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さむいですね!
そんなわけで俺設定の短編です

がくルカ!ぽルカ!
のわりにはルカさん出番少ないごめんなさい!


**********



「がくぽんがくぽんがくぽんがくぽんおいがくぽ起きろ」

「はい、はいはいはいはい」

「雪だぞコラ雪雪」

「……ゆきぃ?」

「雪ぃ」

「……はぁ」

「俺めーちゃんとこのアパートの雪かき手伝ってくるから、適当にしといて」

「……はぁ」



 いつものマフラーの上にさらにストールを巻くという酩酊しているとしか言いようのない格好をした兄貴分は、ひんやりした手の感触だけ残して消えてしまった。
 乱暴に下げられた毛布を口元まで引っ張り上げ、雪、とつぶやいてごろんと寝返りを打って窓のほうを伺う。カーテンの向こうから差し込む光は、確かにいつもより若干白みのつよいようにも思えた。

 ネットに接続。乾いた眼球をこすりながら本日の天気を検索。
『20センチの積雪』
 なにそれこわい。間抜けな思考がAIで固まった。










  ゆきのはな







 例の兄貴分が平気な顔をして部屋を出ていった理由は簡単だ。彼に外気温を感知しそれに感覚として対応する機能はない。がくぽはここぞとばかりにその機能が搭載された自分の端末を恨んだ。この機能に一体良いところが一つだってあろうか。暑さ寒さに負けてやる気が低迷するばかりだ。
 毛布の中で縮こまりもう一度スリープに入ろうと試みるも、今度はエネルギー不足がそれを拒んだ。エネルギー消費を防ぐためのスリープモードに入るためにもエネルギーが要るだなんて矛盾以外になんと呼べばいいのか。ぎしぎしと各関節が軋むのも寒さの所為だろう。


「……さむ」


 主人が何か朝食を用意しているのではと期待してみたが、閑散としたリビングが待っているのみだった。暖房が点けられていた様子もない。そういえば何かイベントがあるからと、昨日から泊まりで出かけていたのだったか。ほつれた髪を引っ張りながら思う。
 兄も兄だ。自分のために暖房くらい点けておいてくれてもいいんじゃないか。そんな気遣いが出来るはずがないか。そもそもがくぽが外気温センサーを搭載していることを彼が知っているのかどうかすら定かではない。知らないのではないか説ががくぽのAIの中では有力だ。


「ん」


 ダイニングテーブルにやかんがおいてあった。
 持ち上げると、たぷんと揺れる水。中を覗いても入っているのは水。

 いやこれをどうせよと

 思わず首を傾げた。
 湯を沸かせというのだろうか。やかんの用意くらい自力でできますが。

 なんなんだあの人訳が分からん。

 さわやかに駄目な笑みで「おにいちゃんだよ!」と裸マフラーを靡かせる初対面時の図が思い浮かんだ。シャット。思い出したくない。
 やかんを鍋敷きの上に戻し、暖房を点ける。濁ったような音が静かな部屋に響いた。
 ついでに棚から充電用の電気コードを取り出して、所定の位置にぶすっとさす。電気代を食うからと主人は直接充電は嫌がるが、本人がいないのだから知ったことではない。もう片方をコンセントに押し込んだ。
 それからちょうど温風を吐き始めた暖房の前に移動して、床の上に寝ころぶ。暖かい。毛布も引っ張ってくれば良かっただろうか。
 そんな事を考えていたら、もう一度スリープにはいれるだけの充電が出来た。

















「神威がくぽ!」

「っはい!」


 一瞬で青い、と認識したのは、ルカの瞳だった。
 青い。いや、青と言うよりは空色に近い。まつげがふるえている。

 まばたきを三回。部屋は随分暖まっていて、もう機能に問題もないようだった。床だけひんやりと冷たいのは、仕方がないことなのだろう。
 気がついたら上体が持ち上がっていたのは、どうやら目の前の彼女の所為らしい。がくぽの服の襟刳りをつかみ上げ、ニア馬乗りのような形でこちらをのぞき込んでいる。長く作られた桃色のまつげがふるえるのが視認できてしまう程に、そちらとこちらは近かった。ふるふると小さな唇も落ち着かない。

 どうしたのだろう。疑問が一つ落ちてくると、次々と瓦解するように落下してきた。
 何故此処にいるのだろう。というかどうやって入ってきたのだろう。ちょくちょく入ってくるがそろそろ進入経路が知りたい。何故自分は襟首を捕まれているのだろう。というかなんでこんなに顔が近いのだろうか。

 とりあえず総括して一言。


「……いま、何時だ?」

「午前九時半ですっ!」


 ごんっ、と後頭部が床に打ち付けられたらしかった。とても痛い。



「全く、はた迷惑な!」

「すまない」

「そもそも床で寝ないでください! 倒れたのかと思って、……こしょうしてしまったのかと思って、」

「すまん」

「びっくりしたんだから、この……ボケナスっ」


 敬語どっか行ってますよ。


「すまん」


 さすがにそんなことはいえないので、その三文字に変えて吐き出した。
 どうやらカイトに自分が家で一人と聞いて、心配に思って様子を見に来たらしかった。そこにべしゃりと崩れ落ちているがくぽを発見して、たいそう肝を冷やしてしまったらしかった。しかし一人を心配されるってどういう扱いなんだろうかと若干複雑に思う。子供型でもあるまいに。

 やかんをそのまま火にかけ、コップを用意してインスタントコーヒーを放り込む。どこぞのマフラー男のように紅茶を淹れる気は起きなかった。
 ルカはというと、ダイニングテーブルでうつむいて、時折こちらを恨めしくにらむばかり。
 いやでも自分は悪いことしてないし、なんでそんな顔されなきゃいけないのだと理不尽を感じないでもない。なんだか眉間にしわを寄らせた彼女の顔ばかりみている気がして癪だ。笑って欲しい。


「……?」

「神威、聞いていますか! だから、今度から充電するときは、」


 何だか変わった形態の思考が浮かび上がった気がする。

 どうにも自分のAIは淡泊で、誰かのように親愛をばらまいたりはしないはずなのに。


「……ルカ」

「なんですか! っと、というか名前で呼ばないで下さい」

「巡音」

「だからなんですか」

「いや、」


 ええと、と言葉を探す。どういうことだ。勝手に発言しないで欲しい。処理が終わらない。
 なんでいま自分は彼女に呼びかけた。彼女の言葉を遮る必要はあったか。
 思い当たらない。故障か。バグは見あたらない。彼女の眉がつり上がっているのを見たくなかった。それだけだ。

 ふわと漂わせた視線が、ベランダの向こうに広がる銀世界をとらえた。
 地上十階から見える街は、すべてがすべて白く染まっている。


「雪、綺麗だな」


「……私はその中を此処まで来たのですが」

「ん、んん」



「……――けれど、確かに。この高さから見ると壮観ですね」



 街がお砂糖菓子みたいですね、とふわりと雪より柔らかに微笑む。
 そうだ、それが見たかったのだと、がくぽもつられて微笑んだ。










**********


甘いのを目指しましたがなんだこれ


雪がつもりました
家族が本気でかまくら作っててちょっとびっくりしました

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一年のはじめ一発目からなんかごめんなさい




**********



「何でバニー!」

「ウサギ年だから!」


 ひゃっほう、と拳を突き上げるカイトを叩き沈めるのにかかった時間、約三秒。







  ばにー!





「こういうのは、ミクとかリンとかがすればいいじゃないの……」

「えー、じゃあめいこねぇがうさぐるみ着るの?」

「もふもふだよ!」

「あーそれはきっついか」

「大体私たちがしてもちょっと残念なだけで何のサービスにもならないよ」

「ミクねぇ開き直りすぎだよ! もっと自分の体に自信持って!」

「いやだって、ねぇ? さすがに長年これと付き合ってきたら、慣れるって。もう望みも……」

「そ、そうかもしれないけどいやそんな悲しいこと言わないで!」

「いいんだよリンちゃん、私もうそんなに期待してないから。リンちゃんはまだ未来があるから、頑張ってね」

「あきらめないでぇえええ!」


 もふもふともふもふがもふもふもふもふしている様を見つつ、メイコははふぅとため息を吐いた。かなり際どいラインの布地が目に入る。いやまぁ、自分だって女性型アンドロイドだ。そーいう対象になってることぐらい十分に理解している。別に嫌悪感なんて感じるほど若い感性もしていない。
 ただこの格好だと足組むと危ないかなぁだとか、しっぽの所為で座ると違和感あっていやだなぁだとか、そんなぼんやりとした不満があるばかりだ。

 その貫禄ある姿に妹たちはもふもふと尊敬の視線を送っていたとか何とか。

 そんな物よりも、とメイコは視線を動かす。
 見つけた桃色は、出来うる全力をかけて身を縮こめていた


「ルカ―」

「……うぅう」


 漏れ聞こえてくるため息に、少々は同情の念も感じる。が、こういうのは開き直ったもの勝ちなのだ。妹にこの業界で強く生き抜いて貰うためにも、メイコは心を鬼にして特に何もしなかった。いろいろするのが面倒だったという見方もある。

 メイコがスタンダードな黒バニーなのに対し、ルカは白バニーだ。純白なのがまた羞恥を誘っているのかも知れなかった。


「強く…生きるのよ」

「メイコ姉さんはそうやって他人事だから!」

「いや私ぜんぜん他人事じゃないんだけど」バニー着てるし「でもそんなに恥ずかしい?」

「恥ずかしいですよ!」

「わ、私に怒らないでよ……」


 理不尽極まりない怒鳴り声にメイコはちょっと眉を垂らす。向こうの方ではふつうっぽいウサ耳衣装のグミが人参スティックをもぐもぐやっていた。こちらの視線に気付いたのか、跳ねるような足取りで向かってくる。その様子は妙に違和感がない。
 あぁ、すっごいはまり役。メイコはそんな事を思う。


「お、おぉお、メイコさんもルカさんもせっくしー! 似合うー!」

「ありがとう」

「……」すごく恨めしそう「グミちゃんは、ふつうの服なのね」

「あ、そうそうこの服ねぇ。可愛いよね。ルカさんのマスターが作ってくれたんでしょ? ありがとーって言っておいてー」

「え?」

「え? 聞いてないの? 今回も衣装デザインはみんなルカさんとこの……――え?」


 何もメイコたちは意味もなくこんなコスプレまがいをしている訳ではないのだ。
『リアル新春シャンソンショーコラボ』なるものを発足させたマスター一行が、皆完璧にネタに走った結果がこれだった。一人くらいガチがいてもいいんじゃないかと思ったが、いないもんはいないのだからどうしようもない。
 そんな訳で、せっかくだから個々以外にも集まって一曲何か、と衣装も合わせ、撮影に臨んだのが今日だった。


「ます、たー……」

「え、え? な、なんか言っちゃだめなこと言った? なんかルカさん信じてた者に裏切られた人の顔に……!」

「そっとしておいてあげなさいな」

「えっ」

「ところでめーねぇめーねぇ」ぴょこん、と机の下からもふもふ二号(リン)が飛び出る「レン知らない? さっきから居ないんだけど」

「さぁ、確かそっちはカイト達の所と一緒に歌ったのよね?」

「そーそー私カイトにいと歌ったよー。レンはがくぽんと」

「バナナスとー、リンちゃんとカイトさんのコンビってなんだっけ?」

「……リンカイ点?」

「なんかそれ違うくない?」


 かっくりグミが首を傾げるのにつられて、リンもかっくりと首を折る。
 因みにぐったりと床に沈んでいるカイトはというと、通常衣装に百均かなにかのうさぎ耳をつけただけといういっそ切なくなるほどの手抜き加減だった。この完璧装備の女性陣の中、そのチープ差が浮いている。


「というか、カオス……」


 さめざめと泣くレンといっそもうどうでもいいの境地に達したがくぽとがバニーボーイ姿で部屋に入ってくるまで、後五秒。








*********


新年早々ごめんなさいというかなんというか、もうそろそろ「新年(?)」みたいな感じです

がくぽとレンもちゃんと出したかったんですが力つきました
いろいろと、駄目な気しかしないわ!

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cacophonyを聞きながら

当たり前のようにぽルカですが何も問題はありません



**********



『新曲、ですか』

<right、よく分かったな>


 ディスプレイ越しに指を鳴らす音が聞こえてくる。VOCALOIDエンジン内に送り込まれたMIDIのデータに指を当て、ルカは其れをまねるようにして一つ音素を飛ばした。
 緩やかに流れるメロディは、二つのトラックに分かれて螺旋のように絡み合っている。独唱、特に英語での歌い上げを得意分野とする所有主にしては珍しいラインだった。
 とはいっても何度かデュエット曲を作ったこともある。無理矢理に男声まで担当させられた時のことを思い出し思わず軽く眉を寄せていると、そんなルカの様子を知ってか知らずか、所有主はいかにも弾んだ手つきでそのうち一つのトラックをルカに読み込ませた。
 まだ歌詞の載っていない、音だけの羅列。
 平坦なそれを軽くなぞってから、ディスプレイの向こうを見上げる。


『マスター、歌詞は入力なされないのですか?』

<まぁちょっと待てって>


 やけに楽しそうな声音である。なんだか嫌な気がして、しかしてルカはじっとりと画面の向こうへ視線を投げるだけに留めた。
 そうして少しもしないうちに、ルカのすぐ隣にもう一声のVOCALOIDが現れる。

 頭頂で括り上げて猶腰より下るような長い藤色の髪と、それと同色の睫毛に縁取られたマリンブルーの瞳。両方の意味で時代錯誤とも取れるような不可解な衣装に身を包んだ彼――恐らく男声であろうVOCALOIDならば、其れで間違っていないはずだ――は少しだけ困惑したようにルカに微笑みかけた。

 このPCにダウンロードされているVOCALOIDは、ルカだけのはずである。
 起動されてから一度も体験したことのない状況にルカはぱちくりと瞬いた。


『ま、マスター、この方は』

<今回の曲じゃルカに男声を出させるのも無理があるかと思ってな。声の親和性も高いって聞いたし、入れてみた。お前の一つ前身に当たるか。artist vocal01:gackpoid……えーっと、がくぽ、だ>


 その言葉を受けてか、彼は緩やかな笑みを象ってルカに向かって手を差し伸べた。握手、とディスプレイの向こうから言われ弾かれるようにしてその手を握る。
 初めて触れる他者の体温は、自らの物よりも随分と暖かで、ルカの手を容易に包み込んでしまうほどに大きかった。
 そうしてつなぎ合った両手を軽く上下し、がくぽは口を開く。



「         」



 恐らく、


『え……?』

「 ……?」


 彼は、がくっぽいどは、宜しくだとか、そういった言葉を吐いたのだろう。
 しかしその言葉はルカの認識には届かず、ただ音素の羅列であるという印象しか残さなかった。母音と微かな歯擦音のみで構成されたその音の意味は取れない。
 決定的に何かが違う。それがなんなのか、ルカには理解が及ばない。

 ただ、その音の連なりでさえ美しいと感じられるほどに、がくっぽいどの声は美しく、その事実だけがルカを打った。




  重ならない声









 一通り歌詞の打ち込みを終えると、微調整も程々に所有主はVOCALOIDeditorを終了する。そんじゃ、適当に練習しといて、そう言ってがくぽとルカをそれぞれのフォルダへ送り遣ると、忽ちDAWを立ち上げてオケの再調整を始めてしまった。どちらかというと調整作業よりも音遊びの方を好む所有主にとって、巡音ルカやがくっぽいどといったVOCALOIDは『パートナー』というよりも『人声の素材元』という意識が強いのだろう。少なくともルカはそう認識していた。
 そうして手の空いてしまったルカは、何となく手持ち無沙汰になってしまったような気分でディスプレイの向こうを見上げる。

 がくっぽいどは、手渡されたデータを流暢に歌い上げて見せた。音取りの間中もその音の意味を理解することはとうとう出来なかったが、単純な歌唱能力が非常に高いことだけは取って分かった。
 どうにも、使っている言語が違うかのような違和がある。ハ―モニーを絡め、メロディを流し、同じテンポを刻んでいるというのに、何かが違って仕様がない。
 なにが違うのだろうかと考えるものの、ふと考えたその先に何があると気づきルカの思考は停止した。

 所詮自分はアプリケーションソフトウェアの内の合成音声の一声だ。他の声とコミュニケーションを取ったところで、所有主になんの利益が生まれるというのだろう。


『今、わたしは、』


 何を考えていた?

 がくっぽいどと握り合った右手を見つめる。
 包み込まれるように大きく、骨ばった手。

 その体温がまだ残っているようで、思わず手を握りしめたところでフォルダの扉がノックされた。


「   、      」

『――……なんでしょうか?』


 ひょこりと藤色が現れる。その手の中には先ほど手渡された音楽データ。


「   、          」

『あぁ、マスターはいつもわたし達の調整は二の次ですので、そこまで入念な練習は必要ないのですよ』

「  、」

『不安になる思いも分かりますが、わたしたちの不備はご本人で補ってしまうような方なので……ですが、そうですね、練習くらい、してもお困りにはならないでしょう』


 ほら、大丈夫だ、とルカはデータを引き出しながら思う。
 元々同じエンジンを搭載しているのだから、ある程度ならば意志の疎通が出来る。
 どうにも食い違っている感は否めないが、だからと言って困ることは、ないはずだ。





 はずだった。







<合わない>

「『……」』

<……俺の打ち込みが悪いのか?>


 画面の向こうで、所有主は眉を寄せて言う。
 それは二人に対する皮肉と言うよりは、自分に対する確認のような響きを伴っていた。

 ぶつぶつと思案を口に出しながら他のソフトを呼び出し、メロディを確認していく。
 その呟きを聞きながら、隣でルカと同じように不安げにディスプレイを見上げていたがくぽに笑いかけた。大丈夫だ、所有主の腕はルカが一番信頼している。滅多な問題でも無い限り、あっさりと解決してしまうに違いない。問題は多いがそれを解決する手も早い人間なのだ。
 苦笑のような形になってしまった笑みだが、がくぽの不安を和らげるのには十分だったらしい。向こうもまた少しだけ困ったような笑顔を返してきた。言葉が通じずともこれだけで十分。何度か重ねてきた自主練習の内に、二人の間にはこういった形のコミュニケーションが成り立ち始めてきた。
 それがなんだか穏やかで、愛しい物のようにルカには思えた。


 未だにぶつぶつと頭上で思案する所有主と、隣でほほえむがくぽ。それから自分。








『マスター、最近いらっしゃいませんね』

「     」

『難航してらっしゃるのでしょうか』


 ここの所、パソコン自体は起動していても、二人が呼び出されるということが無くなった。所有主が伴奏を作成している段階ではよくある状態だが、それでもやはり気になるらしい。がくぽは時折ルカのフォルダを訪れた。


『あぁ、そこはもうすこしアタックを効かせた方が良いかもしれません』

「   、           、   ……」

『はい?』


 そうして自主練習を行っていると、不意にVOCALOIDエディターが起動される。順々に呼び出され、ルカとがくぽはピアノロールの上に降り立った。
 いつものごとく、ディスプレイの向こうでは所有主がこちらを見ている。
 そうしてゆっくりを口を開き


<間違えた>


『え?』

<いや、呼び出すつもりは無かった。間違えてデータダブルクリックしちまったんだ。すまん>

「  ……」

<俺もちょっと疲れてるのかもね。ここんとこ根詰めだったし。一応未練とかもあったから頑張ってみたが、やっぱ無理だったわ>

『未練?』

<あー、うん。このデータは没。無し。今から削除するから、お前等は帰っていいよ。間違えてすまん>

『……、没?』

<そう、没>

「……」


 隣でがくぽが絶句しているのが分かった。
 それもそうだろう。
 彼はこの曲のために――ルカが正常に出せない音域の男声を出すために――購入されたのだ。もちろんその一曲のためだけでは無かろうが、それでもがくぽにとってはこれが初めて与えられた曲で、思い入れも並の一曲ではないだろう。

 それが、没であると。


『……っどうしてですか! わたしたちの歌い方がいけなかったのならば、修正を願います!』

<……いや、そういう問題じゃなくて>


 身を乗り出し、訴える。この曲は歌いたい。
 自主練習をしただけでも分かるのだ。歌うだけの存在でも、その歌の背景くらいなら分かる。
 この所有主の作ったにしては珍しく柔らかで、日溜まりのように暖かい、そのメロディだけて作った方にも思い入れ感じられた。

 それなのに。
 ふつりと胸にわき上がったのは、怒り。
 歌いたいのに。向こうだって歌わせたいに違いないのに。
 そんな理不尽な感情を声に込めてルカは叫ぶ。隣でがくぽがあわてたように見てきているが、そんなことに構っている余裕はない。


『マスターのことですからどうせパラメーターも禄に触っていな、』

「   !」


 不意に腕を捕まれた。
 大きな手が。あの大きく温かい手が、殆ど加減無しにルカの腕を掴んでいる。痛みも感じるそれに、けれどもルカは怯むことも出来なかった。むしろその痛みで怒りのベクトルががくぽへと方向転換する。


『何をするんですかがくぽっ!』

「      !           ……!」

『歌いたいんじゃないんですか?! がくぽだってあんなに楽しそうにっ』

「    !                  !」

『何で止めるんですか! 何で、二人ともっ』

「   !」

『何を、……何と言っているんですか、がくぽ……』


 ルカにはそれが分からない。







**********

次の記事に続きます

拍手[4回]


上の続きです


**********




 無言のままエディターは閉じられ、そのままそのデータは消されてしまった。
 がくぽはその光景を見ずに自らのフォルダへ帰って行ったし、消去を終えた所有主はさっさとパソコンの電源を切ってしまう。

 その場に残されたルカは妙な虚脱感を抱えて暗くなったディスプレイを見上げた。





  重ならない声 2






 もしかしたら、何となく言いたいことが分かるだなんて、ルカの思いこみだったのかもしれない。
 いつも浮かべていた柔らかな笑みの裏には、どんな感情が隠れていたのだろう。なぜ自分は其れを読みとれなかったのだろう。音の連なったばかりの声。一体何を言わんとしていたのか。


『……分からない、です』


 VOCALOIDに泣く機能は備わっていない。泣いたような声を出すことは出来ても、PC内で与えられただけの外形が涙を出すことはない。ただ歌声の表情付けの為に搭載された感情だけがぐるぐると渦を描く。
 理解できないことへの不満や、一度与えられた歌を取り上げられた喪失感。
 ルカが声をふるわせた理由は、言ってしまえばそんな物なのかもしれない。









 それからしばらく、


『……』


 所有主がエディターを開くこともなく。
 がくぽがデータを片手にフォルダに現れることもなく、ルカは一人で過ごしていた。

『……暇ですね』


 これまではそれが普通だった。所有主は曲作りの方に集中しがちで、ルカに構うことは少ない。
 必然的にルカは一人で過ごしていた。なのでそれに退屈を覚えるなどと言うことは、なかったはずだ。

 がくぽに握られた右手を見て、その手で掴まれた腕をなでる。
 もうさすがに痛みはない。


<ルカ>


 所有主から声がかかったのは、そんな時だった。


『マスター』

<長らく放置しててごめんな>

『いえ……』


 自分が呼ばれたからにはがくぽも呼ばれているのだろう。
 そう思って辺りを見回すが、広がったピアノロールに例の紫色は見られない。


『あの、マスター、がくぽは』

<呼んでない>

『そ、……そうですか』


 ぴしゃりと言われた言葉がまるで拒絶のように感じられた。
 所有主はさくさくとピアノロールにノートを並べていく。確かめに再生しようと言う様子もない。

 ルカはそれをしばらく眺めていたが、一つ息を吐いてディスプレイを見上げた。
 今聞かなくては、もうずっと聞けない気がする。あらゆる根本の話だ。


『前々から聞きたかったのですが、質問しても宜しいでしょうか?』

<うん? いいよ>



『なぜ、わたしはがくぽの言葉が理解できないのですか?』


 同じVOCALOIDなのに。
 同じエンジンを積んでいるのに。
 同じものの、同じ一つのはずなのに。


 がくぽの思いが、分かりたいのに。



<何でって>


 その問いに、画面の向こうで所有主が瞬きをした。ように思われた。
 予想もしていなかったと言わんばかりの様相に、もう一度問いかけようとする。


『何で、』


<発音記号が違うんだから当たり前だろ>


『え?』



<英語ライブラリで十分だと思ってたからなぁ…でもさすがに英語ライブラリで日本語の曲は、そりゃ無理があるよな>

『え?』

<英語ライブラリ縛りにも未練はあったんだけどさ。うん、俺もこの曲、好きだし>



 かち、とマウスをクリックする音が聞こえた。
 ルカの口から声が飛び出す。

 その声を聞き、所有主は満足げにうなづいた。


<巡音ルカ日本語ライブラリ、正常に発声。そんじゃあ、作り直したの歌ってもらうから、>


 がくぽ、連れてきて。




「……――はいっ!」


 がくぽと同じ音を吐き出して、ルカはほほえんだ。










   二つの言葉で生きる僕らに、祝福の架け橋を



**********


英語ライブラリと日本語ライブラリって発音記号違うらしいぜ!と聞いて駆けめぐったのがこの曲で、なんかこんなん出来てました
設定とかがえらいカオスですが、取りあえずこんなものでもぽルカと言い張ってみます


ちなみにがくぽのせりふは書いてるときには考えてましたが後書きを書く今となっては何か全部忘れました
そしてよく考えたらがくぽがある意味一言もしゃべっていないという衝撃の事実に今気づきました

拍手[6回]

istoさんからのリクエストで『料理をする大人組』

お祝いでも何でもない感じになりましたが、受け取って頂ければ嬉しいです。




**********



「ほら早く作りなさい。私の仕事がないじゃない」

「初っぱなから何言っちゃってんのめーちゃん」

「味見担当か」

「メイコ姉さんは少し待ってて下さいね」

「え、二人とも突っ込まないの? ねぇちょっと」



  hpを小さじに少々





「ん、これおーいし」

「あら、そうですか? ちょっとバジルが足りないかと思ったんですが」

「私はこれぐらいで良いわねぇ。がっくんは? ほらルカあーんしてあげて」

「メイコ姉さんっ」


 なんだかなぁ、と口元に木ベラをやりながらカイトは思う。衛生面を気にしているのか、フライパンをふるうがくぽがそれを嫌そうな目で見ていた。外部端末に衛生もなんにもないじゃんとカイトは思うが、新式の弟分としてはそうでもないらしい。VOCALOIDというのはバージョンを重ねるごとに人間味を増していくよう作られていた訳ではないはずだけれど。
 抱えたボウルの中には、どろりとパンケーキの種が入っている。カイトが混ぜ、その隣でがくぽが焼いていくという単純作業。もう片方の手で根菜のぱりぱり焼きまで作っているのだからカイトの弟分ときたら優秀である。

 半ば突きつけられるようにして差し出されたハーブ入りのパンをもそもそやっている彼は、そのもそもそしたまま顎でカイトを指し示した。示されたルカはぱちくりと瞬きをして、一切表情を変えないままに残ったパンを隣のメイコに手渡した。役割分担が出来ている。





「ルカ」もさもさ「そっちの」もさもさ「皿取って」


 ちょっとバター足りなかったんじゃないのこれ。


 メイコはソファにぐったりともたれ掛かりほろ酔い加減でこちらを伺っている。

 それぞれのマスターたちが「カイトメイコがくぽルカでなんかやろうぜ」と言い出したのが昨日の早朝のこと。それから思うとずいぶん行動力のある三人組だな、とマスター達のこもりきって構想を練っている部屋の扉を伺う。先ほど差し入れを持って行ったときには「どうします?」「和風ロックとか作りたいんですよね最近」「もういいよ全員ジェンダー全開振り切って人外声やろうぜ」「「おぉ!」」「いいですね和風ロックで人外声!」「妖怪系ですか!」とかやっていた。ストッパーのいないコラボになりそうだ、とそれぞれのマスターのことを思いつつ四人はため息を吐いたのだった。
 そうして、そんなマスターたちの事を後目にカイトの「じゃあ俺らやることないし、差し入れでも作ろうか」の言葉から始まったVOCALOID食堂入りは、全員にアルコールが行き渡り、そろそろ佳境を迎えていた。

 黙々とパンケーキを焼いていたがくぽが、やっぱり無言のままそれを皿にもりつけ差し出してくる。受け取り、メイコに渡しついでに一つ拝借。べろんとくわえたままでカイトはチャーハンの入ったフライパンをふるう。脳内再生はもちろん例の曲だ。


「ルカー、ホットケーキ食べるー?」

「あ、いただきます」


 もうこれ差し入れる気ないだろ。
 もさもさと食べつつもカイトはそう思う。ちなみに隣ではがくぽが全く同じ状態でパンケーキを食んでいた。
 ぼうっとしたような瞳で自らの手元を見下ろし、もう一袋パンケーキミックスをあけようか迷っているらしい。やめとけやめとけと仕草で伝えた。
 きちんとそれが伝わったのか、弟分はぱちくりと長いまつげを羽ばたかせてからうなづく。オープンキッチンの向こう側、リビングとしても使われているダイニングルームでは、ルカとメイコが所狭しと机に皿を並べていた。先ほどから紙パックのアルコールを啜っていたメイコは赤ら顔で分解に精を出しているよう。「飲み過ぎないで下さいね」そうメイコを窘めるルカの手の中にも、紫色のマグカップに入ったカルーアミルクがあるのだからおかしな話だ。
 それを見たがくぽが肩を跳ねる。


「……巡音、それ俺の……え……あれ?」


 自分の手元にある来客用のコップとそれとを矯めつ眇めつ、首を傾げる。さっき自分で手渡していたというのにひょんなものである。
 何か言いたいらしい弟分の声はしかししおしおと萎れていき、終いには口を閉じて不本意そうに眉を寄せるだけに留めた。元から言葉の足りない質である彼は、飲酒をするとさらに口を噤むようになる。一度大ヘマをやらかしてからというもののどうしてもアルコールを摂取するとそちらの分解にメモリを割かなくていられなくなったらしい。その大ヘマの場に居合わせたものとしては、それが賢明だとカイトは思う。


「カイトー! がっくんもー、こっち来てそろそろ食べましょうよー」


 一方でアルコール分解に慣れ親しんでいるメイコは逆に饒舌になる。赤ら顔にへろんとした表情は酔っぱらいそのものだが、だからと言って思考までは緩んでいないので全く油断は成らない。
 ソファから顔を出しひらんひらんと手を振っている姉弟機に応え、後かたづけもそこそこにさせてそちらへ向かうことにする。


「カイト兄さん、飲み物はどうしますか?」

「あー俺はねぇ、この前買ったカクテル缶があったから、それのんでよっかな」


 ちなみにルカとカイトは特に変化をしないたぐい。


「何ようカクテル? そんなのジュースじゃないの」

「俺はめーちゃんと違ってアルコール分解そこまで好きではないから」

「神威、そっち取っていただけますか」

「ん」


 そうやって銘々好きなように食べたり飲んだりをし始める。
 そろそろマスター達も煮詰まり出す頃だろう。ぞろぞろ出てきたら出迎え、適当に酒でも飲ませてやればいい。


「あーなんかこういうのってさぁ」


 いいなぁ、なんかいいなぁ。
 どこか空寒い天井を見上げながら、カイトはつぶやく。








(家族って感じ、)



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前々から書きたかったシュチェーションだった為、リクエストをいただいた瞬間「え、なに頭の中読まれたの」と本気で焦りました 本当にありがとうございます


ページの方のチェックを怠っていたため、書き上がりが非常に遅くなってしまいました。
遅れてしまってすみません

こんな駄文でも宜しければ、どうかお納め下さいませ



引き続きリクエストは承らせていただきますので、
大木に「こんなん書いて」みたいなのがありましたら、専用記事のコメントか拍手になんなりとお願いします

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小話です

小話です


大事なことなので三回言います

小話です



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「ミクねえミクねえ」

「ん? どうしたの?」

「マスター達が女子組は休憩して良いってー。今ルカちゃんがお茶入れてるから、休憩しよー」

「あ、そうなの。わかった」



  はにーたいむ







 緑の髪をふわりと翻らせた姉は、主人の居る部屋の扉をチラと振り返ってから「確かマスタが要らないって言ってたクッキー、缶であるからとってくるね」と台所の方へ行ってしまう。「一度鏡音の調整をしてみたかったんだ」とレンを構いだした主人のことが気になるのだろう、と垣間見えた姉の隙をうかがってリンは微笑んだ。いつでもどことなく醒めた"初音ミク"らしくない姉は、けれどもきちんと"恋するおとめ"だ。

 その背中に「リビングにいるからねー」と呼びかけ、リンはくるりと方向転換した。
 世では初音ミクの発売記念日が迫っている。
 ミクを溺愛する彼女のマスターが『祝いの曲を作った。合唱するぞ』と言い出したのは先週のことだった。

 そうしてそれが鶴の一声となり、『ミク誕生祝い合唱企画』は立ち上がった。すでに楽曲ができているとは言え、余りに誕生日に向かないその曲を編曲することから始まったその企画は、中々に切迫したスケジュールになっている、らしい。

 そして、今日。
 第二回集合調整と銘打たれ、一応コミュニティメンバーの全員が、ミクのマスターの所有するマンションに集まったのだった。

 そんでもって


「めーねぇ、クッキーもくるってさー」

「あら、やったじゃないの」

「クッキー!」


 豪奢なソファでくつろいでいたメイコとグミが歓声を上げる。
 コミュニティの中でも比較的起動されて間もないグミは、どうやらこのミクのマスター宅に訪れるのは初めてだったらしい。クッションを抱き、落ち着きなく辺りを見回している。


「こらグミ、あんたちょっと落ち着きなさい」

「えーっ! だってこんな良いおうちにミクちゃん住んでるなんて聞いてない!」

「そりゃ言いふらすようなことでもないでしょうよ」


 広い綺麗景色すごい! と騒ぎ立てるグミをたしなめ、メイコはリンに向かって「座りなさいな」と自分の横の席をたたく。それじゃ遠慮なくおじゃまを、と座ると、ちょうどお茶を携えたルカとクッキー缶を抱いたミクが部屋にはいってきた。
 甘い香りが部屋に広がる。


「砂糖はこっちですので」

「はいご開帳ー」

「うわっここのクッキー食べてみたかったんだよね! ミクちゃんこれ食べていいの?」

「ある分なら幾らでも。あ、でもこのアーモンドが載ったのは残しといて。マスタが食べるから」

「いえっさー!」

「ルカ、ミルクってある?」

「あぁ、こっちです。グミちゃん、ちゃんと私たちの分も考えて食べて下さいね」

「わかってるよう!」

「あ、レンたちの分どうする? 残しとく?」

「いいわよ、食っちゃえ食っちゃえ」

「めーねぇ、あくどい……!」






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ガールズトークって、かわいいよね!
お菓子もりもり食べる女子ボカロたちを妄想したくて書いた。後悔はしていない

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我が家設定のカイメイ初対面
短編連作ボカロ家族はカイト→メイコ→鏡音→ミク→がくぽ→ルカ→アカイト→グミ→AHSの順番でインスコされたという設定ですが特に生かされてはいません
海外組はまだノータッチ



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 インストールされ、起動して三日目。
 メイコはマスターにぽんと放り出された部屋で、自分の姉弟機に当たるVOCALOIDと対面していた。





   コーリング





「初めまして、カイトです」

「あ、ああ、初めまして。メイコよ」


 ぺこっと頭を下げる様子から見るに、向こうも起動からそう時間が経っているわけではないらしい。恐らく稼働時間も、一年に満たないことだろう。
 VOCALOIDシリーズの立場としては、とメイコは愛想を作りながら考える。一応『姉』として意識プログラムを組まれているわけだけれど。


「えっと」稼働時間の短い、けれどやたらと人間くさい仕草で彼は頬を掻いた「コラボとかする予定だから、って聞いたんだけど」

「そう、らしいわね」

「単刀直入に言うとさ、俺、あなたのことを何て呼べばいい?」


 姉さん、メイコさん、MEIKO? それともメイコちゃん?

 指折り数え、こちらを伺ってみせる。
 マスターたちの様子を見るに、どうやら一度二度のコラボで終わるような仲ではないらしい。長い付き合いになるのではというのを彼も見越しているらしい。
 それでもっての、呼び方だ。

 一応メーカーからの扱いとしては『姉弟機』
 VOCALOIDシリーズ"MEIKO"がリリースされたのは"KAITO"よりも遅い。CR社のVOCALOIDシリーズは多くユーザーから『きょうだい、家族』として見られている。リリース順にメイコが『姉』でカイトが『弟』という風にされているのだ。
 しかし、彼らの場合、起動されたのはカイトが先なのだ。

 なんだか良く分からないことが起こっている、とメイコは外部端末の人工皮膚越しに起動してそう経っていないAIに手をやる。


「そ、そうねぇ」

「困ったな」本当に困っているのかいないのか、眉を寄せつつも笑って彼は首を傾けてみせる「どうやって呼べばいいんだ」

「初期設定ではどうなってるの?」


 VOCALOIDシリーズには、同シリーズそれぞれに対する反応を設定されている。ちなみにMEIKOからKAITOに対する初期設定は『KAITO』で『庇護』

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