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人間パロディ
ルカとミク姉妹がひたすらいちゃいちゃいちゃいちゃするだけの小話
いや、百合ではないですよ
姉妹愛ですよ
**********
「ルカちゃん、ルカちゃん」
「なーに、ミクちゃん」
ふわり、ルカちゃんの髪が翻る。
ふざけて作られたお人形さんみたいな桃色の髪。きゅっとほそまった目は、今日は黒色。珍しくカラーコンタクトを入れてないのは、いつものようなゴシックドレスではないからだろう。
ルカちゃんは私の知る中で一番制服の似合わない十七歳だ。
髪の色も大人っぽいのも全部全部地味なブレザーとちぐはぐで、あみあみ。
自分のこと言えた義理かって言うと、私は案外似合うのです。これはちょっと自慢。
「スカートめくれ上がってるよ」
「やぁぁああ!」
デモソング
悲鳴を上げてしゃがみ込んでしまったルカちゃんは、慌てて身だしなみを整えてから下がった眉尻でぎゅっとこちらを睨みつけた。
あんまり人の目を引くから、駅のホームでしゃがんだりして欲しくないな、なんて思いながら私はそれを見下ろす。
「いつからっ?! いつからっ?!」
「んー結構前から?」
「な、なななな、なんで、なんでもっと早く言ってくれないの……」
「いや、ルカちゃんきちんとアンダーパンツ履いてるんだえらいなって思って」
「そこまで見えてたの?!」
見る見る内にルカちゃんの顔が真っ赤になって、涼やかな瞳がぐしゃりと湿る。
ぱくぱくと死にかけた金魚みたいに口を開いて閉じて繰り返し、それからルカちゃんはもごもごと何事か呻いて頭を抱えてしまった。そんなに気にすることかなとわたしは自分のスカートをつまみ上げる。下に履いてるならそんなにって思うのは私だけなのかな。ちらりとのぞくトレパンにやぁと挨拶。
スカートひらり見せつけるのよ、なんて戦法をする予定はないのです。
そんな事を思っている内にもルカちゃんはうるうると瞳を湿らせて、もう目尻が赤くなっている。泣き虫なところが全然直らないその様子は、もっともっと小さかった頃のルカちゃんとぴったりかぶった。
「ミクちゃん嫌いぃい……」
「……」ほほう、このお姉さまにそんな事を言っちゃうのか「へー? そっかぁ、ルカちゃんはお姉ちゃんのこと嫌いなんだぁ。お姉ちゃんはルカちゃんのこと大好きだけどなー。
それじゃあもう服の変えっことか、新作スイーツの食べ比べとか、出来ないねぇ」
強いて『お姉ちゃん』を強調すると、ぴくっと反応したルカちゃんが慌てて立ち上がって縋るようにこっちをみる。
わたしより大きい癖に、なんだか可笑しいね。
「そっ、そんなこと言わないで……」
「えー、だってルカちゃんわたしのこと嫌いなんでしょ? わたしは悲しいけど、ルカちゃんのいやがることはしたくないもん」
「あうぅ」ぐしゃ、と端正な顔を歪ませてルカちゃんはさらに呻く「ごめん、ごめんなさい。そんなこと言わないで、ミクちゃん大好きだからぁあ」
ドレスも着てない、化粧もナチュラル、ときた制服のルカちゃんは、もう殆ど素みたいなものだ。ぐすぐすと私のカーディガンの裾を引っ張り、いじらしくこちらを見つめてくる。
その姿はまるでチワワ。私よりも身長大きいけど。
あーもー家に帰ったら牛乳に相談だ!
頑張れ十八歳の成長ホルモン! 姉の威厳をとりもどすのです!
「ねぇミクちゃん、ルカを嫌いにならないでぇええ」
「あーわかってるわかってる冗談だってばわたしもルカちゃん大好きだよ! ほらぎゅー! ぎゅーしてあげるから、おねーちゃんのほーまんなおむねにおいで!」
「……みくちゃぁあああん」
「おふぅ」
ごりごり言ってます。胸骨におでこが当たってごりっごり言ってます。
ますます牛乳に相談しろと、そう言われてるんだろう。
あー人目が痛い。薄ら笑いでルカちゃんの形のいい後頭部をなでていると、背中側からびゅるびゅると風が渦巻いた。耳をひっかくような音は、ちょっと私の目指すところ。ぷしゅうと息を吐き出すように扉が開いて、幾つも空いたその口からわらわら人が溢れてくる。
「ほらルカちゃん、電車来たよ」
「……ん」
まだぎゅーが足りなかったのか私のカーディガンの袖を摘むルカちゃんを引き連れ、電車に乗り込む。いい具合に空いた端の席に大事なマイシスターを座らせ、わたしはその隣でばっちりガード。暗く成りだしたこの時間にしては珍しく人がまばらだ。まぁまばらでなくてもわたしとルカちゃんが乗り込むとすこしだけ空間が開くことが多いのだけれど。人徳って奴って事にしておこうか。痛んだ毛先を引っ張りながらそう思う。
がたんと揺れた電車は、ゆらゆらと景色をふっとばしながら私たちを家へ連れて行く。
隣ではルカちゃんがうつらうつらと頭を揺らしていた。落ちたまつげが鮮やかな夕日のオレンジに染まった頬に影を落とす。少し暖房の効きすぎた車内で、きっとその柔らかそうなほっぺたに触れたらじんわりと暖かいのだろう。というわけできゅっと痛くならない程度に摘んでみた。むうう、とルカちゃんが眉根を寄せる。
「なぁに?」
「眠いなら寝て良いよ。起こしてあげるから」
「……んー」
「肩よっかかってもいいから。そっち冷たいでしょ」
「んんん―」
「はいはい、大丈夫、わたしは授業中寝てたから眠くない」
冗談めかしてそういうと、ちょっと非難めいた、苦笑のような視線が飛んできて、それきりルカちゃんはこくりと頭を垂れた。
ちょっと肩が重い。私の方が小さいから、ルカちゃんの首もちょっとつらいだろう。肩を貸すなら、ルカちゃんより大きい方がいい。がくぽさんくらいなら、きっとちょうどいいんだろうな、なんて考えながら。
ひゅんひゅんと影が私の前を横切っていく。絵の具をたっぷり溶いたみたいに空気はオレンジ色に濁っている。歌いたいな、と思った。
家に帰り着いたら、出迎える人もいない冷たい空気が待っているんだろう。
ルカちゃんがいても、二人程度じゃあの冷たさは暖まらない。
誰かと居たいな。歌いたいな。
景色はひゅんひゅんとふっとんでいく。
ふくらはぎに当たる熱い空気がきになって、私は少しだけ足を浮かせた。
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ただのパンツの話にする予定が、どうしてこうなったの極み
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