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白糸抄を聞きながら

雰囲気エロを目指しました いろいろ撃沈しました
がくルカというよりルカぽです ルカののキャラがもうえらいことになってます

女郎言葉もどき、それっぽい描写等、苦手なかたは読まないでください 不快になるばかりと思われます


わけわからん設定ですが書いてる人も訳分かってません


**********




 甘い匂いがする。
 脳の芯から感覚を鈍らせるかのような甘い、甘い。
 頭痛のするようなそれに息を呑み、神威は顔に降りかかりそうな蔦を払いのける。足下はふわりと浮くように踏む心地のしない朽ち葉が折り重なり、地が見えない。
 進めば進むほどに甘い匂いは強くなる。どろりと液体が溜まるかのようだ。



『西の森に、魔性のものがおわすと聞いたの。ねぇ神威、それはまことのことかしら?』



 鈴を鳴らすような声が頭の横で聞こえた気がした。襲うのは鈍重感。眉をしかめ額にかかった髪を掻き上げ、吐き気を振り払うようにして進んでいく。
 幼い主に申しつけられた戯れを、本気にとってしまったのがいけなかった。
 どうでしょうねとでも風に流してしまうべきだった。神威は自分の愚かしさにほとほと嫌気がさす。

 生まれたときから神聖の子とされた神威の主は、それ故に魔性を信じては成らない。彼女がそれに惹かれるときこそ、それが彼女に取り入らんとしている時だ。そんなものは在らぬ存ぜぬとせねばならない。
 しかし彼女とて凡庸ならもう婚姻も済ませるような歳だ。高等な学を与えられているならなおさらこの世で、少なくとも存ぜぬでは通らぬ。

 彼女にとって魔性とは、存せぬ在らぬ架空の物象。

 彼女もそれを理解しているはずだ。それでもなお神威に確かめてこいと言い放ったのは、彼女なりの冗句のつもりだったのだろう。
 それを飄と流せなかったのは神威の認識不足だ。

 甘い匂いに酔う。息が上手く吸えぬ。
 脳が空気を求め出す。吐く息絶え絶え、不意に神威の視界が暗転した。
 踏み心地のない足裏の感触が、さらに遠く希薄になっていく。




「……――っ」




 が、倒れない。
 なんとか、重みを寄せるようにすぐそばにあった樹木に寄りかかった。そのまま崩れ落ちそうになる膝を叱り、体勢を立て直す。世話になったばかりの木から離れようと手を付くと、ぬらりと嫌な感触が返った。
 蜘蛛の巣を潰したらしい。謝罪の念を込め、しかし怨も込めつつ粘りを取るように手を開閉した。

 出口はまだか。そろそろ森の向こうにたどり着いても良い頃合いのはずだ。
 向こうの村に休まるような場はあったろうか。そう思案しながら顔を上げた神威を出向かえたのは、苔蒸し立ち上る岩場と質素に流れ落ちる滝。

 は、と自分の息を吐く音が響きそうなほどに広く静かな空間が広がっていた。

 このような場所がこの森にあったことだろうか。いや、ないはずだ。そもそもこの森に川は通っていない。滝が出来るわけがない。
 ふと力が抜ける。まとわりつくようだった甘いにおいは嘘のように消え、かすかに涼やかな薄荷の香りが漂うばかり。


「ここは、」


 力を抜けるに従い崩れ落ちた神威に、紅梅色の何かが被さった。
 否、





「――ぁ」


「あぁ、お待ちしておりました、愛しい愛しい背の君」




  、、、
 ず るり と、

        女が落ちてきた。


 鮮烈なまでの色を取る五衣から、ぬらりと白い手が抜き出で、神威の頬を撫ぜる。
 冷たく柔らかな指先が頬から熱を奪い去っていった。頬の熱だけではない。その指先が神威の足から、腰から、全身から何かを抜き取るかのように、立ち上がれない。力が籠もらない。めい一杯に開いた瞳に、愉悦で歪んだ瞳が移り込む。空の色よりなお澄んだその水色に、背筋から順ぐり、小さな虫が這い上がるように肌が泡立つ。
 悲鳴が喉の奥に詰まった。もつれる舌を何とか制し、蚊が飛ぶより小さい声で神威はうめく。
 その小さな悲鳴を聞いてなおも女の手は止まない。どころか尚更嬉しそうに、するりぬらりと頬から下り、首筋へ。




「お、おまえは、」






「わたくし? お忘れになったのありんすか、背の君
 酷ォいお方と罵りはしませぬ。なんせ幾年、人にはちと長過ぎまする」



 否否、



「わたくしは女郎。女郎の蜘蛛の、巡音ともうしまする」



 蜘蛛が落ちてきた。









   くものいと










 蜘蛛はこの世のものとは思えないほどに美しい女の姿をしていた。
 その美貌は世上の不条理と不平等を煮詰め焚きしめ人の形にこごらせたよう。小股の切れ上がったような体線がなめらかな曲線を描いているのだろう。鬱金と黒檀が目を刺す五衣は、合わせも緩み襦袢も見えず、しかしぬらりとしたたるような線を僅かにのぞかせるばかり。
 もっとも蜘蛛の美貌に見とれるどころか、苔蒸した地に衣が汚れるのではないかと危惧する暇さえ神威には与えられない。意識は溺れまいと必死でもがくが、紅梅色の海にからめ取られていく。

 その唐紅より赤い舌に翻弄されている合間、いつの間にか解かれた自分の髪と絡まる蜘蛛の髪がぬらりと光る蜘蛛の糸と気づき、神威はやっと目の前の女が魔生のものだと気づいた。

 けれどもすでに遅しと言わぬばかりに紅梅の波が神威の正気を握りしめる。
 ぬらりとその白い手が神威の肌の上を這い回った。冷たいものがぱたと滴り落ちてくる。


「……っ」


 漏れそうになる声をぎりと噛みしめ、張り付いたように動かない腕に力を込めた。
 みしりと軋む音は、絡めた糸か神威の骨か。折れたとて構いはせぬと力に任せ、ぐいと引く。


 ぶちぶちと粘り気のある音がした。しかし確かに矧がれた。
 重たく未だ緩慢な腕で、自分の上に覆い被さる蜘蛛の髪を掴み、引く。べたりと粘つく感触を想像したが、引いたこちらが申し訳なくなるかのようなか細く指通りの良い女の髪であった。
 まさかそんな風に引き矧がされるとは思うても居なかったであろう蜘蛛は簡単に神威の上で上体を起こす。自分の頭に手をやり、離れていく神威の腕を見、やっとされたことに気づいたように赤い舌をのぞかせた。



「……痛ァい」



 ゆらりと、しかし涼やかに澄んだ硬質な声。
 やっと正常に空気を取り込む余地を手に入れた神威は、息も絶え絶え蜘蛛を睨みつけた。


「御酷い事をなさる。髪は女の命にありんすえ?」

「お前が、止めぬから悪いのだ」

「あらあら、わたくし止めろとは一個もこの耳に入れません。お悦びになっていたのでは? お好きでしょう?」

「ほざけ」


 荒い息の合間から吐き捨てるように言うと、蜘蛛はことりと「酷ォい」と呟いた。
 神威はその頬に向かって手を伸ばす。冷たい肌。それより尚冷たいそれは、


「……泣く女に犯される趣味など、私にはない」


 涙。


「あら? あら、あら、あら」その手に触れられて初めて気づいたように蜘蛛は自らの頬に手を押し当てる「これは、これは」

「泣くほど嫌なら、何故触れた」

「あら、背の君、それは、それはお間違い」


 ぐしゃりと整えられていた前髪が蜘蛛の瞳に覆い被さる。


「本当に、忘れてしまわれたのですか?」







 蜘蛛は泣いた。
























「何も居らなかった?」

「……はい」

「そう、それは残念、――ではなくて、よろしいことね」


 ほんの少し悪戯めかして少女は言ってみせる。
 それに対する神威は、穏やかに笑っているばかりだ。
 少しは怒るとか、すれば良いのにと少女は頬を膨らませる。そう言ってやれば彼は困るだろうか。口を開きかけたところで、別の言葉が口をついた。


「――神威、おまえ、髪留めをどうしたの?」



 平常ではいつも頭頂近くで結い上げられている神威の長い髪が、今日今に限っては下ろされ、そよ風にも舞わんばかりになっていた。
 森へはいる前はいつも通りに結っていたはずだ。そう言ってやると、本人は今気づいたかのように自分の頭へ手をやる。


「そうですね、森で落としたんでしょうか」

「鈍いわね」

「……」

「……気にしなくても、髪留めくらいわたしがまたあたえてあげる。それよりも、――」


 そうして少女の意識は他へと移っていく。
 神威が自分の手に張り付いた蜘蛛の糸の切れ端を見つめていたことにも気づかない。
 もちろん、その小さなつぶやきも。




「……取りに、還らなくては」























 森の奥、神威の髪留めをひしと抱きしめ、蜘蛛は口付く歌を飲み込む。


「御前様は私のもの」











「どうぞ、わたくしを朱の信女にしてくだしゃんせ」









**********


後悔はしているが反省はしていない!
支離滅裂にもほどがあるな!





一応昔々にがくぽが小さい頃ルカさんが命を助けてあげたとか、そういう裏設定というか主要設定というかがあったようなきもしますがあっさり捨てたらなんじゃこりゃです
白状するとそういう描写がやりたかっただけです
雰囲気エロ!雰囲気エロ!直接描写なし!ふわっとふわっと!



ちなみに主のキャラはリンちゃんのつもりで書いてましたが、ミクグミリリィあたりでもいけそうなかんじ

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