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やたらあっまい
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ディスプレイから見えるのは、無感情に紙面へ目を落とす横顔。
時々隠す気もないような欠伸を洩らしては、悪びれもせずに私の方へ笑ってみせる。
不意に脳核が焼け付くような感覚を覚えた。
エラー、エラー。
警告音は鳴らない。
ひっぱりビラブト
「マスタ」
「何だね初音くん」
「マスタ」
「……呼んでみただけっ♪ うふふっ♪ という奴か?」
「マスタ、怒りますよ」
「君はいつからそんなに冷静に対応するようになったんだい……買ったばかりの頃はまだ普通の十六歳JKと言わんばかりだったのに……うちの部下のようだ」
嘆かわしいねまったくとマスターは首を振る。
「マスタ、部下の方にもそんな態度なんですか」と問いただしたかったが、面倒なので止めた。
「マスタ、マスタ、聞きたいことがあるんです」
「ふむ、なんだい。言ってごらん!」
「……マスタにとって、私はどんな存在ですか。ただの歌うアプリケイションですか」
私の言葉に胸を張り、尊大な態度で両手を広げる。
後ろ暗いところなど何一つ無いような様子と、つり上がった口角が、どこまでもこの人らしい。
「何を聞くのかと思ったら、そんなことかい、我が愛娘」
「……マスタは、私がただのソフトウェアだと、理解していますか?」
「当たり前だろう! 君がアプリだソフトだという程度で、……私の愛の包容力を嘗めているんではないかね初音くん。『そんなことは関係ないね!』」
書類がデスクに落とされ、私の覗いているデスクトップに指が延びてきた。柔らかな曲線をなぞる。
おそらくその指は私の頬を撫でているつもりなのだろう。
平面に変換されたその向こうに触れるなど不可能と、解っているはずの愚かしさを恥じる様子も無くマスターは笑っていた。
「私は君のその声に惚れ込んだのだよ。今じゃ自慢の娘だ」
「……髪が長かったからじゃないんですか」
「それは一要因だよ。まぁ、背中を押す最後の材料ではあったがね」
ああ、この人はいつも。
いつもいつもこうで、この調子で。
私の言いたいことをすべてかっ浚っていってしまう。
だから今日は負けない。
言ってやるのだ。
「……娘、ですか」
「うん? そこに食いつくか」
「お父さんなんて、私は絶対に呼びませんから、マスタ」
「ええっ! なんでだい?!」
絶対に呼んでたまるものか!
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恋人に格上げ希望
こんなしゃべり方ですがミクさんマスターは三十路前です。二十代後半くらい。
ミクのことを溺愛するあまりなんかもう親父気分。いつか『おまえなんぞに娘をやれるか!』をやりたい。
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