「……リン、来て」
「え?」
私に向かって、ちょいちょいと指が振られた。
レンの様子を察したのか、アカ兄が気を利かせて、私とレンの間にあるソファの結合を解除する。歩み寄りやすくなった私は、呼ばれるままにレンの元へ向かった。
「……どしたの、レン」
「知らね」
ぎゅ、と腰のあたりに私と同じくらい細い腕が巻き付いた。レンの額が丁度おなかの少し上に押しつけられている。表情は、見えない。
声を上げるタイミングも、なにもかもを失った私は助けを求めてアカ兄を見た。
「……」
レンと私ごと腕をのばして、囲まれた。力加減の解らないあまりにも緩すぎる抱擁。
やっぱり顔を伏せたアカ兄がレンの服の襟を整えて呟く。
「ちょっと、ごめんな」
なんだろう、この状態は。
**********
精神的にやられたアカとレン
あれはだめだよ……本当にあの終わり方はだめだって……
なまじっかハッピーエンドが見えていたからもう……
お菓子美味しいよね、という話
がくぽ出ないのにぽルカ風味
**********
愛宕さんの作った曲を歌うことになった。アカイトとのツインボーカルで、感想は、と問われたのでなんだか某ネズミの国のような曲だ、と伝えると、いいじゃないですかネズミーランド、すてきですよ、目指せ幻想狂気と言われた。俺はテーマパークなんて大層なものには行ったことがない。
兎も角練習の合間、曲想を掴むためにテーマパークとは何ぞや其処に漂う非現実がどうたらとアカイトと俺は話し合うはめになった。結果出たのは、行ったことないからわからんの一つ。全く報われない。
半ば満身創痍で練習を終えて居間へ戻ると、さくりさくりと小気味の良いおとが響いていた。
水気を含む何かが切断される音。ダイニングをのぞき込むと、桃色を垂らした頭が微かな鼻歌を奏でながら揺れている。
りんごだ、と隣で赤い弟分が呟いた。
半音コンポート
「マスターが親戚から貰ったんだってさ」
「へぇ、親戚なんて居るんだ、愛宕さん」
「きょうがくの新事実だった」
カイト兄さんもどうぞ、と差し出された兎さん林檎を口に運ぶ。擦りおろして凍らせるといいんだけどな、と考えながらかみ砕いた。さくりと割れて、口の中で水分がにじみ出る。
アカイトも同じようにしながらダイニングキッチンで動き回るルカの後ろ姿を見ていた。
片足が椅子の上にあがって、ぶらんぶらんと宙に浮いたもう片足が揺れている。俺と同じような年頃の端末のはずなのに、やたらと幼い。
始音種というのは、基本的に初音種を初めとする鏡音種や巡音種、恐らくそれ以降に続くナンバーシリーズに対して、庇護の意識を持つようにプログラミングされている。
赤い弟、アカイトも端末こそ他製品の改造とは言え中身は俺と同じKAITOのはずなの、だが。
どうにもこの弟は、そのプログラムが働いていないわけではないのだろうが、何というかずれている。
稼働時間が短いからとか、そういう問題では無く、初期設定と対反応システムの学習の方向がそういうものになっていたのでは無いかといつだかメイコは推察していた。
アカイトはアカイトなりに成長しているであろうことは俺にもわかっている。いるが、兄貴分としては何ともかんとも不安である。
せめて、もう少しきびきび喋って下さい、アカイトさん。
確かに柔らかな声音は俺たちの声帯の魅力ですが、おまえのそれは柔らかさの無駄遣いです。俺と同じ素体とは思えないよ。
何であんなに歌の相性悪いの。KAITO同士なんだからそう変な反発はしないはずなのに。
「そんなに送られてきたの」
「あそこにある段ボール、あれ一杯、りんご。後で兄貴幾つかがくぽ達におみやげ持っていってくれ」
「ん」
そういっている内に一切れ食べ終えた。林檎というのは中々消化器官にたまるので、四分の一も食べると結構な満腹感が得られた。
アカイトは依然変わらないペースでもっしゃもっしゃと林檎を食んでいる。
もう一つ食べようか否か、手をゆらゆらさせて俺が迷っていると、キッチンのほうからルカが現れた。いつもの服の上につけた少女趣味なエプロンが妙にはまっている。
「カイト兄さん、林檎のコンポートを作りましたので、どうぞお持ち帰りになって下さい」
机の上に置かれた陶器の入れ物から、ほんの微かに甘い香りが漂っていた。
それを見たアカイトが「あー!」と悲鳴を上げる。
「ルカ、それおれが明日持ってく奴」
「今また作っていますから、明日までには出来上がります」
「明日?」さんざ迷ってもう一切れに手を伸ばしながら、俺は首を傾げた「アカイト、どっか行くの」
「い……友達の家」
「……おまえ、友達なんて出来たんだ。良かったねぇ」
「おう、祝ってくれ」
「祝ってやる」
おめでとう、とまだ口に付けていなかった林檎を差し出すと、ありがとうと受け取った。
ルカはそんな俺たちの様子を微笑ましそうに見ながら、テーブルの椅子を引いた。
「あ、なんて言うか、ごめんね。有り難く貰おうかな」
「どうぞどうぞ、持っていって下さいませ」
俺とアカイトの妹にあたる彼女はしっとりと微笑んで陶器の入れ物を丁寧に布で包み、紙袋へ入れていく。
しかしすっかりとお母さんな仕草だ。手伝うアカイトが息子のようだぜ。
「マスター喜ぶよ、今絶賛修羅場中で、簡単に食べられるものしか食べてないから」
「がくぽは?」
「がくぽ?」
アカイトに問われて、出掛けに半泣きになりながらマスターの原稿を手伝っていたがくぽを思い浮かべる。
(「もうイヤだ、液体描写なんて書きとうない! 俺は歌うために出来たボーカロイドです!」「黙れ食い扶持貰いたきゃ手ぇ動かせ! 歌いたかったらBGMにしてやるから好きなだけ歌っていいぞー!」「あのー俺出かけますねー」「このーてーをはーなーすもーんか!」「「真っ赤な誓いぃぃいいいいい!」」「……いってきまーす」)
「……うん、喜ぶんじゃないかな」
あの惨状で、どんな壊れた反応をするか知らないけれども。
それだけ飲み込んで返答すると、とたんにがたんとルカが身をのりだした。え、なにこの子。
「でっ、でも、神威は茄子が好きですしっ、林檎は好かないのではないのでしょうかっ?!」
「そ、んなこと、ないよ? よっぽど酷くなかったら、基本的に好き嫌いはないし、ルカは料理上手いし」
「けれどっ! 先日は! 甘いものは好かないと言っていました!」
「それこそ嘘だ、あいつ甘いの大好きだよ」
「ですがっ、ですがですがっ!」
其処まで言って、ぴたりとルカが動きを止める。殆ど迫られるように顔を突きつけられていた俺は無意識に降参ポーズをとっていた。
傍らの赤いのはまるきり無心な様子で林檎を頬張っている。
顎を引いたルカは付いていた手を戻し、背筋を伸ばした。
すとんと椅子に腰を下ろす。
きり、と関節を軋ませて俯いた。
「……喜んでいただけるのなら、いいのです」
「おれはがくぽを、お義父さんかお義兄さん、どっちで呼べば良いんだろう……」
呟いたアカイトの顎をフォークの柄が、すこーんと突き上げた。
**********
ルカはお母さんだよ!
我が家のがくぽは会津さん(カイトのマスター)宅にいます
別にナイスをやっている訳ではありません
宅飲み買い出し二人組
会話ばっかり。むしろ会話のみ
**********
「めーちゃんめーちゃん」
「なによかーくん」
「パーティカップ買って良いと思う?」
「あんたが食べれるんなら買えば?」
ワンカップ半分こ三段重ね
「別に食べれるよー? 食べれるけど、俺からしたらこれ一つたべることからスタートするんだよ。で、一つは俺が全部食べるとしてもういっこ買ったら他の皆で食べられるかなぁって」
「あんたこれ一リットルパックよ? 一人で食べるの?」
「うん」
「えっ」
「えっ」
「……余ったらあんたが食えばいいんじゃないの」
「それもそうか。じゃあ二パック買いだ」
「まだ回るから後にしときなさい」
「えー? 売れちゃわない?」
「あんた今何時だと思ってんの」
「……体内時計、基本表示してないから……」
「何で?!」
「何か鬱陶しいじゃん視界の端で数字がちらちらしてて……待って、今表示するよ」
「十一時よ十一時。午後十一時十二分十七秒」
「細かいな……そうか、まぁ売れないか」
「このスーパーの中、殆ど人いないじゃない」
「うん。じゃあお酒コーナー行く?」
「重いから先につまみ買いましょ」
「あー、そだね」
「何頼まれてたっけ」
「ルカルカがツナ缶。がくぽんは茄子の漬け物で、マスター達がお菓子諸々。あ、あとあーくんが暴君買ってきてってさ」
「……あーくんかぁ……」
「あーくんよ」
「……あいつに酒飲ませてると、すごくこう、憲法に違反してる気分になるの俺だけかなぁ」
「……実はあいつあんたと同じ年なのよねぇ」
「でっかいばっかりでリンレンと同じくらいだと思ってたよ俺」
「私もよ」
「しかも結構うわばみだったよな」
「そう……あとで飲み比べの決着つけなきゃだめね」
「え、なんでこの人燃えてるの」
「赤くて酒好きってキャラかぶってるのよ!」
「……別にあーくんは酒好きでは無くね?」
「重要なのよ、キャラ被りは致命的なんだから。あんたも、もしこれから青いボカロが出たら困るでしょ」
「え、えー?」
「ルカルカも大変よね。ピンクで被っちゃったボカロがいるし」
「まぁ、キャラクター自体はあんまり被ってないからいいんじゃないの。俺あんまりミキさんのこと知らないけど」
「……名前出して大丈夫なのかしら」
「そ、そんなこと言わないでよ……」
「つまみはこんなもんか。酒は? なんかあったっけ?」
「缶で良いんじゃないかな。チューハイでしょ、発泡酒……」
「其処はビールにしときなさいよ折角根岸さんの財布借りてきたんだから」
「……スーパーでブラックカードって使えるのかな」
「あっ! 赤閻魔ー! 飲んでみたかったのよ! 買いましょ」
「ええー……じゃあ俺も、あ、この牛乳で割るやつ飲んでみたい。愛宕さんも言ってたし」
「ビールは恵比寿で良いわよね? 適当にワンケースくらい買っとく?」
「……めーちゃんが飲めるなら良いんじゃない?」
「重量、一応俺積載許容範囲だから、持とうか」
「あら、じゃお願い」
「もうそろそろ日付変わるねぇ」
「そうね」
「明日は二日酔い確定だろうなぁ、マスター達」
**********
収拾がつかないので適当に切り
年長組はあだ名番長
何かだめな大学生の会話みたいなのをしてくれてればいいなぁと思います
会話ばっかり。むしろ会話のみ
**********
「めーちゃんめーちゃん」
「なによかーくん」
「パーティカップ買って良いと思う?」
「あんたが食べれるんなら買えば?」
ワンカップ半分こ三段重ね
「別に食べれるよー? 食べれるけど、俺からしたらこれ一つたべることからスタートするんだよ。で、一つは俺が全部食べるとしてもういっこ買ったら他の皆で食べられるかなぁって」
「あんたこれ一リットルパックよ? 一人で食べるの?」
「うん」
「えっ」
「えっ」
「……余ったらあんたが食えばいいんじゃないの」
「それもそうか。じゃあ二パック買いだ」
「まだ回るから後にしときなさい」
「えー? 売れちゃわない?」
「あんた今何時だと思ってんの」
「……体内時計、基本表示してないから……」
「何で?!」
「何か鬱陶しいじゃん視界の端で数字がちらちらしてて……待って、今表示するよ」
「十一時よ十一時。午後十一時十二分十七秒」
「細かいな……そうか、まぁ売れないか」
「このスーパーの中、殆ど人いないじゃない」
「うん。じゃあお酒コーナー行く?」
「重いから先につまみ買いましょ」
「あー、そだね」
「何頼まれてたっけ」
「ルカルカがツナ缶。がくぽんは茄子の漬け物で、マスター達がお菓子諸々。あ、あとあーくんが暴君買ってきてってさ」
「……あーくんかぁ……」
「あーくんよ」
「……あいつに酒飲ませてると、すごくこう、憲法に違反してる気分になるの俺だけかなぁ」
「……実はあいつあんたと同じ年なのよねぇ」
「でっかいばっかりでリンレンと同じくらいだと思ってたよ俺」
「私もよ」
「しかも結構うわばみだったよな」
「そう……あとで飲み比べの決着つけなきゃだめね」
「え、なんでこの人燃えてるの」
「赤くて酒好きってキャラかぶってるのよ!」
「……別にあーくんは酒好きでは無くね?」
「重要なのよ、キャラ被りは致命的なんだから。あんたも、もしこれから青いボカロが出たら困るでしょ」
「え、えー?」
「ルカルカも大変よね。ピンクで被っちゃったボカロがいるし」
「まぁ、キャラクター自体はあんまり被ってないからいいんじゃないの。俺あんまりミキさんのこと知らないけど」
「……名前出して大丈夫なのかしら」
「そ、そんなこと言わないでよ……」
「つまみはこんなもんか。酒は? なんかあったっけ?」
「缶で良いんじゃないかな。チューハイでしょ、発泡酒……」
「其処はビールにしときなさいよ折角根岸さんの財布借りてきたんだから」
「……スーパーでブラックカードって使えるのかな」
「あっ! 赤閻魔ー! 飲んでみたかったのよ! 買いましょ」
「ええー……じゃあ俺も、あ、この牛乳で割るやつ飲んでみたい。愛宕さんも言ってたし」
「ビールは恵比寿で良いわよね? 適当にワンケースくらい買っとく?」
「……めーちゃんが飲めるなら良いんじゃない?」
「重量、一応俺積載許容範囲だから、持とうか」
「あら、じゃお願い」
「もうそろそろ日付変わるねぇ」
「そうね」
「明日は二日酔い確定だろうなぁ、マスター達」
**********
収拾がつかないので適当に切り
年長組はあだ名番長
何かだめな大学生の会話みたいなのをしてくれてればいいなぁと思います
亜種注意
愛宕さん宅のルカ様とアカイトくん(初登場)
ちなみに愛宕さんは特に何も考えていないすてきな女性です
**********
なんだろうこのじょうきょうは、とやにわに身が固まる。
「アカイト、もう少しそちら詰めてください」
「おう」
「うぅむ、やはらかい……。やはり高いお金を出しただけありますねぇ。科学の進歩とはすばらしいものです」
「アカイト、masterが押してきて狭いのでもう少し」
「ルカ、おれ壁は冷たいから嫌だよ」
「……むぅ」
今の体勢。
ますたーがルカの背中に抱きついて、ルカがおれの背中に抱きついている。よの男性に後ろから刺されてしまいそうだが、背中はルカがばっちりガード。あんしんだ。
連鎖枕
すべては我らがマスターがベッドで昼寝をしているところからはじまる。
布団も掛けずにもなもなやっていた我らがマスターをみたルカが保護者心をだして、布団をかけてやろうとしたところ、ベッドにひきづりこまれ、抱き枕になれとの命をうけたそうな。
マスターは二十歳を過ぎたいまでもベッドにぬいぐるみをたずさえるようなおとななので、まぁそこまでは別に良いと思う。おれは巻き込まれていなかったし、そのじょうたいになった所はみたけれど、マスターはだまって抱きつきルカはだまって抱きつかれていて需要と供給がなりたっていたのでかまうことないと思っていた。
なのでそれを見届けたおれは、お茶でも飲もうと台所へ向かった。二人もそのうちに来るだろうと三人分湯呑みを用意したところで皿に乗ったあられを見つけて食べて良いものかとはかりかね、ルカに聞こうと寝室に戻ったのだった。
一方マスターに抱きつかれていたルカは、ますたーは頻繁に自分に抱きつくが何が楽しいのかとつねひごろから抱いていた疑問が爆発したらしい。薄暗い寝室に再度あらわれたおれを手招きこまねいて寄せ、マフラーを引いて自分の前に寝ころぶよういった。弁解をさせていただくならば、ルカがひっぱるマフラーが伸びてしまわないかとかが酷く心配だったのだ。どこかの青い兄貴のマフラーは聞くところによると化繊で作られた汚れたりも伸びたりもしないような代物らしいが、おれのものはただのフェルト地なので、伸びてしまうとひじょうに悲しいのだ。
かくして目の前にできたでかい枕に抱きつき、ルカはなにやらふむと納得しこれはなかなかと俺の背中をはなさなくなった。おれは台所に置いたままの緑茶が冷めてしまうなぁとぼぅっと思った。おれは横にすると目を閉じる人形のようなもので、外部端末を横にすると燃費がうまく行かなくなり、自動的にスリープモードに近いような、低機能状態になる。背中に抱きつくルカに体温はないので、暖かいとかは特に思わない。柔らかいのだろうが、あいにくその感覚は厚手のコートにさえぎられている。そこまでおれの外部刺激に対する感覚はするどくないのだ。
マスターの寝息が聞こえてくる。ルカは呼吸をしないタイプなので寝息は聞こえないが、腹に回った腕がますますかっちりとホールドされ動く気配の無いことから、どうやらスリープモードに入ろうとしているらしい。
ふうと息を吐く。
一応おれは男性型ボーカロイドで。そういった機能がついているのかは知らないが、ほんとうにこの状況はなんなんだろうと思う。ひじょうにあれな光景なんではなかろうか。
あれってなんだろう。
そもそもおれにとってはルカもマスターも親のような存在で、そのような対象にすることさえおこがましいと感じられる。向こう二人も、たぶんおれのことを出来の良くない弟や息子のようにしか感じていないに違いない。
それは断じて不快なことではなくて、家族だなぁと更にさらに感ぜられた。たぶん恐らく大まかに説明すると幸せな気分だ。
「アカイト、動かないでください」
「おぉー」
スリープに入りかけた、盛大なまぬけな声に笑う声がきこえる。
「……むぅ」
頭がじわりと重たい。
自分は会津に頼まれていた仕事がひと段落ついて、仮眠生活から解放されたのだと喜び勇んで昼寝をしたはずだ、と愛宕は頭を掻く。あまり上品な仕草ではないが、見る人はおるまいと壁にかかった時計をあおいだ。
胃の中は空っぽで、喉もからからに乾いている。
夕食の頃合いの時間になったらルカやアカイトが起こしてくれるだろう。と、言うことは、体感したよりも短い時間しか寝ていないのだろうか。部屋の中も明るい。
「あれ」
デジタルの電波時計は、きっかり八時を差していた。
無論、午前八時だ。
「……ルカもアカイトも、起こしてくれなかったんですか」
それとも自分が起きたくないとぐずったのだろうか。
記憶には無いが、寝汚い自分ならあり得る、と愛宕はため息を吐く。
ひとまず起きて何か飲もう、とベッドから降りて、ああと納得。
「お茶でも煎れておきましょうか」
スリープモードからの起動が設定されている時間は午前八時三十分。
それまでに簡単な朝食でも……と愛宕はそっと部屋を抜け出た。
「家族川の字で寝るなんて、中々良いじゃないですか」
**********
愛宕さんは特になにも考えていないすてきな女性です。
ルカは娘、アカイトは孫くらいの感覚。
アカイトはあほの子ではないですが愛宕さんに似たので特に何も考えてないです。
元は普通のアンドロイド(液体燃料対応)をボーカロイド用に根岸が改造したので、他の奴らとは違って排気のために呼吸します。エコカーと似たような原理で出るのは水蒸気なので冬は息が白くなります。周りのボーカロイドから浮くので寒いのは嫌いです。でも周りの皆は「何かかっけぇ」とわりと憧れの的です。
ちなみにルカさんは太陽電池ついてます。
愛宕さん宅のルカ様とアカイトくん(初登場)
ちなみに愛宕さんは特に何も考えていないすてきな女性です
**********
なんだろうこのじょうきょうは、とやにわに身が固まる。
「アカイト、もう少しそちら詰めてください」
「おう」
「うぅむ、やはらかい……。やはり高いお金を出しただけありますねぇ。科学の進歩とはすばらしいものです」
「アカイト、masterが押してきて狭いのでもう少し」
「ルカ、おれ壁は冷たいから嫌だよ」
「……むぅ」
今の体勢。
ますたーがルカの背中に抱きついて、ルカがおれの背中に抱きついている。よの男性に後ろから刺されてしまいそうだが、背中はルカがばっちりガード。あんしんだ。
連鎖枕
すべては我らがマスターがベッドで昼寝をしているところからはじまる。
布団も掛けずにもなもなやっていた我らがマスターをみたルカが保護者心をだして、布団をかけてやろうとしたところ、ベッドにひきづりこまれ、抱き枕になれとの命をうけたそうな。
マスターは二十歳を過ぎたいまでもベッドにぬいぐるみをたずさえるようなおとななので、まぁそこまでは別に良いと思う。おれは巻き込まれていなかったし、そのじょうたいになった所はみたけれど、マスターはだまって抱きつきルカはだまって抱きつかれていて需要と供給がなりたっていたのでかまうことないと思っていた。
なのでそれを見届けたおれは、お茶でも飲もうと台所へ向かった。二人もそのうちに来るだろうと三人分湯呑みを用意したところで皿に乗ったあられを見つけて食べて良いものかとはかりかね、ルカに聞こうと寝室に戻ったのだった。
一方マスターに抱きつかれていたルカは、ますたーは頻繁に自分に抱きつくが何が楽しいのかとつねひごろから抱いていた疑問が爆発したらしい。薄暗い寝室に再度あらわれたおれを手招きこまねいて寄せ、マフラーを引いて自分の前に寝ころぶよういった。弁解をさせていただくならば、ルカがひっぱるマフラーが伸びてしまわないかとかが酷く心配だったのだ。どこかの青い兄貴のマフラーは聞くところによると化繊で作られた汚れたりも伸びたりもしないような代物らしいが、おれのものはただのフェルト地なので、伸びてしまうとひじょうに悲しいのだ。
かくして目の前にできたでかい枕に抱きつき、ルカはなにやらふむと納得しこれはなかなかと俺の背中をはなさなくなった。おれは台所に置いたままの緑茶が冷めてしまうなぁとぼぅっと思った。おれは横にすると目を閉じる人形のようなもので、外部端末を横にすると燃費がうまく行かなくなり、自動的にスリープモードに近いような、低機能状態になる。背中に抱きつくルカに体温はないので、暖かいとかは特に思わない。柔らかいのだろうが、あいにくその感覚は厚手のコートにさえぎられている。そこまでおれの外部刺激に対する感覚はするどくないのだ。
マスターの寝息が聞こえてくる。ルカは呼吸をしないタイプなので寝息は聞こえないが、腹に回った腕がますますかっちりとホールドされ動く気配の無いことから、どうやらスリープモードに入ろうとしているらしい。
ふうと息を吐く。
一応おれは男性型ボーカロイドで。そういった機能がついているのかは知らないが、ほんとうにこの状況はなんなんだろうと思う。ひじょうにあれな光景なんではなかろうか。
あれってなんだろう。
そもそもおれにとってはルカもマスターも親のような存在で、そのような対象にすることさえおこがましいと感じられる。向こう二人も、たぶんおれのことを出来の良くない弟や息子のようにしか感じていないに違いない。
それは断じて不快なことではなくて、家族だなぁと更にさらに感ぜられた。たぶん恐らく大まかに説明すると幸せな気分だ。
「アカイト、動かないでください」
「おぉー」
スリープに入りかけた、盛大なまぬけな声に笑う声がきこえる。
「……むぅ」
頭がじわりと重たい。
自分は会津に頼まれていた仕事がひと段落ついて、仮眠生活から解放されたのだと喜び勇んで昼寝をしたはずだ、と愛宕は頭を掻く。あまり上品な仕草ではないが、見る人はおるまいと壁にかかった時計をあおいだ。
胃の中は空っぽで、喉もからからに乾いている。
夕食の頃合いの時間になったらルカやアカイトが起こしてくれるだろう。と、言うことは、体感したよりも短い時間しか寝ていないのだろうか。部屋の中も明るい。
「あれ」
デジタルの電波時計は、きっかり八時を差していた。
無論、午前八時だ。
「……ルカもアカイトも、起こしてくれなかったんですか」
それとも自分が起きたくないとぐずったのだろうか。
記憶には無いが、寝汚い自分ならあり得る、と愛宕はため息を吐く。
ひとまず起きて何か飲もう、とベッドから降りて、ああと納得。
「お茶でも煎れておきましょうか」
スリープモードからの起動が設定されている時間は午前八時三十分。
それまでに簡単な朝食でも……と愛宕はそっと部屋を抜け出た。
「家族川の字で寝るなんて、中々良いじゃないですか」
**********
愛宕さんは特になにも考えていないすてきな女性です。
ルカは娘、アカイトは孫くらいの感覚。
アカイトはあほの子ではないですが愛宕さんに似たので特に何も考えてないです。
元は普通のアンドロイド(液体燃料対応)をボーカロイド用に根岸が改造したので、他の奴らとは違って排気のために呼吸します。エコカーと似たような原理で出るのは水蒸気なので冬は息が白くなります。周りのボーカロイドから浮くので寒いのは嫌いです。でも周りの皆は「何かかっけぇ」とわりと憧れの的です。
ちなみにルカさんは太陽電池ついてます。